概説 |
心の不調や不具合を調整するお薬です。神経の高ぶりや不安感をしずめ、気持ちをおだやかにします。心の病気の治療に用います。 |
作用 |
- 【働き-1】
- 気分を落ち着ける作用があるので、統合失調症にかぎらず、躁状態、夜間せん妄、強い不安感や緊張感、また混乱状態をしずめのに用いることがあります。
- 【働き-2】
- 心の病気の一つ「統合失調症」は、脳の情報伝達系に不調を生じる病気です。現実を正しく認識できなくなったり、思考や感情のコントロールが上手にできなくなります。幻聴や幻覚、妄想を生じることもあります。
このお薬は、そのような脳内の情報伝達系の混乱を改善します。おもに、ドーパミンという神経伝達物質をおさえる作用によります。とくに陽性症状(妄想、幻覚、幻聴、混乱、興奮)に強い効果が期待できます。
統合失調症はめずらしくなく、100人に1人くらいかかる一般的な病気です。特別視することはありません。この薬をはじめ、よい薬がいろいろとあります。薬物療法を中心に きちんと治療を続ければ、普通の社会生活が送れます。
- 【薬理】
- 脳のドーパミン2受容体を遮断することで、ドーパミン神経の過剰な活動により発現する陽性症状をおさえます。
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特徴 |
- ブチロフェノン系の定型抗精神病薬です。この系統は、妄想や幻覚をおさえる作用が強いとされます。
- ハロぺリドールは、古くから使われている標準的な安定剤(メジャートランキライザー)です。
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注意 |
【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 妊娠中の人は、医師にお伝えください。
- 他の薬と相互作用を起こしやすい性質があります。別に薬を飲んでいる場合は、必ず医師に伝えておきましょう。
- 副作用について、ご本人、できたらご家族も含め、よく説明を受けておきましょう。
【注意する人】
- 重い心臓病、パーキンソン病またはレビー小体型認知症のある人は使用できません。病状が悪化するおそれがあるためです。
- 心臓病、低血圧、肝臓病、腎臓病、てんかん、甲状腺機能亢進、低カリウム血症のある人は、副作用の発現に注意するなど慎重に用いる必要があります。
- 高齢の人や体の弱っている人は、副作用がでやすいので注意深く用います。とくに認知症にともなう精神症状に、安易に適応外使用するべきではありません。
- 寝たきり、または手術後などで長時間体を動かせない人、脱水状態の人、あるいは肥満のある人は血栓塞栓症の発現に念のため注意が必要です。
- 赤ちゃんの発育に悪い影響をおよぼすおそれがありますから、妊娠中の服用は避けます。
- 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- 他の安定剤など脳の神経をしずめる薬といっしょに飲むと、作用が強くなりすぎたり、副作用が強まるおそれがあります。逆に、パーキンソン病の薬では、お互いの作用が弱まります。降圧薬との併用では、めまいや立ちくらみが起こりやすくなります。また、ある種の吐き気止めとの併用により、内分泌異常や手のふるえなどの副作用がでやすくなります。服用中の薬は、必ず医師に報告しておきましょう。
- 飲み合わせの悪い薬..アドレナリン(ボスミン)(アナフィラキシー救急治療と歯科領域の麻酔は除く)。
- 飲み合わせに注意..他の安定剤、パーキンソン病の薬(レボドパ製剤など)、吐き気止めの薬(ドンペリドン、メトクロプラミド)、降圧薬、抗コリン作用のある薬(鎮痙薬、三環系抗うつ薬など)、イトラコナゾール(イトリゾール)、エリスロマイシン(エリスロシン)、クラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)、プロメタジン(ピレチア)、クロルプロマジン(コントミン)、リファンピシン(リファジン)、カルバマゼピン(テグレトール)。
- アルコールといっしょに飲むと、眠気やふらつき、立ちくらみなどの副作用がでやすくなります。飲酒はできるだけ控えてください。
【使用にあたり】
- 指示された用法用量どおりに正しくお飲みください。決められた期間、きちんと続けることが大切です。
