地盤沈下の問題



 関西国際空港の地盤沈下の問題が連日新聞を賑わせていますが、実は北港テクノポート線も同じ問題を抱えています。


 まず、大阪市が行った環境アセスメント準備書「大阪都市計画都市高速鉄道北港テクノポート線 環境影響評価準備書(平成12年7月)」の記載を見てみましょう。地盤沈下については、201ページから記載されていますが、そこに舞洲の2地点における地盤沈下の実績が示されています。それによると1996(平成4)年8月から1999(平成11)年11月までの7年余りの間の累計沈下量は68.6cmおよび76.2cmです。また、最近1年間の沈下量は3〜5cm程度となっています。新聞で騒がれている関空の沈下量に比べると小さいように見えます。


 しかし、舞洲の埋立が終わったのは1987年ですから、ここに示された地盤沈下は埋立完了から9年後からのものです。北港テクノポート線の場合は、夢洲の埋立直後から建設されるので、さらに急激な地盤沈下は必至です。埋立直後のデータがないから、その予測ができないのでしょうか?いいえ、市はデータを持っています。


 本年(2000年)11月12日付けの大阪民主新報の記事(大阪市 地盤沈下中に工事強行計画 北港テクノポート線)に、市当局が提出した調査でも、「最初の3年間で7メートル物地盤沈下が観測されている」、「舞洲のデータでも3年を過ぎても年間50センチ前後の沈下が観測されています」との記載があります。


 大阪市は、舞洲の激甚な地盤沈下データを隠して、問題が無いように装った準備書を作成したのです。


 さらに対策については、準備書に「本建設工事区域は、埋め立て地であることから地盤が軟弱であるという特性を有しており、鉄道構造物が沈下による影響を受けない構造にする必要がある。したがって、本事業の実施にあたっては、地盤沈下による影響を受けない適切な構造や工法を採用する。」と記載されているのみです。


 しかし、これでは、市が環境影響評価の意義を理解していないことになります。「○○という(具体的な)工法を採用するので、地盤沈下は○○cm程度に抑えられると考えるので問題はない」とするのが正しい環境アセスメントです。「適切」か否かは予測・評価の結果であって、適切だから問題ないというのは影響評価とは言えません。


 大阪市は激甚な地盤沈下が予測され、かつ影響評価の機会がありながらそれを怠って工事を強行しようとしているのです。(ちなみに環境影響評価では、当該事業に伴って生ずる地盤沈下を対象とするのが普通ですが、もしそれを理由に市が埋め立て地そのものの地盤沈下を環境影響評価の対象外とするのであれば、事業に先だって別途地盤沈下の予測・評価・意見募集・対策検討を行うべきでしょう。)


 大阪オリンピックいらない連は環境影響評価の制度に則り、上記の指摘を含めた意見書を提出しました。市議会(2000年11月2日環境対策特別委員会、共産党辻議員質問)でも地盤沈下の問題が取り上げられています。


 もし、数メートルの地盤沈下が現実のものとなり、建設不可能又は追加の対策費用が発生することになっても「不測の事態」などと説明することは許されません。「その時」は、確信犯として厳しい責任追及が待っています。