頭 KATUHIRO OHTOMO
大友克洋

プロフィール
1973年「銃声」でデビュー。
劇画ともまた異なった非常に精密な描写と、漫画的な盛り上げや描写に頼らない展開であっという間に漫画の歴史に取り返しのつかない亀裂を刻んだ。
彼以降のほとんどの漫画家は、たとえどんなタイプであれ、おおまかに「大友以後」と呼べる、それくらいエポックメイキングな漫画家。
何よりも、通受けに留まらず、「アキラ」などで、商業的成功や世界的な評価を受けたことは大きい。
漫画のみならず、昔から映像作品にも傾倒しており、ここ数年はアニメでの活躍が目立つが、漫画でも、またあっと言わせて欲しい。

 

 

レビュー

Short peace
(短編集)奇想天外社
Short peace
「宇宙パトロール・シゲマ」
■初期大友作品のおもしろさは、ドラマチックな盛り上げを極力排して、 気分なり、雰囲気なりで話を転がしていくところにあると思うんだけど、それが一番わかりやすいのがこのおバカな短編。 地球人に紛れ、地球で生活している宇宙人!そして悪い宇宙人を追いかける宇宙パトロール!
  普通なら大活劇になりそうな要素を、四畳半の日常に見事に置き換えている。 うだつのあがらない若者の姿をした宇宙人たちは、クライマックス(?)で、ついには巨大な円盤を呼び出すに至るが、これすらも盛り上がらない。
  でも、だからおもしろい、というか味が出ている。「アキラ」でしか大友克洋を知らない人には特におすすめ。 大友克洋という人は冗談みたいな話を描かせたら実におもしろい才能を発揮する。(雅)

 

 

GOOD WEATHER
(短編集)綺譚社
GOOD WEATHER
「SO WHAT」
■ATG(日本アート・シアター・ギルド)で映画化もされた(らしい、未見)青春短編。
28ページの全てが、学生の気分を表現することのみに費やされている。なので、大きな事件や、ドラマはない。ないのだが、生活のそこかしこで感じる「思い」のようなものがきちんと定着されているので、伝わってくるものがある。
冒頭のロックを演奏する主人公たちのシーンにそれは集約されている。
絵と、そこから醸し出される空気感で魅せるやり方。古くは宮谷一彦、そして大友以後の吉田秋生、松本大洋、よしもとよしもとらの青春漫画に通底する「気分の再現」に成功した漫画。
ある種、音楽のような漫画、とも言えるだろう。
「SO WHAT」は現在、収録された単行本が入手困難なので、なかなか読む機会がないかもしれないが、「ショート・ピース」に収録されている青春短編がどれも「SO WHAT」に共通するものを持っているので、そちらを併せてお薦めする。(雅)

 

 

モドル
copyright(c)1999 MANGA JIDAI