 概説 |
点頭てんかんを治療するお薬です。 |
 作用 | 
- 【働き】
- 点頭てんかん（ウエスト症候群）は、乳児期に発症する難治てんかんのひとつです。一般的なてんかん発作とは異なり、１回数秒程度のスパズム発作（攣縮）を５〜１０分続けます。スパスムの典型例が、両手両足を伸ばし、うなずくように頭を下げる点頭発作です。脳波ではヒプスアリスミアという不規則波があらわれ、精神・運動発達も好ましくありません。
このお薬は、そのような点頭てんかんに有効です。脳神経の過剰な興奮をしずめることにより、スパズム発作をおさえ、またヒプスアリスミア脳波を改善します。とくに結節性硬化症に伴う点頭てんかんに効果が高く有用です。ただし、重大な副作用として視野障害を起こしやすいため、眼科専門医と連携し慎重に用いる必要があります。
- 【薬理】
- ガンマアミノ酪酸‘ＧＡＢＡ’は、脳神経の興奮をおさえる抑制性神経伝達物質です。このお薬は、ＧＡＢＡを分解する酵素（GABA-T）と結合し酵素活性を阻害します。結果として脳内ＧＡＢＡ濃度が増加し、そのＧＡＢＡの働きにより脳神経の興奮がおさえられるわけです。
- 【臨床試験】
- この薬の有効性を検証する試験が国内でおこなわれています。参加したのは生後４週以上２歳未満の点頭てんかんの患者さん１３人です。全員がこの薬を服用し、決められた判定日に発作頻度が５０％以上減少した人の割合を調べます。
その結果、発作回数が５０％以上減少した人は、１３人中８人（61.5%）でした。まれな病気なので参加人数が少なく、プラセボ（にせ薬）との比較試験ではないのですが、海外での臨床試験もふまえ、点頭てんかんに対する有効性は十分期待できると判断されました。
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 特徴 |
- 点頭てんかんに有効な数少ない治療薬の１つです。脳波所見および点頭てんかん発作の改善が期待できます。
- 視野障害の副作用のため、新薬としての開発が長く中断されていました。そこで、未承認薬使用問題検討会議において、海外での使用状況をふまえ国内での開発が後押しされました。視野狭窄が報告されているため、使用にさいし厳格な安全管理手順（SRSP）が求められます。
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注意 |
【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えてください。
- 使用中の薬を医師に教えてください。
- ご家族を含め、副作用や注意事項をよく聞いておきましょう。とくに、視野障害の危険性について十分説明を受けてください。視野障害の早期発見を目的とする安全管理手順（SRSP）をよく理解し、同意のうえで治療にあたりましょう。
- 【注意する人】
- 黄斑症、網膜症、緑内障のある人、または既往歴のある人は視野障害の発現に十分注意しなければなりません。腎機能障害がある場合は低用量から始めるど、服用量や服用間隔に配慮する必要があります。
- 適さないケース．．決められた安全管理手順（SRSP）を守れない人。
- 注意が必要なケース．．黄斑症・網膜症・緑内障・視神経萎縮があるまたは既往歴がある人、精神病性障害・うつ病・行動障害があるまたは既往歴がある人、腎機能障害がある人など。
【使用にあたり】
- 少量で開始し、効果や副作用をチェックしながら適量まで増やします。服用量には個人差があります。通常、体重換算で１日５０mg/kgより開始し、その後３日以上の間隔をあけて１日５０mg/kgを超えない範囲で適宜増量するのです。至適用量が決まったら、その血中濃度を常に一定に保たなければなりません。決められた用法用量を守ることが大切です。
- １日量を１日２回に分けて服用します。飲む直前に1回分の粉薬を、適量の水に溶かしてから飲んでください。
- 飲み忘れた場合は、気付いたときに すぐ飲んでください。ただし、次に飲む時間が近い場合は、１回分は抜かし次の通常の時間に１回分を服用してください。２回分を一度に飲んではいけません。
- てんかん治療では、服薬が長期になるものです。医師の指示どおりに飲み続けるようにしてください。自分の判断でやめてしまうと、発作が増え悪化するおそれがあります。飲み忘れにも気をつけましょう。
