概説 |
気分の浮き沈みを抑えるお薬です。躁病や躁うつ病の治療に用います。 |
作用 | 
- 【働き-1】

- 躁状態がひどくなると、落ち着きがなくなり、妙にはしゃいだり、怒りっぽくなったり、行動がエスカレートしてしまいます。このお薬は、「気分安定薬」とも呼ばれ、気分の波をおさえ、躁状態になるのを防ぎます。効いてくるまでに1〜2週間かかりますが、有効率は高く、70〜80%の人に効果があります。

- 【働き-2】

- 気分安定薬は、躁病以外の精神症状にも有用です。たとえば、一般的な抗うつ薬が効かない治療抵抗性のうつ病、重いうつ症状をともなう月経前不快気分障害などに応用されることがあります。
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特徴 |
- リチウムを有効成分とする躁病治療薬です。躁病や躁うつ病の治療に標準的に用いられています。眠気やけん怠感を起こすことが少なく、自然な感じで躁症状を取り去ります。過量服用によるリチウム中毒に注意が必要です。
- 躁状態に用いるのが基本ですが、例外的に難治なうつ病に応用されることがあります。「リチウムによる効果増強療法」と呼ばれ、他の抗うつ薬と併用したりします。
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注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。病気によっては症状を悪化させるおそれがあります。
- 妊娠中や、その可能性のある女性、また妊娠を希望している場合は、事前に医師に伝えておいてください。
- 市販薬をふくめ別に薬を飲んでいる場合は、医師に伝えてください。
- この薬の注意点や副作用について、ご本人、できたらご家族も含め よく説明を受けてください。 とくにリチウム中毒の副作用についてよく聞いておきましょう。

- 【注意する人】

- 心臓病、腎臓病、てんかんのある人は、この薬を服用できないことがあります。また、妊娠中の女性の服用は禁止されています。
- 適さないケース..重い心臓病、腎臓病、てんかん、脱水状態(発熱、発汗、下痢)、食塩制限中、妊娠中。
- 注意が必要なケース..心臓病、肝臓病、甲状腺機能亢進または低下症、高齢の人、高温の場所で働く人など。
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- 一部の利尿薬や降圧薬、鎮痛薬、解熱薬、安定剤などと併用すると、中毒症状や副作用がでやすくなります。使用中の薬は必ず医師に報告してください。また別の病院で診察を受けるときも、この薬を飲んでいることを伝えてください。
- 抗うつ薬との併用により、セロトニン症候群という神経症状が増強されるおそれがあります。いっしょに飲む場合は、体調の変化に注意してください。
- 糖尿病治療薬(SGLT2阻害薬)のエンパグリフロジン(ジャディアンス)、ダパグリフロジン(フォシーガ)やカナグリフロジン(カナグル)は、この薬の血中濃度を低下させるおそれがあります。
- お茶に含まれるカフェインは、この薬の効果を弱めるかもしれません。日本茶、コーヒー、紅茶、コーラはほどほどにしましょう。
 【使用にあたり】
- 決められた用量を必ず守ってください。この薬は、量が少ないと効きませんし、逆に多すぎると中毒を起こします。そのため、血液中の濃度を測定して、その人に合った量を決めなければなりません。ふつう、少量より開始し、血中濃度を測定しながら急速に増量します。症状がよくなったら、徐々に減量し維持量を続けるようにします。
- よく効いてくるのに、1〜2週間かかることがあります。自分だけの判断でやめないで、医師の指示どおり続けるようにしてください。
- 手のふるえ、吐き気、下痢などリチウム中毒が疑われる症状みられたら、医師と連絡をとり早めに診察を受けるようにしてください。

- 【検査】

- 過量にならないように、薬の血液中濃度を測定する必要があります。飲みはじめや用量を増量したときは週に1回、その後は2〜3ヵ月に1回くらいの頻度でおこないます。
 【妊娠授乳】
- おなかの赤ちゃんの心臓によくありません。妊娠中は飲まないでください。
- 授乳は避けてください。相当の薬が母乳に移行するためです。
 【食生活】
- 脱水はリチウム中毒の引き金になります。嘔吐や下痢が続く場合、大量の発汗時など要注意です。激しい運動、高温での重労働、入浴、発熱時、さらには無理な減塩や減量(ダイエット)なども危険要因です。適度な水分摂取を心がけ、規則正しい食生活を守ることが大切です。
- 眠気やめまいを起こしたり、注意力が低下することがあります。車の運転をふくめ危険な作業は避けてください。
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効能 |

- 【適用】

- 躁病、および躁うつ病の躁状態

- 【応用】

- 治療抵抗性のうつ病、重いうつ症状をともなう月経前不快気分障害など
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用法 |

- 【用法】

- 炭酸リチウムとして、成人では通常1日400〜600mgより開始し、1日2〜3回に分割経口服用する。以後3日ないし1週間毎に、1日通常1200mgまでの治療量に漸増する。改善がみられたならば症状を観察しながら、維持量1日通常200〜800mgの1〜3回分割経口服用に漸減する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

- 【注意】

- 過量投与による中毒を起こすことがあるので、投与初期又は用量を増量したときには維持量が決まるまでは1週間に1回をめどに、維持量の投与中には2〜3ヵ月に1回をめどに、血清リチウム濃度の測定結果に基づきトラフ値を評価しながら使用すること。なお、血清リチウム濃度を上昇させる要因(食事及び水分摂取量不足、脱水を起こしやすい状態、非ステロイド性消炎鎮痛剤等の血中濃度上昇を起こす可能性がある薬剤の併用等)や中毒の初期症状が認められる場合には、血清リチウム濃度を測定すること。
- 血清リチウム濃度が1.5mEq/Lを越えたときは臨床症状の観察を十分に行い、必要に応じて減量又は休薬等の処置を行うこと。
- 血清リチウム濃度が2.0mEq/Lを越えたときは過量投与による中毒を起こすことがあるので、減量又は休薬すること。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
気をつけなければならないのは「リチウム中毒」です。初期症状として、手のふるえ、吐き気、めまい、言葉のもつれ、下痢などが現れます。このような症状が現れたら、すぐに医師に連絡してください。ご家族の方も注意しましょう。
中毒でなくても、手が細かく震えることがあります。血中濃度が適正範囲でしたら心配ないと思いますが、気になるときは医師とよく相談してみてください。対症療法的に震え止めの薬(β遮断薬)で対処できるかもしれません。
ほかにも、リチウム誘発性腎性尿崩症が知られています。とくに服用期間が長くなると発現率が高まります。のどが異常に渇く、水をガブ飲みする、尿量が著しく多いといった症状があらわれますので、そのような場合は受診するようにしてください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- リチウム中毒..手の大きなふるえ、吐き気、めまい、言葉のもつれ、下痢、発熱、発汗、うとうと状態、取り乱す、異常な動作
- 徐脈..脈が異常に少なくなる(50/分以下)
- 尿崩症..尿量の著しい増加、激しい口渇、多飲
- 腎臓の重い症状..尿が少ない・出ない、尿の濁り・泡立ち、血尿、むくみ、だるい、吐き気、側腹部痛、腰痛、発熱、発疹。
- 痴呆様症状(可逆性)、意識障害..ボーッとする、反応が乏しい、意識がうすれる
 【その他】
- 手の細かいふるえ
- 口の渇き、吐き気、食欲不振、下痢
- めまい、立ちくらみ、眠気、脱力・けん怠感
- 腎機能異常、甲状腺機能異常
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