大阪オリンピック環境委員会委員長
盛岡 通様
大阪オリンピックいらない連
〒532-0004大阪市淀川区西宮原1丁目5-14 週刊釣りサンデー内
電話 06-6395-8144 FAX 06-6395-8232
代表 小西和人(週刊釣りサンデー会長)
木村達也(弁護士)
松浦米子(市役所見張り番)
「大阪オリンピック環境ガイドラインとその取り組みについて(中間とりまとめ)」 に対する意見書
1.公害の克服の経験と英知の活用などと謳う大阪市の欺瞞性
大阪オリンピック環境ガイドラインでは、1960年代に顕在化した深刻な公害問題 を引き起こした原因が、大阪市自身にもあることに触れていない。大阪市が、都市域に 自動車交通を集中させ、渋滞を引き起こし、大気汚染による被害が発生するのを放置し てきたことには全く触れず、殊更に大阪市の施策の成果のみを述べている。このように 、歴史認識が全く欠如し、反省無き姿勢では、公害の克服の経験と英知の活用など土台 不可能である。
しかも、深刻な公害を克服した原動力は、公害によって被害を受けた人々が業を煮や して起こした公害反対運動とそれを支える世論の喚起であり、大阪オリンピック環境ガ イドラインが述べるような、大阪市を中心とする企業や関係行政団体の科学的データの 蓄積や公害防止技術・環境保全技術の開発によるものでは断じてない。
また、瀬戸内海保全特別措置法の埋立禁止区域である大阪湾を埋め立て、海岸線を全 てコンクリート護岸で固め、生物の住みかたる浅海を徹底的に破壊してきた張本人は大 阪市自身であるが、大阪オリンピック環境ガイドラインでは、全くそのことに触れてい ない。
2.循環型・環境共生型社会に向けた施策を本気で行うとは思われない
大阪オリンピック開催予定地たる舞州・夢州の造成は、大量消費社会から発生する大 量の廃棄物を前提に進められており、大阪オリンピック環境ガイドラインが謳うような 循環型・環境共生型社会の実現を本気で目指せば、大阪オリンピック開催のための用地 は当然確保できなくなる。
このような本質を隠蔽し、殊更に様々な環境対策を羅列したところで、全く意味がな いばかりか、90年代に入り欧米の環境技術対策に追い越された日本の環境保全技術の みを世界に発信していくとは笑止千万であり、恥をさらすだけである。環境委員会でも 、「大阪市のごみ分別の実体を見れば、世界のモデルになるとはとても言えない」とい う委員の発言もあった。
2−1 舞州・夢州はダイオキシンで汚染されたゴミの島である
大阪オリンピック環境ガイドラインでは、舞州・夢州の造成には、埋立材として、都 市活動に伴う建設残土や廃棄物、浚渫した水底土砂を環境に十分配慮しながら用いてい ると述べているが、これらの埋立材は汚染されていることが分かっており、全く環境に 配慮されていない。特に、廃棄物にはゴミ焼却による焼却灰が含まれ、それはダイオキ シンによって汚染されている。また、浚渫土砂も、ダイオキシン、PCB、スズ化合物 に汚染されていたことが報道によって明らかになっている。
2−2 競技施設や関連施設(選手村・交通機関など)の整備や運営は環境共生型か?
