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YUMIKO OHSHIMA |
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大島弓子 |
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■大島弓子最初期の傑作を収録。 デビュー作の「ポーラの涙」から、すでにその類いまれな心理描写力で人間関係を描いていた大島弓子だが、その才能がいかんなく発揮されているのが、表題の「誕生」という中編。 女学生の妊娠という、今ではありふれた題材を発端に、よくもまあこれだけ、というほど様々なケースの心理ドラマを織り込んでおり、たたみかけるような感情の渦が読むものの目を釘付にする。 なにかひとつのことから、今まで表面に噴出していなかったものが連鎖的に噴出するというのは演出的にも見事な構成。感動的にぶつっと切ってくれるラスト(これは大島作品の特徴)まで含めて文句なくすばらしい。 これを見ずして少女マンガを語るなかれ。っていう決まり文句はこういう作品集にこそふさわしい。(雅)
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■いたい棘が混入した少女マンガ。 バナナブレッドのプディングという表題に象徴される少女的イメージと、メルフェンにつきまとう魔物のイメージを併せ持つ主人公、「イライラの衣良」のキテレツな心象変化と、それに伴う周囲の人物の状況変化を描く。 アブストラクトな台詞、特異な状況設定、残酷な想像力が生みだす、怪奇に近い物語。 自らの夢にとり殺されそうな圧迫感の果てに、思いもよらなかった「素晴らしいことが待っている」。 子供の時間の終わりを鋭い感性で描いた傑作。(雅)
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「夏の夜の貘」 ■精神年齢が20歳になってしまった小学生の視点で描かれる世界。 例えば兄が自分より精神的に年下に感じるのを絵で表現するアイデアも凄いがこの作品の主人公の感情が伝わってくる感じは、本当に凄い。 例えば「バナナブレッド〜」の頃の大島作品と比較して、より穏やかに物語りはモノローグされていくのだけれど、その芯にある強い気持ちのようなものは、よりストレートに響いてくる。 これはこの作品がアブストラクトではないことが大きいのかも知れない。 そしてアブストラクトでないのは、少年期を過ぎた「20歳」の視点のせいだろう。しかし精神年齢が高いと言っても、少年は、やはり少年なのだ。 じんわりと、確かに感動する。名作。(雅)
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