概説 |
てんかん発作を予防するお薬です。 |
作用 | 
- 【働き】

- てんかんは、脳の神経の電気信号が過剰に発射され、意識障害やけいれん発作を繰り返す病気です。その発作型から、大きく2つのタイプに分かれます。脳の一部から興奮が始まる「部分発作」と、脳全体で始まる「全般発作」の2つです。ときに、部分発作から全般発作に移行することもあります(二次性全般化発作)。
そして、異常波の発生部位や広がりにより、さまざまな病状を呈します。部分発作では、運動症状のほか感覚異常や自律神経症状、精神症状などが発現します。全般発作のうち、その多くを占める強直間代発作(大発作)は、突然意識を失い硬直 転倒し、激しいけいれんを起こす重篤な発作です。
このお薬は部分発作と強直間代発作に有効です。単剤療法ではなく、他の抗てんかん薬で効果不十分な場合に併用療法をおこないます。発作頻度減少率は部分発作で30〜40%、強直間代発作で80%近くになります。併用されることの多い抗てんかん薬は、カルバマゼピン(テグレトール)、バルプロ酸(デパケン)、ラモトリギン(ラミクタール)などです。

- 【薬理】

- グルタミン酸は、脳内の興奮性神経伝達物質です。グルタミン酸の受容体のひとつAMPA型グルタミン酸受容体(AMPA受容体)は、非常に早い興奮性神経伝達を行う受容体で、てんかん発作の発生や伝播に中心的な役割を果たしています。
この薬は、AMPA型グルタミン酸受容体の活性化を選択的かつ非競合的に阻害することにより、グルタミン酸による神経の過剰興奮を直接抑制します。このような作用機序から、選択的AMPA型グルタミン酸受容体拮抗薬、または簡単にAMPA受容体拮抗薬と呼ばれています。

- 【臨床試験】

- この薬の効果をプラセボ(にせ薬)と比較する臨床試験が行われています。参加したのは、他の抗てんかん薬で十分な効果が得られない部分発作のある患者さん710人です。そして、この薬を低用量(8mg)併用する人、高用量(12mg)併用する人、プラセボを併用する人に分かれ効き目を比較します。
その結果、この薬で併用療法をおこなった人達の28日あたりの部分発作頻度減少率(中央値)は、低用量の人達で約29%(9.1→7.4回/28日)、高用量の人達で38%(9.9→6.4回/28日)でした。一方、プラセボの人達では11%(10.0→9.0回/28日)の減少に留まりました。
また、発作回数が50%以上改善した患者さんの割合(レスポンダー率)は、低用量の人達で約36%(63/175人)、高用量の人達で43%(78/180人)、プラセボの人達で19%(34/175人)でした。この薬を併用した人達のほうが明らかに発作頻度が減少したことから、この薬の有効性が証明されたわけです。
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特徴 |
- 新しい作用機序の抗てんかん薬です。作用機序からはAMPA受容体拮抗薬に分類されます。他の抗てんかん薬とは効きかたが違うため、難治性てんかんに対する新たな治療選択枝として期待されます。
- 部分発作に単剤療法として用いるほか、既存薬で効果不十分な場合に追加し併用療法を行うことも可能です。標準的治療薬のカルバマゼピン(テグレトール)やバルプロ酸(デパケン)と併用することが多いです。
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注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人、また妊娠中の人は医師に伝えてください。
- ご家族を含め、副作用や注意事項をよく聞いておきましょう。とくに、精神変調と転倒の危険性について、医師から十分説明を受けてください。

