脚本家 古谷壮志の
「わーるど・いず・のっといなふ」
「さらば愛しき危険達よ?」

最近思うに、近頃の映画はつまらない。何がつまらないかというと。具体的に言うのは難しいんだが、特にアメリカ映画にその傾向が見られるんだけども。

何だろう?内容がどうもフニャフニャした印象・・・というか筋が通っていないのだ。まあ元々アメリカ映画なんて言うのはそんな物なんだけど。

じゃあ最近私がそれを顕著に感じているのは何故なんだろうか?私自身の見方が変わったのかもしれない。それも在るかもしれないが、その他には?凄いお金をかけて、凄い特撮技術や凄い俳優、監督、スタッフを使っているのに何故だかそれ程面白くない。

考えるに、これは冷戦の終結が大きく関連しているんじゃないだろうか?一頃、とある新聞が宇宙人の飛来やUFOなんていうのは全くの作り話でアメリカ政府が意図的にそれをあおっていた節があるというのである。

それによると、レーガン政権時代、冷戦が続く中。国民の危機感を持続させるために政府がUFO情報をねつ造して危機感を煽っていたというのである。これが嘘では無いのならレーガンどころか、話はケネディ政権時、キューバ危機までさかのぼるだろう。

たまたま証拠やニュースソースが出てきたのがレーガン時代の物だっただけで、アメリカはもっと前からそれに近いことをやっていたはずだ。だが今は?多分あんまりそんなことはしていないだろう。何たってアメリカは経済も軍隊も世界最強。肝心のライバル、ソヴィエト連邦自体が無くなっちゃんだし。

まあ無くなってから数年はロシア絡みでもめ事も多かったし、「冷戦はまだ終わっていない!」なんてことも言えたかもしれないが今はそうではない。アメリカにはソ連に続く新たなる敵は未だ現れず、大人しかった中国や北朝鮮にいらんちょっかいを出してもめ事を自分で作ろうとしている位だ。

そう、映画を面白くなくしていたのはその緊張感の無さだったのだ。一番わかりやすいのは「ミッションインポッシブル」なんかじゃないだろうか?

ブライアン・デパルマが監督した一作目は、冷戦終結によって仕事を失ったスパイ達や諜報機関の混乱というのがバックボーンにあったのでアクションのテイストが少なかったとはいえなかなかの秀作だったと思うが、2作目に至っては世の中十分平和なので、 「危機?んなもん作っちゃえばいいじゃん!適当に」と言わんばかりのバックボーンもクソもない妙に根が明るいラテン系のアクション映画になってしまった。

ご覧になった人なら分かるはずだ。さらに、最近アクション物というと何だか妙に古い題材が多い。「プライベートライアン」「U-571」「13デイズ」なんかそう。しかもどういう訳か戦争物。戦争物で言えば近々公開される「パールハーバー」なんかもそうかな?要するに、アクションのネタに出来るような解りやすい敵がいなくなってしまったのだ。

その結果新たな危機を宇宙に求めたのが「アルマゲドン」とか「ディープインパクト」だったりしたわけだ。終いには「エネミーオブアメリカ」なんていう「アメリカ自身が敵だ!」っていうような作品まで出てくる始末だ。でも考えてみれば敵はいないわけでもなくて、イスラム原理主義者だとか中国のチベット問題だとか色々あるんだけど、アメリカがそれらを危機としてとらえるにはちとお節介すぎる上に、特にイスラム原理主義なんてのはちょっと危なすぎてあまり刺激出来ないのは確かだ。

パレスチナゲリラなんかは世界的に注目度が高いので割と世論に左右されるような所もあるんだけど、タリバンとかムジャヒディンなんていうゲリラはそんなことお構いなしで無茶苦茶なことをするテロ集団(ゲリラ)だから刺激するのは確かにまずい。
(彼らの行動は別としてその理念や戦いに至った動機については一理あるとも思うが)

アメリカは敵を倒しすぎたが故に自分たちの文化だと主張する映画をダメにしてしまったと言ってもいい。韓国映画の持つ緊張感との違いを見れば明らかだ。

とは言え、それはあくまで二次的な部分で。軍事的なライバルがいなくなったとは言っても文化的なライバルがそろそろ現れても良い頃だとは思う。

ヨーロッパ映画、アメリカ映画とは別にアジア映画だって十分にカウンターカルチャーになり得るはずなので、今後の日本映画に期待したいところだ。
Back