- 【検査】
- 視野障害の早期発見が大事です。少なくとも３ヵ月に１回は視野検査を実施しなければなりません。また定期的に頭部ＭＲＩ（磁気共鳴画像法）検査をおこない脳に異常がないか調べます。
- 【妊娠授乳】
- 成人への処方は少ないと思いますが、妊娠中は慎重に用いる必要があります。妊娠出産を予定している女性は、事前に医師と相談しておくとよいでしょう。医師と十分な打ち合わせをし、計画的に妊娠・出産することで安全性が高まります。
【食生活】
- 薬の影響で眠りがちになったり、注意力や反射運動能力が低下すことがあります。危険をともなう遊戯はさせないようにしましょう。
- ご家族など付き添いの方は、服用後の体調変化に気をつけましょう。いつもと違うときは医師と連絡を取ってください。たとえば、普段より寝ている時間が長い、ぐったりしている、機嫌が悪い、興奮して激しく笑ったり泣いたりする、てんかん発作とは違う筋肉のこわばり、ふるえ、異常運動といった症状です。
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効能 |
点頭てんかん |
用法 |
通常、生後４週以上の患者には、ビガバトリンとして１日50mg/kgから服用を開始する。患者の症状に応じて、３日以上の間隔をあけて１日服用量として50mg/kgを超えない範囲で漸増するが、１日最大服用量は150mg/kg又は３gのいずれか低い方を超えないこととし、いずれも１日２回に分け、用時溶解して経口服用する。
- [注意1]本剤の投与開始後２〜４週間に治療効果が認められない場合、あるいは最高投与量である150mg/kg/日を投与しても症状の改善が認められない場合には、本剤の投与中止を考慮すること。
- [注意2]腎機能障害患者では低い用量で反応する可能性があるため、低用量からの投与開始、又は投与間隔の調節を考慮すること。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
もっとも重要で頻度が高いのが視野障害です。視野の周辺部が欠け、中心部だけしか見えなくなる‘求心性視野狭窄’を起こしやすいことが分かっています。程度はまちまちですが、おおよそ３人に１人の割合で起こるとされ、その頻度は長期間の服用、累積服用量の増加にともない高まります。このため、早期発見を目的とした定期的な視野検査が必須です。
脳の変化や脳症症状にも注意が必要です。脳の器質的変化は頭部ＭＲＩ（磁気共鳴画像法）検査で分かります。症状として筋肉のこわばり・つっぱり、ふるえ、繰り返し運動、体が勝手に動くといった運動障害をともなうことがあります。さらに、混乱・興奮、鎮静、意識障害などの脳症症状があらわれる可能性もあります。とくに急速に増量した場合や腎機能障害がある人は脳症症状に要注意です。気になるときは医師と相談してください。
そのほかで多いのは、ひどく興奮したり、眠れない、眠りがち、食欲不振、めまいなどをです。また、この薬の影響で肝機能値のＡＬＴ（GPT）とＡＳＴ（GOT）が低下することがあります。なお、てんかんの薬を自分の判断で急に中止すると、反動で重い発作を起こしてしまうおそれがあります。用法用量を守り規則正しく服用することが大切です。
【重い副作用】 ．．めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 視野障害、視力障害．．物が見えにくい、視野が欠け見えない部分がある（とくに鼻側）、周辺が欠け中心部しか見えない（横から物を近づけても気づかない）。
- 視神経萎縮、視神経炎．．かすんで見えにくい、目の痛み、突然の視力低下。
- 頭部ＭＲＩ異常、脳症症状．．ふらつき、鎮静・意識低下（うとうと、ぐったり、寝続ける）、混乱・興奮（機嫌が悪い、激しく泣き叫ぶ・怒る・笑う）、筋肉のこわばり・つっぱり、ふるえ、繰り返し運動、体が勝手に動く。
- てんかん重積状態、ミオクローヌス発作．．ぼんやり、意識低下、筋肉のぴくつき、つっぱり、けいれん。
- 呼吸障害．．息苦しい、息切れ（息が浅い・荒い・止まる）、顔色が青ざめる
【その他】
- 興奮、傾眠、不眠、めまい
- 食欲減退
- 肝機能値のＡＬＴ（GPT）・ＡＳＴ（GOT）の減少
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