上田真吾の
パジャマ気分で独言

 BREAK 02 演じると云う事

先日このコラムの第一話を自分自身で読み返してみました。なんかコラムというよりも企画書みたいになっちゃってましたね。反省反省。今回からはちゃんと書こうと思っております。

さて皆さん、唐突ではありますが大人になってから泣かされた事はありますか?僕はあまり泣き虫ではありませんが、つい先日不覚にも泣かされてしまいました。

しかも僕を泣かせたのは、とある女の子でした。(本当、近年女性はドンドン強くなっていきますよね。負けるな男の子)物心ついてから僕が女性に泣かされたのは今回で二度目です。今日はその一度目のエピソードを語りましょう。

それは去年の夏、第二回公演「ドロップアウト」が終わった頃の事でした。その頃、実は僕、役者を辞めようかどうしようか悩んでたんです。原因は至って簡単、伸び悩みであります。

周りの皆がドンドン成長していく中、自分は明らかに置いてきぼり状態でした。僕の中でも脚本家としての哲学、方向性は固まりつつあるのに、演技に関しては自分でも腹が立つくらいこだわりを持てずにいました。このままだと皆の足でまといになってしまう。

それならいっそのこと辞めてしまった方がいいんじゃないか。今から考えても僕のこれまでの演劇人生最大のピンチでした。そんな僕を救ってくれたのは一人の若手実力派女優でした。彼女は当時僕が熱中して見ていたドラマ「リップスティック」(脚本野島伸二)に出演していました。

僕を夢中にさせた存在、もちろん広末涼子ではありません。このホームページをくまなく見られた方及び数少ない上田真吾マニアなら、もうお気付きの事と思われますが、その女優とはご存じ池脇千鶴様その人であります。彼女の演技は以前から好きで、このドラマを見ていたのも勿論彼女を見る為であります。

彼女の演技は実に自然なんです。しかもその自然さはナチュラルではなくリアルなのです。そのリアルさをまざまざと見せつけられたのが、「リップスティック」最終回の一週前、池脇千鶴演じる真白ちゃんが、全てに絶望し思い出の廃ビルから飛び降りるシーンでした。絶望の中にあるのに彼女の目は希望に満ちている。理不尽な事なのに僕には実にリアルに見えました。そして気付きました、自分が泣いている事に。僕は思わず泣いてしまう程、真白ちゃんに感情移入し、そして女優池脇千鶴に夢中にさせられていたのです。

その時僕ははっきりと決心しました。この女優と共演するまでは役者を辞められないと。

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