- 【注意する人】

- 肝臓が悪い人は薬の代謝・排泄が遅れがちです。そのため、服用量や服用間隔に配慮が必要です。
- 適さないケース..重い肝臓病のある人。
- 注意が必要なケース..肝臓病、腎臓病、高齢の人。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- いろいろな薬と相互作用を起こしやすい性質があります。使用中の薬を必ず医師に報告しておきましょう。
- 別の抗てんかん薬のカルバマゼピン(テグレトール)やフェニトイン(ヒダントール、アレビアチン)は、この薬の血中濃度を低下させます。併用のさいは、必要に応じて用量の調節をおこないます。
- 結核・抗酸菌症治療薬のリファンピシン(リファジン)やリファブチン(ミコブティン)、フェノバルビタール(フェノバール)なども、この薬の血中濃度を低下させる可能性があります。薬ではありませんが健康食品のセイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)にも同様の性質があります。
- 逆に、飲み合わせによっては、この薬の血中濃度が上昇する可能性があります。たとえば、マクロライド系抗生物質のクラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)、アゾール系抗真菌薬のイトラコナゾール(イトリゾール)、抗エイズウイルス薬のプロテアーゼ阻害薬などに注意が必要です。
 【使用にあたり】
- 服用量には個人差があり、また併用薬によって違います。少量で開始し、効果や副作用をチェックしながら適量まで増やします。通常、1回1錠(錠2mg)より開始し、その後1週間または2週間以上の間隔をあけて1錠ずつ増量します。肝障害のある人は、2週間以上の間隔をあける必要があります。飲む時間は1日1回寝る前です。
- 維持用量は通常1日1回4〜8mgです。ただし、この薬の代謝を促進するカルバマゼピン(テグレトール)またはフェニトイン(ヒダントール、アレビアチン)と併用する場合は8〜12mgとします。適量が決まったら、その血中濃度を常に一定に保たなければなりません。決められた用法用量を守ることが大切です。
- てんかんの治療においては、服用が長期になるものです。医師の指示どおりに飲み続けるようにしてください。自分だけの判断で急にやめてしまうと、重いけいれん発作を起こすおそれがあります。飲み忘れにも気をつけましょう。
- 飲み忘れてしまった場合には、次の日の就寝前に1回分だけ飲んでください(前日分は抜かします)。2回分を一度に飲んではいけません。
- ふらつきやめまいを起こしやすいです。高齢の人は転倒に十分注意してください。
- いつもと違う精神症状が気になるときは医師と連絡を取ってください。たとえば、いらいら感、怒りっぽい、興奮しやすい、混乱、攻撃的といった症状です。ご家族など付き添いの方も、行動の変化や不穏な行為に注意するなど、服用後の様子を注意深く見守りましょう。因果関係ははっきりしませんが、命を絶とうとする行為も報告されているようです。

- 【検査】

- 定期的に各種の検査を受け、効き具合や副作用をチェックしてもらいましょう。

- 【妊娠授乳】

- 妊娠中は慎重に用いる必要があります。妊娠出産を予定している女性は、事前に医師と相談しておくとよいでしょう。医師と十分な打ち合わせをし、計画的に妊娠・出産することで、安全性が高まります。
 【食生活】
- 眠気やめまいを起こしたり、注意・集中力や反射運動能力が低下すことがあります。車の運転をふくめ危険をともなう機械の操作や作業は避けてください。
- 健康食品やハーブティーとして販売されているセイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)の飲食はしないでください。飲み合わせにより、この薬の効果が減弱するおそれがあるためてす。
- アルコールといっしょに飲むと、眠気、めまい、ふらつき、転倒などを起こしやすくなります。飲酒はできるだけ控えましょう。
 【備考】
- てんかんは、発作の起源や症状、あるいは薬の効き具合から、2つの発作型に大別されます。部分発作と全般発作の2つです。部分発作の興奮の始まりは一側大脳半球の一部の神経からで、全般発作は両側の大脳半球からです。部分発作は、症状も部分的・限定的で、意識を保つこともあります。精神変調や自律神経失調、感覚異常を起こすタイプもこれに含まれます。一方、全般発作は、症状が体全体に及び、意識を失うことが多いです。激しい全身けいれんを起こすいわゆる大発作(強直間代発作)のほか、欠神発作や脱力発作がこれに当たります。また、部分発作から大発作に移行する例もあります(二次性全般化発作)。
- 処方薬は、発作型やその病因から決めます。一般的に、全般発作に対してはバルプロ酸ナトリウム(デパケン)を、部分発作にはカルバマゼピン(テグレトール)を第一選択します。原則、1種類とし、十分増量しても効果不十分な場合や副作用で継続できない場合は、他の薬に徐々に切り替えるようにします。どうしても1種類でコントロールできない場合に限り、2〜3種類の併用療法をおこないます。
- てんかんの原因そのものを治せる薬はありません。多くの場合、予防的に長く飲み続ける必要があります。けれど、必ずしも減量・中止ができないというわけではありません。発作が長期間なければ、医師の管理のもと時間をかけてゆっくりと減量していくことも可能です。
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効能 |

