脚本家古谷壮志の
「わーるど・いず・のっといなふ」
「モニターのこちら側」

最近になって初めて映画「ハンニバル」を観た。


劇場で観れなかったのは残念だったがビデオでもそれなりに楽しめてのでまあそれは良いとして、劇中なかなか面白い部分を見つけたのでそれについて。


内容については随分以前に原作の感想を書いたのでその辺は割愛する。


劇中ではハンニバル・人食い・レクター博士が捜査の手を逃れつつその他の追っ手からも逃れていく様子を描いているのだが、その中でアメリカ連邦捜査局(FBI)のホームページってのが出てくる。その中に「アメリカ10大重要犯罪者」とうのを紹介したページが出てくるんだがそれが問題の部分だ。



映画自体が制作されたのは恐らく2000年頃だろうからそれほど意識した訳では無いんだろけれど、10大犯罪者の中にレクター博士も入っているのだがその他の犯罪者の写真の中に最近よく見かける人物の顔があった。



誰あろうオサマビン・ラディン氏の顔写真である。




まあ別に偶然の一致という訳では無く。ラディン氏は随分前からアメリカ政府からはテロリストとして捜査の対象とされていたのでおかしな話ではない。


フィクションの中にリアリズムを出す為に所々嘘ではない情報を散りばめるというのは虚構を演出する上での常套手段である。ラディン氏がこの時点で重要犯罪者とされていたのも恐らく嘘ではないんだろう。




しかし、面白いのはそのホームページの描写の中でハッキリと顔を認識出来るのがレクター博士とラディン氏だけなのだ。その他の犯罪者は殆ど顔も移らない。



ネタばらしになってしまうが物語では残念ながらFBIはレクター博士を取り逃がしてしまう。ラディン氏もまたしかり。何だかそれが妙な現実味を帯びているところがまた興味深いが、問題なのは、やはりそれが現実味を帯びていながらもフィクションの中にちらっと顔を覗かせた為に逆にリアリティーの無い現実に気付いた事である。




アメリカがアルカイーダを擁護したタリバンに対して行った行為は紛れも無く戦争である。にもかかわらず、死んだのは本当に関係ない人たちばかりで、肝心のラディン氏は生きているのか死んでいるのかすら解らないときてる。



モニターに映し出されるラディン氏は本当に実在の人物なのかすら印象としてはあいまいな物だ。私からすれば、フィクションの中に登場したテロリストの顔写真も、CNNのニュースに映し出された映像も大して変わりは無い。




つまりは関係の無い世界(フィクション)の中のそれと同一なのである。そういうことが本当にあって良い事なんだろか?余りにも下らない理由で起こった戦争のことなど考えるのもバカバカしい。
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