頭 SEIKI TSUCHIDA
土田世紀

プロフィール
1969年秋田県出身。
現役の漫画家で「人の心」しかも飾らない「人の心」を描ける数少ない人物のひとりだと思います。
ストーリーも絵柄も土臭い(いい意味で)。
とにかく上手いのです。そしてペンの早さも凄く早い。
「編集王」で有名な彼だが色々な雑誌で時々描かれる読みきり物も素晴らしい。
彼の手で描かれる作品達は読者の心に直接入り込んでくる。しかし土田世紀本人は自分のなかで満足はしていないらしい。 描きたいものも沢山あるというので今後も目が離せない。

 

 

レビュー

未成年
(全1巻)講談社
未成年
■土田世紀が高校卒業後の進路を選択しなければいけなかった時、賞金でバイクでも欲しいと思ってはじめた漫画。その受賞、デビュー作となったのがこの「未成年」だそうだ。
最初出版社にわら半紙に書いて送ったら帰ってきたというエピソードのあるこの作品は今の土田世紀の要素がつまった作品で特に「若さ」とか「青さ」を感じる。逆にそれが作品にマッチしていてなんとも言えない。
田舎町の不良高校生2人組の話を毎回完結させながら話は進行していきます。
なんか狭い自分の生活範囲から脱出したいと思うけれどどうしたらいいかわからなかったり、進路とか色々悩んだりするけれど、1つの答えがこの作品にはあるような気がするのです。(クロブチ)
 

永ちゃん
(全1巻)講談社
永ちゃん
■東京でのサラリーマン生活に耐えきれず田舎に帰る永春(永ちゃん)の1話完結タイプの人情サクセスストーリー。
 ガサツでお調子者で女に弱く酒びたり。だけど、皆に好かれる永ちゃん。 そんな永ちゃんが田舎に帰ってから中古車販売の店で成功する。とんでもない奴だけど車へのこだわりと女への愛など普通の人が声に出してなかなか言えないことをどうどうと体言する。だからこそ好かれるし成功するのだろう。
  とても荒々しいけどしっかり伝わってくる。今程絵も安定していないしちょっと読みづらいけれどしっかり土田世紀の要素のつまった作品なので興味があったら是非読んでみてください。(クロブチ)
 

高[たか]
(全2巻)講談社
高
■もう恐すぎる。手に汗にぎりっぱなしです。
  息もつかせぬペースで「仁義なき戦い」が繰り広げられる。
  高崎の祭りで始まり最終的には東京タワーの展望台(!)まで。絵柄も言えるのですが池上遼一を思い浮かべます。
  普通に生活するうえでは絶対に垣間見る事の無い力を持った組織達の肉弾戦はもちろん相手の動きを読む心理線までハードボイルドを心行くまで堪能しましょう。読んだ後自分が強くなった気分に浸る。
  そうそう、土田世紀のお楽しみと言える有名人を登場させるシステムが絶妙に生かされてます。安倍ジョージから田中邦衛、そして編集王でお馴染みの「宮さん」もインチキ中国マフィアで登場してます。(クロブチ)

 

 

編集王
(全16巻)小学館
編集王
■「すべての漫画好きの人へ!!」
編集王について語るとなると長くなってしまうし、結論も無い事だから書けない。
藤子不二雄Aの「まんが道」、手塚治虫の「紙の砦」と同じように漫画家を目指す人、漫画が純粋に好きな人のバイブルとも言える漫画でしょう。
よくここまで現在の漫画に関わる環境にメスを入れたと思う。
はっきり言って今の漫画界には怒りやら不安を感じずにはいられない。しかし「編集王」を読むと誰が悪いって問題ではないと気付かされる。
この事は別に漫画だけではなく、それぞれの人の環境において言える事だと思う。
大切なのは現状を理解する事と、熱い心をもって「裁く」のではなく「自ら作り変えていく」事なのではないだろうか。
自分がそれぞれトキワ荘の住人になればいい。(クロブチ)
 

春の夢
(全1巻)文芸春秋
春の夢
この漫画は原作が宮本輝。このコンビはある意味最強かもしれない。
  この作品のテーマは「死に方」だと思う。
  父の死と借金、極貧の生活に突然追い込まれた主人公がその立場に追い込まれて初めて見えてくる風景・事柄のひとつひとつがとても大切な事。
  「人は何故生きているのか、愛とは、いかに死ぬか」と考えさせられる。読み終わった後に色々と自分の中に込み上げるものがある。
  あのトカゲは何を意味していたのか。僕にはまだまだ早かったかも。きっと時々ひっぱり出し手は読んでいってわかってくるだろう。(クロブチ)

 

 

