脚本家 古谷壮志の
現象学的人間論と、うずまき
この物語はフィクションであり、
登場する人物、団体名は実在のものとは
一切関係有りません。

らせん編その6

一日明けて、私は教授の部屋にいた。

「連載小説って意外に大変ですね…・」

私は思わずつぶやいた。その言葉に、こたつに入っていた教授は目を丸くして言った。

「いきなり何言い出すんだ君は?」

「いえ、急に言ってみたくなっただけで別に深い意味は有りませんけど」

「意味無いこと言うなよな」

そう言って教授は手にしていた読みかけの雑誌「ムー」をこたつの上に置いた。それを横目に私は口を開いた。

「それにしても、結局何にも解りませんでしたね」

「そうだね。大仏の頭は転がったままで、誰が気にすることもないってだけで特に実害はないし…・見えてないんだから気にしないのは当たり前か?」

「でも何で見えないんでしょうか?」

「わかんないよそんなこと」

「…・・」

私は傍らにあったルービックキュウブを手にしてそれをいじりながら続けた。「何だかなあ…」

教授は私の微妙な変気づいたらしく、私に尋ねた。

「どうしたんだ?君、今日は何か変だぞ?」

「貴方に言われたく無いですよ」

私は思わず本音を言ってしまった。

「ああ、すいません。実は昨日授業の後、女の子に告白されましてねえ…・」

「良かったじゃないか?それが何か問題があるのかね?全然タイプじゃないとか?」

「いえ、そう言うわけでは無いんです…以前から僕が好きだった女の子だったもんで。言うことは無いんです。ただ…」

「ただ…何だね?」

「巧く行き過ぎなんですよ」

「巧くいきすぎとはどういうことなんだ?」

「実は彼女とは知り合いでもなくて、告白されるまで彼女の名実は知らなかったんです。つまり僕片思いだったわけで…それが昨日いきなり彼女の方から告白されたんですよ。なんか変な感じで…」

「それは確かに妙だねえ」

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