脚本家 古谷壮志の
現象学的人間論と、うずまき
この物語はフィクションであり、
登場する人物、団体名は実在のものとは
一切関係有りません。

らせん編その7

「妙でしょう?」

私は手にしていたルービックキューブを教授に向けて言った。

「私、ルービックキューブ全面揃えれたことないんですよ。それと同じように片思いがこんな風に成就したことは今まで一度も無いんです」

その時、教授は奇妙な物が突然目の前に現れたかのように異様に目を丸くした。私は訪ねた。

「どうしたんですか?」

「君、それを見てみたまえ」

教授は私の手を指さした。教授の指さした手には、先ほどから私がいじっていたルービックキューブが握られていた。私はキューブを見て、教授と同じように目を丸くした。なんとキューブは全面が綺麗に色ごとに揃っていたのである。私はキューブをまじまじと見つめた。それはあり得ない事であった。私は教授と話している間手持ちぶさただったために、何の気無しにキューブをいじくり回していただけである。にもかかわらずキューブは綺麗に揃っていた。

「そんなバカな…・」

私の口からは自然にその言葉がついてでた。だが次の瞬間、二人は電話のベルでふと我に返った。

「奇妙な事もあるもんだね」

教授は言った。

「そんなことより先生、電話ですよ」

「そう言えばそうだねえ?」

教授はあたりを見渡した。

「おかしいなあ?電話がない…」

「電話が無い?いつもそこに有るでしょう?あの汚い電話」

教授の部屋の電話はプッシュ式とは言ってもかなり古い物で、どうもどこかの会社で使われていた内線電話の払い下げらしく、古いだけあってかなり汚かった。電話はけたたましく鳴り続けている。私も教授と一緒に電話の在処を探して辺りを見渡した。そこで私は奇妙な事に気づいた。

鳴っているのは電話のベルだったのだ。前述したとおり、教授の部屋の電話は古い内線電話だった筈である。それもプッシュ式。つまり呼び出し音として鳴るとすれば、それは電子音の筈である。しかし鳴っているのは明らかにベルだ。ということは鳴っている電話はダイヤル式ということになる。私はその事を言おうと教授の方を見た。すると、教授は電話線らしき物を見つけたらしく、それをたぐり寄せていた。だが奇妙なことに、たぐった電話線の先は窓の外に続いていたのである。

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