クワガタ初級講座

1年間を通してのクワガタの飼育の基礎についてです。

講座1 幼虫の住み分け
講座2 飼育環境

講座3 越冬個体の目覚めさせ方 産卵セット
講座4 幼虫飼育 菌床ビン
講座5 幼虫飼育 マット飼育
講座6 幼虫飼育 材飼育
講座7 越冬のさせ方


講座1  幼虫の住み分け

そろそろ晩秋に入りスズメバチもいなくなり、下草も枯れ始めると、これからは材割りに絶好のシーズンですね。
ただ、闇雲に材を割っても目指す幼虫は採れません。 幼虫がどのようなところに住んでいるかを知ることによって目指す幼虫の採れる確率が高くなります。

幼虫の住み分けについて
 

オオクワガタ・・・地上部の乾燥気味の良く白枯れた幹に産卵する。最近は乱獲によって木の上部2〜3mの朽ちた幹ぐらいでしかなかなか見つけられない。脚立は必要です。
コクワガタ・・・地上部や地表部などあらゆる所に適用して産卵する。広葉樹なら樹種もあまりこだわらず産卵する。自然が破壊され、他のクワガタが産卵する場所が少なくなっている中いろいろな場所で産卵することができる
ヒラタクワガタ・・・地下の湿った根の部分に産卵する。幼虫を見つけるのは難しい。
ミヤマクワガタ・・・落ち葉に産卵し、朽ちた大木の下や根の部分の水分の多い場所を好む。 朽ちて倒れ木をひっくり返すとたまに幼虫が見つかる。蛹室は、地中深くに作る。
ノコギリクワガタ・・・地下部の根の所に幼虫がいます。蛹室は、土の中に作る。

 

基本的に幼虫のアゴの形で、幼虫がどこに住んでいるかが解ります。アゴがのびている種(オオクワ・コクワ)などは乾燥した堅い場所にいます。アゴの曲がった幼虫は、柔らかい腐朽した木の地下部分に住んでいます。 採れた幼虫は、幼虫の見分け方を参照してください。

オオクワガタのいる材
良く腐朽したカワラタケの生えた木にいますが、カワラタケにもいろいろな色があります。
緑→白→茶→黒→青の順にオオクワのいる確率が高くなります。
緑色や白色のカワラ材にはいる確率はありますが、黒色や青色のカワラタケにはほとんどいませんので材割りはやめましょう。
とりあえず、緑と白と覚えてください。
ニクウスバタケやカワラタケなどのきのこが元気で絵に描いたような材にはほとんどいません。
キノコが枯れ、劣化し、裏面のブラシが上を向いている材の方が幼虫がいる確率は高いです。
キノコが活発に発生しているような木の材割りは避けてください。このような材は、いずれ活性が無くなってからオオクワが産卵します。

最近、このようなクワガタがまだ入っていない材まで割ることによってオオクワの産卵場所が無くなっています。オオクワのワイルドのミニ化は、住む条件が悪くなっている事が原因ではないでしょうか。
材割りは、自然破壊です。でも私は、好きです。むやみやたらに材割りをして、生木まで割る人がいますができるだけ必要最小限にとどめましょう。


講座2  飼育環境

自然の中でクワガタが生活できる条件を知っていますか?
それは、光・水・風・樹液です。
クワガタは手入れの行き届いた風通しが良い里山の日当たりの良い南や東斜面 に多く生息します。
飼育下でもこの条件を満たしてあげると沢山産卵することが出来ます。

・・・クワガタは、太陽の動きを感じて行動します。飼育ケースは、朝日の当たる東側がBESTです。 1日中、真っ暗な場所に置くのは、お勧めしません。

・・・クワガタは、水分がなければ生きていけません。しかし水分過多は禁物です。 自然界で のオオクワガタは 、苔の生えているような台場クヌギにはあまりいません。 飼育ケースの中は、マットは乾燥気味、産卵木は湿っぽい方がいいでしょう。(種類によって若干違いますが) キノコが寄生できるように適度な湿気が必要です。

・・・クワガタは、風が吹き抜ける場所が好きです。触角で臭いをかぎわけて樹液の出る場所に行きます。風がなければ臭いをかぎ分けることが出来ません。 飼育ケースは、風通しのよい場所に置いた方がいいです。 ♀は産卵する時、産卵木の匂いを感じキノコの匂いに惹かれて産卵行動を起こします。ケースの中も風が通 る方が匂いを感じやすいようです。(カビの匂いは、好きでないようです。)

