脚本家 古谷壮志の
「わーるど・いず・のっといなふ」
「売りも良いかも」

以前ブルース・リーについて書いたので今回はジェット・リーについて。

ジェット・リー、これはハリウッド進出の為に新たに付けられた芸名で、香港時代はリー・リンチェイと名乗っていた。彼の最新作は近頃公開された「ロミオマストダイ」だ。

同じ香港のスターでは最近ジャッキー・チェンが同じくハリウッドに進出したし、チョウ・ユンファも進出。映画監督ではジョン・ウーやカーク・ウオンなど、香港出身の映画人達のハリウッドでの活躍が最近目立つ。

これは単に実力が認められたからハリウッドに招かれたと考えることも出来るが、それだけじゃ無いんじゃないだろうか?以前から香港映画が好きだった私としては、何を今更と言った感じで。彼らの香港での活躍を見れば、ハリウッド進出はむしろ遅い位だ。

じゃあ何で今頃そうなったのか?一つはアメリカの好景気と言うのが背景にあるだろう。金があれば世界中から色々持ってきたくなるもんだ。大英帝国しかり、かつてバブル絶頂のころ日本もF1をとある山奥のサーキットに招いた事があった。(その後そのサーキットは経営破綻して潰れたんだけど)

好景気になるとみんな浮かれて大らかになってアジア人に対する偏見なんて言うのも無くなるんだろう。(不況になるとその原因が外国人労働者にあると言い出すんだが)

もう一つは香港が中国に返還されたのが原因なんじゃないだろうか?現在は香港が中国に返還され、一国二制度が確立しているが。返還される前はどうなるか解らなかった。

実際ジャッキーは返還前、中国共産党政府に対する露骨な不信感を現しており、返還前カナダへの移住の準備を進めていた。ハリウッド進出はその結果だろう。

香港が英国に占領された経緯も悲しいが、返還される政府が信用できないというのも又悲しい。そして彼らは香港を離れた。しかし、能力重視のハリウッドにおいて「売り」のない者は置いて行かれる。

ジェット・リーはその凄まじいアクションをやってのける驚異的な身体能力が売りだ。ジャッキー・チェンもまたしかり。ジョン・ウーはその独特の演出が売りだ。そしてチョウ・ユンファは?残念ながら彼の持つ武器は演技力しかない。

アクションもやるにはやるが、カンフーを駆使した壮絶なものではない。演技力にしてもそこそこって所だ(日本で言うと哀川翔みたいな感じ)これは売りとしては一寸弱い。

実際それ以外のメンツは次回作が目白押しだが、ユンファはあまりパッとしない。今後に期待したいところだ。

もし貴方がなにがしかの原因で日本ではやっていけないと考えるようになり、海外に行くとして。その時貴方が武器とする「売り」とはいったい何だろうか?彼らを見て考えてみて欲しい。
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