大阪オリンピック環境ガイドラインでは、競技施設や関連施設(選手村・交通機関な ど)の整備に当たり、資源やエネルギーの消費を最小限に抑えた環境への負荷の少ない 施設整備を行うと謳っているが、どのような基準と評価をもって環境への負荷が少ない と述べているのか全く示されていない。そして、環境への負荷が少なくなっているかど うかの管理システム構築にも全く触れられておらず、マネージメントが適正に行われる か、非常に疑わしい。
本来、オリンピックを開催しなかったときと比べて、どれだけ環境への負荷が増える かを算出し、いかにそれを少なく抑えるを具体的に計画しないと環境共生とは言えない 。オリンピック開催を前提として、その事実から出発して少しでも環境対策を行えばそ れをすべて成果として考える発想では、真に環境への影響を抑えたオリンピックという ことはできない。
2−3 オリンピック開催時の公共輸送計画は絵に描いた餅に過ぎない
大阪オリンピック環境ガイドラインでは、公共交通ネットワークの利用により、無秩 序な自動車交通利用を抑制し、総合的なマルチモーダル交通システムにより円滑な輸送 をはかるとしている。しかし、産業集積された大阪の自動車交通の中心は物流であり、 経済活動のための物流輸送を抑制することは困難である。したがって、公共交通ネット ワークの利用や高度道路交通システム(ITS)、ましてやパークアンド等では、円滑な輸 送をはかることなど不可能であり、絵に描いた餅に過ぎない。
また、舞洲への輸送計画は、たった17日間のオリンピック開催期間中の膨大な観客 輸送を前提につくられるが、開催後にたとえ夢洲に計画どおり6万人の人口が居住した としても過大な輸送力となり、地下鉄などの建設に要する資源エネルギー、環境への影 響は甚大なのもとなる。ここには、「公共交通を使う」とさえ言えば環境対策となると いう安易な姿勢が見え、ごく初歩的な環境問題に対する認識の欠如が見られる。
2−4 環境アセスメントのやり直しは当然である
行政当局は、舞洲での事前の環境アセスメントは画期的だとしている。しかし、舞洲 での環境アセスメントは、今の競技施設予定地をゴルフ場計画としてすでに終わってい る。この事実を知らずに、画期的だというのは見当違いであるばかりでなく、開催予定 地のことを十分調ようとしないで、コンサルタント会社に机上のプランを出させて満足 している招致局の姿勢をよく表している。このように招致局は、舞州開発に対して自ら の無知をさらけだしている。
開発地域の40%を占めるゴルフ場を中止した以上、前提条件が大きく変わり、環境 アセスメントをやりなさないといけないのは当然である。
3.予算獲得のためのオリンピック利用はやめよ
大阪オリンピック環境ガイドラインに挙げられている様々な施策は、大阪市の各部局 の施策を総花的に羅列したものに過ぎず、オリンピックとは直接関係のない施策も多々 含まれている。オリンピック開催を事業推進のための”錦の御旗”としてしか考えてい ないのではないかと思わせる。
本来、”まちづくり”とは地域住民との対話による信頼関係に基づき進められるべき ものであるが、オリンピック開催のための舞州・夢州への集中的な投資は、市民を全く 無視した施策になり、市内の他地域への再開発のための投資を減らすことにもつながる 。
また、昨今の環境に対する市民意識の高揚に伴い、いくら行政当局が埋立地(舞州・ 夢州)は安全であると言い張ろうとも、ダイオキシンなどに汚染された浚渫土砂を埋立 材として造成した土地に建設される住宅に、市民を惹き付けることはできない。大阪オ リンピック環境ガイドラインで描かれているバラ色の”まちづくり”のために投下され る資本(住宅建設や公共交通の延伸など)が将来的に回収される可能性は非常に低く、 最終的に一般財源から補填するこちになるだろう。これは、財政を一層硬直化させるだ けである。WTCやATC、OTSを見よ!。巨額の赤字をかかえた姿は、大阪オリン ピック計画の暗い未来そのものである。
4.市民に対して具体的な施策(財源的裏付けをも含めた)を明らかにし、行政評価を 行うべきではないか?
大阪オリンピック環境ガイドラインで述べられている施策を全て実現させる場合、一 体どれだけの環境負荷が発生し、その発生した環境負荷をどの程度まで、どのような方 法で具体的に低減させるのか明らかにせず、地球環境保全を述べるなど全く理解できな い。ガイドラインには含まれていないダイオキシンやPCB汚染土砂に汚染された開催 予定地の現状回復も当然必要である。
また財政面から見れば、大阪オリンピック環境ガイドラインで述べられている施策を 全て実現させる場合、一体どのくらいの費用がかかるのか、またその財源の裏付けはな んなのか、どの程度の期間を踏まえて施策をおこなうのか一切明らかにされておらず、 税収に見合った計画になっているのか全く分からないし、もし計画通り進まなかった場 合の対応策(責任の取り方も含めて)も示されていない。これでは、市民はオリンピッ ク開催の是非に判断の下しようがない。
そもそも、環境への配慮を本気で謳うなら、環境への影響が大きく対策費も膨大な額 になることが予想される場合、オリンピック招致自身をやめる場合も想定すべきである 。