樹液・・・もちろんクワガタが生きるためには樹液が必要です。 飼育ケースの中では、昆虫ゼリーだけでも生きていきますが産卵させるためには、高蛋白が必要です。バナナや、できれば幼虫や蛹をあげると産卵数が違います。

家では、夏場は、北側のベランダに置いています。朝、夕、少しだけ日が差し風通 しのいい場所です。 結構、卵を産んでますよ。

出来るだけ、クワガタにとって居心地の良い環境を作ってあげれば産卵数も違い長生きします。
クワガタも生き物です。愛情を込めて飼育しましょう。


講座3  越冬個体の目覚めさせ方(3月頃)
そろそろクワガタシーズンの始まりですね。3月の始め啓蟄の頃、越冬していたクワガタの目を覚まさせましょう。冬の間、餌も食べずに水分だけで生きながらえていたので体重も軽くなり栄養不足です。

◎産卵準備
飼育ケースをひっくり返して越冬個体を出します。水でダニなどをきれいに洗い落としてください。越冬個体は、すぐに産卵セットを作っても栄養不足であまり卵を産みませんし、無理に卵を産ますと雌が弱ります。ミニケースに1匹ずつ管理して充分な高蛋白のエサを与えてください。蛹や幼虫などを与えると効果 抜群です。2週間〜1カ月は充分にエサを与えて体力を回復させることで産卵準備が出来ます。

◎産卵セットについて 基本セット
種類によって違いますが、オオクワについて書きます。
材は、クヌギやナラなど良く熟成した材なら卵を産みます。少し固めの方がいいと思います。 あまり柔らかすぎると、雌が遊びで材に穴をあけるだけで産卵数が伸びない場合があります。
材は、半日水に浸け2時間ぐらい陰干しします。
ケースの底にマットを少し敷き詰め、材を入れ、マットで埋めます。
材の置き方は、縦でも横でも自分の好みでいいと思います。
材の皮は、剥いても剥かなくても良いですが、古雌の場合は、皮を剥いて柔らかめの材にして出来るだけ雌の負担を少なくして下さい。
マットの上には、エサ皿と転び止めの材(木の皮など)を敷き詰めてください。
マットの水分は、オオクワは乾燥気味、ヒラタは多めにした方がいいです。

◎良く卵を産ませる工夫
クワガタは、材を朽ちさせるキノコの匂いに反応します。これは、キノコの中のグルタミン酸ソーダ(『味の素』など)の成分です。
材を水に浸けるとき味の素入りの水の中につけてください。
この材は、たくさん卵を産みますが問題点もあります。
カビもダニもコメツキムシもこの匂いが好きです。材がすぐに腐朽しますので1カ月に一度は交換しましょう。
産卵中は、♀が卵を産み続けますので高蛋白なえさ(蛹・バナナ・脂身)を与えて十分な栄養を与えてください。♀が死んでは何にもなりませんので。

オオクワは、平和主義ですので♂♀ペアーでもかまいませんがヒラタは、♂が♀を殺す場合がありますので強制交尾をお勧めします。(私は、♂♀一緒に入れていますがあまり事故はありません。)
新成虫の♀は入れない方が無難でしょう。十分に餌を食べるようになってから入れてください。 ♀が熟成してないと♂が♀を認識できず(フェロモンが出ていない?)敵だと思って♀を殺す場合があります。

とりあえず、私のヒラタのセットを書きますが、まねをして♀が殺されても責任は持てません。

◎私のヒラタのセット
まず♂のみケースの中に入れます。オスがケースの中の環境になじむまではメスを入れない方がいいです。
♂が環境に慣れず興奮している時には♀を入れると敵だと思ってかみ殺す場合があります。
マットの上は、エサ皿以外に転び止めの材を多めに入れてください。♀の逃げ場をたくさん作ってあげるのがポイントです。


講座4  幼虫飼育/菌床ビン
幼虫飼育には、菌糸ビン飼育・マット飼育・材飼育が基本にあります。 昨今は、菌糸ビン飼育で70mmUPは当たり前の時代になっていますが、マット飼育・材飼育で70mmを越えることは今でも至難の業です。