- 【効能A】

- てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)

- 【効能B】

- 他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法
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用法 |
 【効能A(部分発作)】- <単剤療法>

- 通常、成人及び4歳以上の小児はペランパネルとして1日1回2mgの就寝前経口服用より開始し、その後2週間以上の間隔をあけて2mgずつ漸増する。維持用量は1日1回4〜8mgとする。
なお、症状により2週間以上の間隔をあけて2mg以下ずつ適宜増減するが、1日最高8mgまでとする。
- <併用療法>

- 通常、成人及び12歳以上の小児はペランパネルとして1日1回2mgの就寝前経口服用より開始し、その後1週間以上の間隔をあけて2mgずつ漸増する。
本剤の代謝を促進する抗てんかん薬を併用しない場合の維持用量は1日1回4〜8mg、併用する場合の維持用量は1日1回8〜12mgとする。
なお、症状により1週間以上の間隔をあけて2mg以下ずつ適宜増減するが、1日最高12mgまでとする。
通常、4歳以上12歳未満の小児はペランパネルとして1日1回2mgの就寝前経口服用より開始し、その後2週間以上の間隔をあけて2mgずつ漸増する。
本剤の代謝を促進する抗てんかん薬を併用しない場合の維持用量は1日1回4〜8mg、併用する場合の維持用量は1日1回8〜12mgとする。
なお、症状により2週間以上の間隔をあけて2mg以下ずつ適宜増減するが、1日最高12mgまでとする。
 【効能B(強直間代発作)】- <併用療法>

- 通常、成人及び12歳以上の小児はペランパネルとして1日1回2mgの就寝前経口服用より開始し、その後1週間以上の間隔をあけて2mgずつ漸増する。
本剤の代謝を促進する抗てんかん薬を併用しない場合の維持用量は1日1回8mg、併用する場合の維持用量は1日1回8〜12mgとする。
なお、症状により1週間以上の間隔をあけて2mg以下ずつ適宜増減するが、1日最高12mgまでとする。
 【用法関連の注意】
- 1.本剤を強直間代発作に対して使用する場合には、他の抗てんかん薬と併用して使用すること。臨床試験において、強直間代発作に対する本剤単独投与での使用経験はない。
- 2.本剤の代謝を促進する抗てんかん薬(カルバマゼピン、フェニトイン)との併用により本剤の血中濃度が低下することがあるので、本剤の投与中にカルバマゼピン、フェニトインを投与開始又は投与中止する際には、慎重に症状を観察し、必要に応じて1日最高用量である12mgを超えない範囲で適切に用量の変更を行うこと。
- 3.軽度及び中等度の肝機能障害のある患者に本剤を投与する場合は、ペランパネルとして1日1回2mgの就寝前経口投与より開始し、その後2週間以上の間隔をあけて2mgずつ漸増すること。また、症状により2週間以上の間隔をあけて2mg以下ずつ適宜増減するが、軽度の肝機能障害のある患者については1日最高8mg、中等度の肝機能障害のある患者については1日最高4mgまでとする。
- 4.細粒剤の1回あたりの製剤量は、0.2g(ペランパネルとして2mg)〜1.2g(ペランパネルとして12mg)である。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
注意が必要なのは精神変調にともなう敵意や攻撃性です。ちょっとしたことで機嫌を悪くし、いらいらしたり、不安や怒りをあらわにすることがあるのです。命を絶つ行為に至ることもあるので、精神的な変化が気になるときは すぐに医師と連絡をとってください。
そのほか、めまい、ふらつき、運動失調、平衡障害、眠気や傾眠なども多くみられます。とくに高齢の人は、平衡障害による転倒にも十分注意してください。なお、副作用の発現率は、この薬の代謝を促進する抗てんかん薬(カルバマゼピン、フェニトイン)と併用しない場合に高くなることが分かっています。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 易刺激性・攻撃性..ちょっとした刺激で精神変調をきたし、不安、怒り、敵意をあらわにし攻撃的になる。
 【その他】
- めまい、ふらつき、運動失調、平衡障害、転倒
- 眠気、傾眠、頭痛
- 吐き気、嘔吐
- 発疹
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