脚本家 古谷壮志の
現象学的人間論と、うずまき
この物語はフィクションであり、
登場する人物、団体名は実在のものとは
一切関係有りません。

らせん編その9

「有るわけ無いじゃないですかそんな事」

実に当たり前な答えではあったが、当然といえば当然の答えであった。

「僕もこれが初めてだよ。これは事件だ」

「ですね」

そこで私は今まで気がつかなかった問題に気がついた。私達には相変わらずベルが聞こえているという点である。仮に電話が地面に埋まっているので有れば、地中から電話のベルが地上の人間に聞こえるものなんだろうか?それも、私たちが電話のベルに最初に気づいたのは電話線が埋まっている地点から随分離れた、それもアパートの二階である。私はそのことを教授に尋ねようとしたが、教授はそのころ電話を引っぱり出そうと電話線を両手で持って引っ張っていた。電話はどうも地中で何かの容器に入れられている様で、引っ張られて持ち上がった電話はその容器の壁にあたるらしく、断続的なベルの音の合間に教授が電話線を引っ張るのに合わせて「ゴツ、ゴツ」という音が私の耳に聞こえてきた。

「コレは掘るしかないな」

教授はつぶやいた。

「しかし、これはホントに電話なんでしょうか?何か別の物の可能性は?」

「それは無いな。コレは間違いなく電話線で、僕の部屋の電話線プラグから続いているのに間違いはない。そして僕の部屋の電話線につながった電話なら、この呼び出し音の読んでいる相手は僕に間違いない。違うかね?」

「それはそうですが…・」

「それに、君は気づかないのかね?これに似たような奇妙な現象を君は既に経験している」

「大仏に頭?」

「そうだ、これは一連の事件に違いない。転がった巨大な大仏の頭、そろったルービックキューブ、地面に埋まった電話、そして君に告白した謎の女」

教授は目を輝かせて言った。

「最後のは余計ですよ」

私は思わずつぶやいた。

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