都市計画基準違反の問題



 都市計画法では、地下鉄は「都市施設」とされています。都市施設を整備する基準は、都市計画法13条で「都市計画基準」として規定されています。そして、同法13条1項6号で、「都市施設は、土地利用、交通等の現状および将来の見通しを勘案して、適切な規模で必要な位置に配置することにより円滑な都市活動を確保し、良好な都市環境を保持するように定めること」と規定しています。北港テクノポート線は、次の理由から都市計画基準に違反せず違法であると言えます。

(1)適切規模要件違反
 一般に、地下鉄は高速大量の輸送機関であり、中量中速の新交通システムに比べて建設費用と建設後のランニングコストが高いのが特徴です。従って、地下鉄を建設するには路線の周辺地域に相当量の人口の張り付きが必要で、将来の見込みが必要です。その条件を無視して、地下鉄を整備すると、建設費が無駄になるだけでなく、ランニングコストの赤字に未来永劫悩まされることになります。現在のテクノポート線(大阪港−コスモスクエア)や大阪市の地下鉄(御堂筋線以外皆赤字)が赤字営業を続けているのを見ればわかるでしょう。
 実際に、これまで人工島の交通機関は、大阪南港のニュートラム、神戸のポートアイランド線、六甲アイランド線などすべて新交通システムで整備されてきました。
 また、大阪市が北港テクノポート線の根拠としている、平成元年の運輸政策審議会答申第10号では、その整備理由に「テクノポート大阪計画(北港地区)に伴い発生する輸送需要に対応するために必要な路線であり、新交通システムとして整備する路線である。」と記しています。
 しかし、大阪市は、都市計画法が定める規模要件に違反して、フル規格の地下鉄線を建設しようとしています。これでは赤字経営になって行き詰まるのは目に見えています。

(2)防災要件違反の問題
 都市施設が安全であること、防災性が高いことは、都市計画基準に直接書かれているものではありませんが、当然の前提としているものと考えられます。
 例えば、大阪市営地下鉄中央線は、水害による水没を考慮して、九条−大阪港の区間を高架鉄道として整備しています。これは、高潮などの水害が発生しても都市インフラとしての地下鉄を運行する必要性を配慮したものと考えられます。
 しかし、海底を通る北港テクノポート線は全線地下鉄として計画されています。これでは、水害の場合に地下鉄が容易に水没し、都市インフラとして機能しなくなります。

(3)位置条件違反の問題
 平成元年の運輸政策審議会答申第10号では、北港テクノポート線の整備予定範囲はコスモスクエア−夢洲−舞洲までで、舞洲から先は「テクノポート大阪計画の進捗状況、当該整備に伴う新規需要の規模、北港〜大阪交換の路線による対応を総合的に勘案して、路線整備の必要性について検討する。」と書かれているに過ぎませんでした。その理由は、此花区の西半分が工業地帯であり、鉄道建設の必要性が疑わしいからです。
 ところが、今回、大阪市は、答申に反して舞洲−新桜島間も着工しようとしています。これは、地下鉄線をさらに此花区方面へ延伸しようとするものと考えられ、不必要な整備です。

備考:
 大阪市は、オリンピックの際には、JR線を1駅北に延伸して新桜島駅で北港テクノポート線に接続するように説明しています。しかし、JR線を新桜島駅に延伸するのは方向を急転換する不自然な形になりますし、このような接続形態では、北港テクノポート線とJR線が直交する形になり円滑な乗り換えができません。仮に、此花区から舞洲方面に鉄道を整備する必要が将来生じたとしても、(a)JR桜島線を舞洲まで延伸する、(b)北港テクノポート線を桜島駅まで延伸する、のどちらかにするのが当然です。現在のような計画にしたのは、北港テクノポート線の此花区方面への延伸を意図したものとしか考えられません。
 北港テクノポート線は2000年12月12日に都市計画決定されましたが、JRの桜島−新桜島間は都市計画決定されていません。つまり、現在の計画では、海から来た北港テクノポート線が新桜島まで来て、市内方面への接続がないという計画になっています。
 オリンピック落選の場合→JRの新桜島までの延伸はない→新桜島まで伸ばして接続無しでは困る→北港テクノポート線の阪神千鳥橋までの延伸を無理矢理認めさせる、という大阪市の意図が見え隠れしています。