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NAOKI YAMAMOTO |
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山本直樹 |
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■社会に唾を吐くと、吐いた唾は天から自分に降ってくる。 絶対関係しなければいけない以上そっぽを向いてる場合でもない。 どこを向いたって、四方八方、他者に取り囲まれているのだから。 いつの日か必ず、篭城は終わってしまうのだ。 山本直樹は、延々と同じ形の家が続く新興住宅地に住む壊れかかった家族を中心に、それを取り巻く社会を暴力的なまでに高性能な山本カメラで写し取る。 魚眼レンズの如く、山本カメラは社会をカリカチュアして記録或いは捏造し、醜悪を増幅させ、現像する。 エロを描くことに主眼を置く山本直樹が、エロを挿入できない展開にせざるをえない程、アンプリファイされた物語りは隙間を埋め尽くして膨れ上がる。 そこから流れ出す、膿膿膿膿膿膿膿。 コンピューターを見事に使った、無機質でぺらぺらな画面の中で、人間の業と性(さが)だけが醜く蠢いている。 だが、読んでいてただ不愉快な漫画なわけではない。 世の中の見方は決してひとつではなく、セックスが決して一人で出来ないように、どんな醜悪も(どんな美しいものも)、それ単体では決して機能しえない。 と、いうことを、山本直樹はひたすらに描いているだけなのだ。 描くことが余りにもほんとう過ぎるから、キツいのだ。 そのかわり、そのまんまの描写の清々しさが生まれる。 崇高なまでの、ありのままの発露。 グロテスクなかさぶたがはがれると、綺麗な皮膚がそこにある。 読み終わったら、この物語りのタイトルを、吟味せよ。 そして、社会に唾を吐く前に、自分の歯垢を想起せよ。 全てはそこから、なのだろう。(雅)
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