概説 |
てんかん発作をふせぐお薬です。また、躁病の治療や、片頭痛の予防にも用います。 |
作用 | 
- 【働き-1】

- てんかんは、脳の神経の電気信号が過剰に発射され、意識障害やけいれん発作を繰り返す病気です。診断のために脳波検査を行うと、異常な電気的活動によるてんかん性異常波がみつかります。このお薬は、抗てんかん薬です。脳神経の興奮をおさえて、てんかん発作を予防します。また、怒りやすい、不機嫌といった てんかんにともなう性格行動障害を改善します。子供に多い欠神発作(意識消失発作)いわゆる小発作をふくめ、部分発作、全般発作を問わず さまざまな発作型に広く使用されています。作用のしかたは、脳神経の興奮をしずめるガンマアミノ酪酸(GABA)の脳内濃度を高めるなどして、抗けいれん作用を発揮します。

- 【働き-2】

- 躁状態がひどくなると、落ち着きがなくなり、妙にはしゃいだり、怒りっぽくなったり、行動がエスカレートしてきます。ときに、家庭や社会で大きな問題を起こしてしまう病気です。このお薬は、そのような躁病や躁うつ病の躁状態の治療に用います。脳の神経をしずめて、気分の高ぶりをおさえ落ち着かせます。

- 【働き-3】

- 片頭痛は慢性頭痛のひとつです。ズキンズキンと脈打つような強い頭痛が発作的に起こり、吐き気や嘔吐を伴うことも多いです。このお薬の第3の効能は、片頭痛の予防です。脳の神経をしずめる作用により、脳血管の異常な運動(収縮・拡張)がおさえられ、片頭痛が起こりにくくなります。処方対象は、発作頻度が多く日常生活に支障となる場合、トリプタン系など頓用薬の効果が不十分な場合などです。予防的に定期服用することで、発作回数の減少、前駆症状の軽減、また発作治療薬の減量がはかれます。

- 【薬理】

- ガンマアミノ酪酸(GABA)は、脳神経の興奮をおさえる抑制性神経伝達物質です。このお薬は、そのガンマアミノ酪酸の脳内濃度を高めます。さらに、ドパミン濃度を上昇、セロトニン代謝を促進し、脳内の抑制系を活性化させることで、脳神経の興奮をしずめます。
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特徴 |
- 一番処方されている代表的な抗てんかん薬です。全般発作に第1選択されるほか、いろいろなタイプのてんかんに標準的に使われています。
- 躁病と片頭痛に対する効能は、もともと日本では保険適用の対象外でした。その後、世界的な使用実績や国内での使用実態が考慮され、特例扱いで正式に追加承認されました。
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注意 |
 【診察で】
- 肝臓の悪い人など持病のある人、またアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 別に薬を飲んでいる場合は、医師に伝えておきましょう。
- 妊娠中の人は、医師にお伝えください。

- 【注意する人】

- 重い肝臓病や尿素サイクル異常症のある人は使用できません。腎機能障害がある場合は慎重に用います。また、妊娠中は基本的には使用しません。
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- カルバペネム系抗生物質は避けなければなりません。併用により、この薬の血中濃度が低下し、てんかん発作が再発するおそれがあるためです。カルバペネム系の多くは注射薬になりますが、飲み薬としてテビペネム(オラペネム小児用細粒)の1種類があります。
- そのほか、いろいろな薬と相互作用を起こしやすい性質があります。飲み合わせによっては、この薬の作用が強まり、副作用がでやすくなります。逆に効果が弱くなってしまうこともあります。服用中の薬は必ず医師に報告しておきましょう。
 【使用にあたり】
- 飲む量や飲む時間を必ず守ってください。ふつう、少量から開始し、効果や副作用をチェックしながら徐々に増量していきます。適量が決まったら、血中濃度を常に一定に保たなければなりません。用法用量を守ることが大切です。
- てんかんの治療においては、服用が長期になるものです。医師の指示どおりに飲み続けるようにしてください。自分だけの判断で急にやめてしまうと、重いけいれん発作を起こすおそれがあります。飲み忘れにも気をつけましょう。
- 片頭痛の治療においても、予防的に毎日規則正しく飲む必要があります。頭痛が起きてから急に飲んでもよい効果は望めません。頭痛発作が発現した場合には、必要に応じて別の発作治療薬(トリプタンなど)を頓用するようにします。なお、頭痛発作がなくなり症状が安定したなら、いったん服薬を中止して しばらく様子をみることがあります。症状がよくなってきたら、薬の継続について医師と相談してみるとよいでしょう。
 【検査】
- とくに飲み始めは、頻繁に肝機能検査をおこないます。腎機能検査や血液検査も大事です。
- 必要に応じ血中濃度を測り、用量の調整をおこないます。てんかんにおける有効血中濃度は、おおむね50〜100μg/mLの範囲です。ただ、個人差があり、これ以下の濃度で有効な臨床例も多いようです。
 【食生活】
- 規則正しい生活を守りましょう。
- 眠気を催したり、注意力・集中力・反射運動能力が低下することがあります。車の運転など危険な作業は避けてください。