ありゃ馬こりゃ馬
(全17巻)講談社
ありゃ馬こりゃ馬
■競馬を全然知らないので今まで読むのを躊躇していた作品。「競馬知らなくても十分楽しめるよ」って言われたので衝動買いして読んでみました。
ええ、面白かったです。一気に10册読んでしまいました。止まらないのです。
いつまでたっても二流の甘いジョッキーの氷室を中心に競馬のジョッキーや調教師、場主などに視点をおいた作品です。原作はジョッキーの田原成貴なので本格的なのでしょう。でも全然知識のない僕にも楽しめるのは作画担当の土田世紀のおかげなのかも。
連載初めのころは隔週連載かなにかで1話読みきりのギャグ漫画だったのが、途中(2巻の後半)から数回に渡る話になりレースにまつわる人間そして馬のドラマを描く漫画へと変わって急激に面白くなります。
特にダメな主人公が色々なハードルや人との出会いによってどんどん成長していく姿はとても格好いい。
僕は競馬のイメージはスポーツじゃなくてやっぱりギャンブルでした。しかしこの漫画を読んで、馬と騎手のおりなす繊細なかけひきとか熱い戦いの魅力にはまったかも。もう緊張しながら1ページ1ページめくってしまう。巻数を重ねるごとに「あぁ、その間を突いて前に出ろ!」とかいつのまに言ってたりしました。
確か映画の「Shall we ダンス?」の時もこうだったな。(クロブチ)
 

水の中の月
(全1巻)講談社
水の中の月
■北国の村で生きる幼馴染み同士の高校生3人の生き方を描いた物語。
  父の残した借金を返すためにひたすら働きつづける真直ぐな堅治(ケンズ)と極道の世界に思いを寄せる清(キヨス)そしてどっちつかずな与一(ヨイヂ)。昔は仲の良かった3人も育っていくうちに志しがそれぞれにでき、そして離れ今では憎みあうようにまでなっていく、、、
  僕にはそんな借金もなければ極道に憧れる気持ちなんてものもありゃしない。しかしこの「水の中の月」には誰もが少なからず経験した気持ちがあるのだ。
  その気持ちを無理矢理言葉にするならばやっぱり‘青春’と言えるだろう。憧れる物は人それぞれ違い常に変化する。しかし上っ面ばかりに目が行ってはいないか?本当に大切な芯にあるものを見据える目を忘れてはいないか?この話はそんな事を教えてくれる。
  どんな世界でも自分を持ってまっすぐな人間は格好いいのだ。(クロブチ)
 

同じ月を見ている
(全7巻)小学館
同じ月を見ている
■勉強ができない、周りの人ともコミュニケーションが上手くとれない、貧乏、父からの虐待…他にもとんでもないくらい「かわいそう」な境遇にいる少年の「ドンちゃん」と幼馴染みで親友の「てっちゃん」それにお金持ちの病弱なお嬢様の「エミ」その3人を中心とした様々な人達の壮絶な運命の物語。
「本当に格好いい生き方」「本当の強さ」とは一体なにかと考えさせられます。
冒頭で主人公のドンちゃんの事をあえて「かわいそう」と書いたけれど、ドンちゃん本人はちっとも自分の事をかわいそうだとは思っていません。かわいそうと思うという事は、その人と自分を計って言っている。
この話を読み進めてドンちゃんの姿を見ているうちに、漫画の中にいるドンちゃんが鏡となって自分の醜さが映って見えてくる。それは漫画に出てきてドンちゃんと関わった全ての人物達も同じだ。
そんな自分の姿を見た時に無意識にでも人間に上下関係をつけて見てしまっている事がなんて格好悪いんだろうと思った。
僕は格好よく生きれるだろうか?(クロブチ)
 

俺のマイボール
(全3巻)双葉社
俺のマイボール
■もう、めっちゃくちゃダサ格好いい!!
冷静に見てみるとどんなジャンルの話なんだか説明不可能な世界です。スポーツ?サスペンス?SF?
中坊にボウリングにピストル。この21世紀初頭にこの世界観はたまらないです。
パシリにされそうになって登校拒否の主人公が廃虚のようなボウリング場で出会った一人の男にボウリングを教えられる所から話が始まるんだけど、背後にずっと流れる無気味な犯罪の臭いがあったりとにかく不思議な感じ。
しかし妙な説得力があり、最後にはしっかり完結して感動すらさせてくれます。こんな漫画かつてあっただろうか!!
「ビックリボウスキ」「マグノリア」「マルコヴィッチの穴」などの洋画が好きな人、日本にもこんなクールな漫画がありますよ。読んどけ!!(クロブチ)
 

モドル
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