●菌床ビン

現在クワガタの幼虫飼育は、菌床飼育が主流です。
菌床には、キノコの種類で分けると大きく分けてオオヒラタケ(ヒラタケ)とカワラの2種類。
樹種では、クヌギ、コナラ、ブナ、ナラ、エノキなど色々な樹種が使用されています。
最近の菌床は、非常に性能が良くなっていますので基本的にどんな菌床を使ってもそれなりに大きくなります。
国産クワガタ(特にオオクワ)はクヌギのオオヒラタケをお勧めします。ミヤマは菌床ではカワラをお勧めしますが基本的にはマット飼育でしょう。
外産クワガタですが、クヌギを嫌う種がいます。クヌギ自体が外国には無い種で苦みがあり幼虫の口に合わないみたいです。クヌギ100%でなくブナ、ナラ、エノキのブレンドした物をお勧めします。
全く平気な虫もいますので菌床を購入する時に問い合わせてください。
私は、オオヒラタケはブナかエノキのブレンドしているを使用します。
外産には、オオヒラタケに向かない種もあります。このような虫は、カワラがいいみたいです。
菌床は、生き物ですので高温に弱いです。温度は25℃以下で保てる環境が必要です。
高温にさらされると劣化がひどく幼虫が死ぬ場合があります。
温度管理が出来ない場合は、マット飼育をお勧めします。


講座5  幼虫飼育/マット飼育

●マット飼育

基本的な発酵マットの作り方
クヌギ20(重量比)+薄力粉2+きな粉1+味の素(少々)+発酵バクテリア(幼虫の食べかす)+水(手で固めて団子が出来るぐらい)
上記の分量をよくかき混ぜてケースに入れ、上から堅く押しつけます。 2〜3日で高温になり発酵が始まります。
2,3日おきによくかき混ぜてください。2〜3週間で発酵は終わり温度が低くなります。
発酵中は、加水しないでください。発酵が終われば、きれいなきつね色になり不快な臭いはしません。
最近,ふすまやビール酵母などで発酵マットを作るのがはやってますが、重量比10%以下に押さえてください。

注意使用するときに加水すると温度が上がることがあります。この場合は、一日おいてから使用してください。
発酵と腐敗は違います。発行済みのマットからは不快な臭いはしません。もし発酵に失敗して腐敗したマットも捨てずに乾燥させてください。もう一度、発酵をやり直せば発酵マットが出来ます。
発酵マット作りは、温度が20℃以上必要ですので、今の時期(10月頃)からは、温度が足りずに発酵がうまくいかない場合があります。
マットの入ったケースを毛布でくるむか、電気カーペットの上に置くか、、車のトランクの中に入れても発酵させることが出来ます。ただし、発酵中は、臭いがかなりきついので苦情が出ても知りませんよ。(^o^)

マット飼育でオオクワの70mmUPを狙うには
温度管理なしで70mm以上を狙うには、出来れば初令幼虫を5月までに作ってください。 最低18g以上必要です。10月から11月ぐらいで3令幼虫(出来れば20g以上)にして3月から4月ぐらいに蛹にするのがベストです。 7~8月の幼虫も、同じように3月から4月頃に蛹になるパターンが多いので大型個体は望めません。 このような場合は、材飼育で2年1化を狙うと大型個体が出来やすいです。

マットの見分け方
・肌色のマット・・・未発酵マットで幼虫は死にませんが、マットを消化できないので小さい個体しかできない。
・オレンジ色のマット・・・発酵がまだ終わっていないため温度が上がり気味で、すぐに蛹になり小さい個体しかできない。
・きつね色(濃いオレンジ色)のマット・・・理想的なマット
・焦げ茶色のマット・・・・マットの雑菌が増えて成長はストップする。
・黒マット・・・・雑菌だらけで幼虫は死ぬ。

マットの交換の仕方
マットが焦げ茶色になれば交換しますが、マットを全交換せずに下半分を新しいマットに交換して上半分は古いマットのままにします。幼虫がマットに慣れてくれば、新しいマットに潜ります。マットは9割ぐらいを堅く詰めてください。

大型個体を狙う その他の条件
もちろん血統も必要ですが、いかにして幼虫の中に沢山の体内バクテリアを取り込むかです。

◆体内バクテリアについて
幼虫は、どんなにいい材やマットでもただ食べるだけでは栄養として吸収することは出来ません。 体内バクテリアによってセルロースを分解し、でんぷんとして吸収しています。 菌糸ビンでは菌糸が体内バクテリアの代わりにセルロースを分解する手助けをしてます。 それで、菌糸ビンを使うと幼虫が大きくなるのです。 究極のマットは、バクテリアマットです。