- 少量より開始し、増量していくことがあります。
- 副作用(ふるえ、こわばり)を予防する薬と併用することがあります。
- 急に飲むのを中止すると反動で具合が悪くなることがあります。自分だけの判断で、急に中止したり、飲む量を変えてはいけません。
【食生活】
- 眠気がしたり、注意力や反射運動能力が低下することがあります。車の運転など危険な作業は避けましょう。
- 口が乾いて不快なときは、冷たい水で口をすすいだり、小さな氷を口に含むとよいでしょう。
- 薬の影響で体温が異常に上がることがあります。熱射病や熱中症を起こさないよう、高温の場所での作業、激しい運動、また夏の暑さに注意してください。
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効能 |
- 【効能】
- 統合失調症、そう病。
- 【応用】
- 夜間せん妄、不安感や緊張感が強いとき、また興奮状態をしずめるのに用いることがあります。がんこな不眠にも用います。
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用法 |
ハロペリドールとして、通常成人は1日0.75〜2.25mgからはじめ、徐々に増量する。維持量として1日3〜6mgを経口服用する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
比較的多い副作用は、手のふるえ、体のこわばり、つっぱりなどの錐体外路症状です。予防薬で対処することも可能ですので、ひどいときは早めに受診し医師に相談ください。そのほか、口の渇き、尿が出にくい、便秘、目のかすみ、立ちくらみ、動悸などもみられます。
長く飲んでいると、口周辺の異常運動や舌のふるえが続く「遅発性ジスキネジア」を起こすことも知られています。これは治りにくいことがあります。長期大量服用時、とくに女性や高齢の人は注意が必要です。
めったにありませんが、抗精神病薬には「悪性症候群」という注意を要する副作用があります。体が硬直して動かなくなり、高熱がでてきたら、すぐに医師に連絡してください。高齢の人、体の弱っている人、また薬の量を増やしたときに出現しやすいものです。ご家族や周囲の方も注意してください。
【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 悪性症候群(Syndrome malin)..動かず黙り込む、体の硬直、飲み込めない、急激な体温上昇、発汗、頻脈、ふるえ、精神変調、意識障害。
- 遅発性ジスキネジア..頻回なまばたき、口の周辺がピクピクけいれん、口をすぼめる、口をモグモグさせる、舌のふるえ。
- 重い不整脈..動悸、脈が飛ぶ、脈が1分間50以下、めまい、ふらつき、転倒、失神。
- 麻痺性イレウス..食欲不振、吐き気、吐く、激しい腹痛、ひどい便秘、お腹がふくれる。
- 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)..だるい、のどが渇く、頭痛、吐き気、けいれん、意識もうろう、気を失う。
- 重い血液成分の異常..発熱、喉の痛み、口内炎、だるい、皮下出血(血豆・青あざ)や鼻血・歯肉出血など出血傾向。
- 横紋筋融解症..手足のしびれ・こわばり、脱力、筋力低下、筋肉痛、歩行困難、赤褐色の尿。
- 目の障害..角膜・水晶体の混濁、網膜・角膜の色素沈着。
- 静脈血栓症、肺塞栓症..手足(特にふくらはぎ)の痛み・はれ・むくみ・しびれ、爪の色が紫、突然の息切れ・息苦しい、深呼吸で胸が痛い、急な視力低下、視野が欠ける、目が痛む。
- 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
【その他】
- 錐体外路症状..指や手足のふるえ、体のこわばり・つっぱり、ひきつけ、体が勝手に動く、じっとできない、そわそわ感、動作がにぶい、無表情、よだれが多い、目の異常運動(正面を向かない、上転)、舌のもつれ、うまく歩けない。
- 眠気、不眠、頭痛、めまい
- 吐き気、食欲不振、食欲亢進
- 口が渇く、便秘、尿が出にくい<、目のかすみ、鼻づまり
- 立ちくらみ、血圧低下、動悸、不整脈
- 高プロラクチン血症、生理不順、乳汁分泌、女性型乳房、性機能障害
- 発疹、体重増加
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