- 【妊娠授乳】

- 妊娠中、基本的には使用しません。てんかんや躁病の治療でとくに必要な場合は慎重に用います。妊娠出産を予定している女性は、事前に医師と相談しておくとよいでしょう。医師と十分な打ち合わせをし、計画的に妊娠・出産することで、安全性が高まります。

- 【その他】

- てんかんの原因そのものを治せる薬はありません。多くの場合、予防的に長く飲み続ける必要があります。けれど、必ずしも減量・中止ができないというわけではありません。発作が長期間なければ、医師の管理のもと時間をかけてゆっくりと減量していくことも可能です。
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効能 |

- 【効能A】

- 各種てんかん(小発作・焦点発作・精神運動発作ならびに混合発作)およびてんかんに伴う性格行動障害(不機嫌・易怒性等)の治療

- 【効能B】

- 躁病および躁うつ病の躁状態の治療

- 【効能C】

- 片頭痛発作の発症抑制

- 【応用】

- 群発頭痛、鎮痛補助、その他さまざまな精神・神経症状
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用法 |
 【効能A・B】- <一般>

- 通常、1日量バルプロ酸ナトリウムとして400〜1200mgを1日2〜3回に分けて経口服用する。ただし、年齢、症状に応じ適宜増減する。
- <シロップ5%>

- 通常1日量8〜24mL(バルプロ酸ナトリウムとして400〜1,200mg)を1日2〜3回に分けて経口服用する。ただし、年齢・症状に応じ適宜増減する。
- <持効剤1(デパケンR錠)>

- 通常、1日量バルプロ酸ナトリウムとして400〜1200mgを1日1〜2回に分けて経口服用する。ただし、年齢、症状に応じ適宜増減する。
- <持効剤2(セレニカR顆粒)>

- 通常、バルプロ酸ナトリウムとして400〜1200mgを1日1回経口服用する。ただし、年齢、症状に応じ適宜増減する。
 【効能C】- <一般>

- 通常1日量バルプロ酸ナトリウムとして400〜800mgを1日2〜3回に分けて経口服用する。なお、年齢・症状に応じ適宜増減するが、1日量として1,000mgを超えないこと。
- <シロップ5%>

- 通常1日量8〜16mL(バルプロ酸ナトリウムとして400〜800mg)を1日2〜3回に分けて経口服用する。なお、年齢・症状に応じ適宜増減するが、1日量として20mL(バルプロ酸ナトリウムとして1,000mg)を超えないこと。
- <持効剤1(デパケンR錠)>

- 通常1日量バルプロ酸ナトリウムとして400〜800mgを1日1〜2回に分けて経口服用する。なお、年齢・症状に応じ適宜増減するが、1日量として1,000mgを超えないこと。
- <持効剤2(セレニカR顆粒)>

- 通常、バルプロ酸ナトリウムとして400〜800mgを1日1回経口服用する。なお、年齢、症状に応じ適宜増減するが、1日量として1000mgを超えないこと。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
てんかんの薬を、自分の判断で急に中止すると、反動で重い発作を起こすおそれがあります。用法用量を守り規則正しく飲むことが重要です。
副作用でわりと多いのは、眠気、ふらつき、吐き気、食欲不振、けん怠感などです。これらは、飲み始めに多く、しだいに軽減することが多いのですが、症状が強い場合は早めに受診なさってください。
重い副作用は少ないですが、まれに肝臓が悪くなることがあります。とくに飲み始めの数カ月間にあらわれやすいようです。ほかにも、高アンモニア血症による意識障害、貧血、血液障害、膵炎、過敏症症候群などが報告されています。定期的に各種の検査を受けて、効き具合や副作用のチェックをしてもらいましょう。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
- 高アンモニア血症を伴う意識障害..吐き気、眠気、ふるえ、異常な言動、もうろう。
- 重い血液成分の異常..発熱、喉の痛み、口内炎、だるい、皮下出血(血豆・青あざ)や鼻血・歯肉出血など出血傾向。
- 膵炎..吐き気、吐く、持続的な激しい腹痛、上腹部または腰から背中の激痛、発熱。
- 重い皮膚・粘膜障害..発疹、発赤、水ぶくれ、うみ、皮がむける、皮膚の熱感や痛み、かゆみ、唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血、発熱、全身けん怠感。
- 過敏症症候群..発疹、発熱、だるい、吐き気、リンパ節の腫れ、皮膚や白目が黄色くなる。
- 腎臓の重い症状..尿が少ない・出ない、尿の濁り・泡立ち、血尿、むくみ、だるい、吐き気、側腹部痛、腰痛、発熱、発疹。
- 脳神経の異常(多くは中止で回復)..物忘れ、思考力低下、うまく話せない、体のふるえ・こわばり、動作がにぶい、うまく歩けない。
- 横紋筋融解症..手足のしびれ・こわばり、脱力、筋力低下、筋肉痛、歩行困難、赤褐色の尿。
- 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)..だるい、のどが渇く、頭痛、吐き気、けいれん、意識もうろう、気を失う。
- 間質性肺炎、好酸球性肺炎..から咳、息苦しさ、息切れ、痰、発熱。
 【その他】
- 眠気、ふらつき、頭痛、ふるえ、不眠、けん怠感
- 吐き気、吐く、食欲不振、食欲亢進、体重増加
- 高アンモニア血症
- 発疹、脱毛
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