特に、昨今、国・都道府県・市町村の財政状況の厳しい中で、どの施策を優先させ、 果たしてその施策が本当に費用に見合ったものになっているのかが厳しく問われている のであり、行政当局は、”なにもしない”(オリンピック中止)という選択肢をも含めた計画案をまず市民に提 示すべきである。オリンピック開催を前提として、「それに必要な環境対策費はくらで も使います」というのでは、納税者は納得しない。
5.市民・企業・行政のパートナーシップを本気で進めるとは思われない
これまでの大阪市は自らに都合のよい情報のみを提供し、都合の悪い情報は開示せず 、問題がおこったときに慌てて対応してきている。これでは、行政の信頼性も損なわれ 、当然、市民の信頼を得られるはずがない。
また、行政内部においても、オリンピック招致局と他の市部局との連携がとれていな い。舞州に埋め立てられた焼却灰に含まれるダイオキシンや排水未処理水放流・PCB 汚染土砂の問題など、具体的に挙げればキリがないぐらいである。特に招致局は、情報 を公開しないというよりも、必要な情報を集める姿勢さえないのが実情である。これは 、招致推進のための情報も不足していることを表している。
97年7月にわれわれがスタジアム予定地にダイオキシンが埋まっていることを指摘 したとき、招致局の担当者は初めて聞く話におろおろするばかりであった。しかも、そ の後この問題に関してすぐに対応することをせず、98年5月の新聞報道によってよう やく問題の所在を認める状況であった。この10カ月の間、市長はオリンピックに触れ た講演を行うたびごとに、「舞洲へ投入するごみはちゃんと焼却しているから大丈夫で す。」とダイオキシン問題の認識の甘さを露呈し続け、まわりの職員も市長に忠言する こともなかった。
しかも、上述のような問題は、我々”大阪オリンピックいらない連”が再三再四、忠 告・苦言を呈してきたにもかかわらず、全く改善されておらず、各部局間での責任の押 しつけあいに走るなど無責任も甚だしい。マスコミにとリあげられてようやく問題の所 在を認めることを繰り返しており、失敗からの教訓も得ていない。このようなレベルの 低さでは、”大阪オリンピックいらない連”の忠告でさえ招致局に必要な情報を示唆す ることになり、まるで我々の行為が招致推進になっているのではないかと危惧するほど である。
このように市役所内の部局間でもパートナーシップがない状態で、市民・企業・行政 のパートナーシップの形成(信頼関係の形成と解釈する)などは土台無理であり、それ 自身を謳うのも恥ずかしい。
行政当局自身、自らに都合の悪い情報も率先して開示し、真の市民・企業・行政のパ ートナーシップの形成に向けた実践的・具体的取り組みを明らかにすべきである。
6.大阪オリンピック環境委員会そのものの姿勢
大阪オリンピック環境委員会には一部良心的な委員は存在するものの、大半は物言わ ぬ委員であり、何のために市民の税金を使ってまで開催しているのか、理解に欠けてい るのではないかと思わせることが多い。もう一度委員は襟を正し、環境に配慮できなか った場合、身銭を切ってまで環境回復を計るぐらいの気概でもって、委員会に望んで欲 しい。
特に、大阪オリンピック環境委員会の目的を全く理解しない委員がいることは残念で ある。例えば、最近発覚したPCB汚染土砂問題の重大さの認識に欠け、これを報道し たジャーナリズムの批判的精神を理解せず、逆にオリンピックへの協力のためには「手 続きが書けていただけで、大した問題ではないから、このような報道を控えるべきであ る。」と主張する質の悪い委員も存在する。このような委員は即刻解任すべきである。
7.その他
大阪オリンピック開催予定時期の7月下旬から8月中旬は、大阪市民ならずとも知っ ている最も蒸し暑い時期である。このような時期を選定していながら、”選手本位の大 会運営”と謳うにはよほどの覚悟と勇気が必要である。それこそ選手の生存環境さえ危 ぶまれる。また、スポーツを通じて環境意識を高めるために環境に配慮した民生用のス ポーツ用品の普及を謳う等は、穿った目で見れば特定の企業と癒着しているのではない かと思わせる。
大阪市は現在、大阪港の沖合に人工島「新島」をごみで埋立ようとしている。オリン ピックを行う舞洲の眼前で海を破壊する計画である。しかも、オリンピック開催のため に建設する地下鉄や選手村のためには、現在の埋立地夢洲を早く埋めないければならな い。その結果、次の海面埋立を予定しあえて海を破壊しようとしているのである。この ような計画をやめない限り、大阪市の作った環境ガイドラインを信用する人はいないだ ろう。
結語
以上の観点から、行政当局は、まずもって循環型・環境共生型のまちづくりを完成さ せた後、オリンピック招致に望むべきである。これらを実現していない大阪市は、20 08年夏のオリンピック立候補は辞退すべきである。ここまでに詳しく具体的に修正す べき個所をあげたように、ガイドラインの部分部分の修正自体を否定するものではない が、環境の観点から見て、大阪市にオリンピック立候補する資格がないことは、火を見 るより明らかである。