脚本家 古谷壮志の
現象学的人間論と、うずまき
この物語はフィクションであり、
登場する人物、団体名は実在のものとは
一切関係有りません。

らせん編その8

私たちは窓の外に電話の姿を求めて顔を出した。しかしそこに電話の姿は無く。代わりに長い電話線がアパートの裏庭に向かってびろーんと伸びていた。

教授は電話線を引っ張ってみたが電話がつられて出てくる様なことはなく。電話線の先に目をやった。電話線は二階の教授の部屋の窓から裏庭で大家が細々とやっている家庭菜園の畑に続いていた。

私たちは裏庭に降りてみた。ベルは相変わらず鳴り続けている。裏庭に降りた私たちは奇妙な光景にを目にする事になった。教授の部屋の窓から伸びていた電話線は、大家の畑の手前で地面に飲み込まれていたのである。

それも埋められた様子もなく。雑草の生えた地面にごく自然に、まるで地面から電話線が生えているかの様であった。

「コレはまた面妖な…・」教授はつぶやいた。

「それってこの状況の描写に対して正確な表現なんですか?」私は言った。教授は私の顔をまじまじと見た。電話はまだけたたましくベルを鳴らし続けている。

「君はある日、気がついたら自分の部屋の電話が地面に埋まっていたなんてことがコレまでの人生で一度でもあったかね?」

実に的を得た質問であった。

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