どのようにして体内バクテリアを沢山取り込むか
蛹室を捨てずにためて於いてください。この中には体内バクテリアがたくさん含まれています。 これを混ぜたものを初令幼虫にプリンカップで2令ぐらいまで食べさせてください。体内バクテリアを沢山含んだマットを食べることよって、初令幼虫の中にも体内バクテリアを取り込むことが出来ます。


講座6  幼虫飼育/材飼育

●材飼育について

現在古典的な飼育法になりつつある材飼育ですがいろいろと利点があります。
・体の型・・・飼育ビン飼育よりがっちりする
・体の色・・・外皮が厚いので黒光りする
・体の艶・・・菌糸ビンより良いようである

菌糸ビン飼育は、確かに大型個体ができますがただ大きく太い個体が多い。
特に菌糸ビンによる累代が進むとその傾向は大きい(最近は、それがカッコイイと言う人もいますが材飼育による大型個体の方が、カッコイイし寿命は長いような気がします。どうも菌糸ビンによる成虫は、ただの虚弱で肥満なのではないか??)

材飼育の方法
材を半日水につけ、1日陰干しします。
初令幼虫の場合は、材に直径1cm深さ3cmぐらいの穴を開け、幼虫を入れてティシュで栓をします。
それを、ミニケースか小ケースのマットの中に埋め込むだけです。 (マットは、あまり加湿しないほうがいいです。材からも水分が出ますので水分過多になります)
あとは乾燥しない用にビニールをかけておくだけです。

材飼育の長所
手間がいらない・コストが安い・羽化不全が少ない
材を割って成虫を捕りだしたときの感動は菌糸ビン飼育の比ではない!

材飼育の欠点
幼虫の様子が見えない・材の交換のタイミングが難しい・場所をとる・成虫の時期が難しい

材交換のタイミング
基本的には、半年に1回ぐらいでいいと思います。
材を取り出して柔らかく、ぼそぼそになっていれば交換。材がしっかりして、堅ければそのまま交換しない。

材の種類
クヌギ、ナラの産卵木でも成虫にすることは出来ますが、より大型個体を望むにはエノキのカワラ材や芯のない太い熟成した材をお勧めします。

菌糸ビン飼育しかしたことのない人は、是非1度は試してみてください。

型がすべてのホーペイなどは材飼育の方がいい形が出るように思います。今後、ホーペイに関しても材飼育に挑戦したいと思います。ホーペイは、幼虫の成長が早いので。春先に幼虫をセットすれば来春にはいい形の個体が出そうな気がします。菌糸ビンでは、温度管理なしで春に幼虫を入れれば秋に小さな個体になる場合が多いです。



講座7  越冬のさせ方(9~10月頃)
温度管理なしでのクワガタの産卵は、9月末か10月初めで終わりです。 そろそろ越冬準備をしなければ行けません。
越冬できるクワガタ ・・・オオクワ・コクワ・ヒラタ・スジクワ
越冬出来ないクワガタ・・・ミヤマ・ノコギリ・ネブト・アカアシなど
越冬出来ない個体は、部屋内の暖かいところで死ぬまで大切に飼いましょう。
越冬するには十分な栄養が必要です。9月終わり頃から、高蛋白ゼリーなどを与えて十分な体力をつけさせてください。

●越冬セットの作り方
クワガタは、11月頃から3月頃までは何も餌を食べずに水分だけで生きます。 ケースの底に十分水分を含んだ材を引き詰めてください。その上に、乾燥したマットを堅く詰めてください。 (マットが湿りすぎると、かびが生えて死ぬ原因になります。)最上部は、転倒防止の材や皮を引き詰めてください。足場があれば、クワガタが安心してマットに潜ることが出来ますし、乾燥防止になります。 ケースの上には、ビニールをかけ、空気穴を2,3個開けてください。 念のためケースの中には餌を1個入れておいてください。 風通しのいい北側の出来るだけ温度変化の少ないところに置いてください。 冬場も1カ月に一度ぐらいはチェックしてくださいね。死亡の原因のほとんどは乾燥です。 暖かい場所に置くと、冬場の暖かい日にマットから出て死亡の原因になります。 この状態で3月初旬(啓蟄の頃)まで触らずに置いておきます。