おくすり110番
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成分(一般名) クエチアピン フマル酸塩
製品例 セロクエル25mg錠~100mg錠、セロクエル細粒50%、ビプレッソ徐放錠50mg ・・その他(ジェネリック) & 薬価
区分 神経系用剤(含む別用途)/非定型抗精神病薬(MARTA)/抗精神病剤

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   概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用
概説 心の不具合を調整し、気持ちをおだやかにするお薬です。心の病気の治療に用います。
作用

【働き-1】

気持ちの高ぶりや不安感をしずめるほか、停滞した心身の活動を改善する作用があります。そのような作用から、統合失調症にかぎらず、強い不安感や緊張感、抑うつ、そう状態などいろいろな精神症状に応用することがあります。

【働き-2】

心の病気の一つ「統合失調症」は、脳の情報伝達系に不調を生じる病気です。現実を正しく認識できなくなったり、思考や感情のコントロールが上手にできなくなります。幻聴など幻覚、妄想を生じることも多いです。

このお薬は、そのような脳内の情報伝達系の混乱を改善します。おもな作用は、ドーパミンとセロトニンという2つの神経伝達物質をおさえることです。2つをおさえることで、統合失調症の陽性症状(幻覚、妄想、興奮)と陰性症状(無感情、意欲低下、自閉)の両方によい効果を発揮します。

統合失調症はめずらしくなく、100人に1人くらいかかる一般的な病気です。特別視することはありません。この薬をはじめ、よい薬がいろいろとあります。薬物療法を中心に きちんと治療を続ければ、普通の社会生活が送れます。

【働き-3】

双極性障害いわゆる躁うつ病は、‘躁’と‘うつ’の気分エピソードを繰り返す心の病気です。躁状態がひどくなると、妙にはしゃいだり、怒りっぽくなったり、さらには判断力が低下し行動がエスカレートしてきます。逆に、うつ状態に入ると、気分が落ち込み、悲観的になり、ときに命を否定するほどの強い思いにかられます。このお薬のもう一つの効能は、そのような双極性障害におけるうつ症状に対してです。うつ病相におけるうつ症状を改善し、不安をしずめ気分を落ち着けます。

【薬理】

脳内のドパミン2(D2)受容体を遮断することで、ドーパミン神経系の機能亢進により起こる陽性症状をおさえます。また、セロトニン2(5-HT2)受容体を遮断することで、ドーパミン神経系の働きがよくなり、陰性症状が改善します。このような作用メカニズムからから、セロトニン・ドーパミン拮抗薬(SDA:Serotonin-Dopamine Antagonist)とか5-HT2/D2拮抗薬などと呼ばれています。そのほかにも、アドレナリンやヒスタミンなどいろいろな受容体に作用することから、多受容体作動薬(MARTA:Multiacting Receptor Targeted Antipsychotic)に分類されることもあります。

【臨床試験-1】

統合失調症を対象に比較的少人数の試験が国内で複数おこなわれています。それらを合計したところ、統合失調症に対する中等度以上の改善率は42%(232/553人)でした。

【臨床試験-2】

双極性障害のうつ症状に対する効果をプラセボ(にせ薬)と比較する試験が行われています。参加したのは、双極性障害におけるうつ症状がある患者さん356人。このうち179人はこの薬の徐放錠(ビプレッソ)を、残りの177人はプラセボを服用します。ここで大事なのは、グループ分けはくじ引きでおこない、薬の中身を患者さんにも医師にも伝えないことです(プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験)。

効果の判定は、悲しみ、緊張感、睡眠減少、食欲低下、集中困難、けん怠感、気分低調、悲観的思考、命の否定感など10項目ごとに医師が点数化(0〜6点)し、その合計点(0〜60点)でおこないます。点数が低ければ軽症(7〜19点)、高いほど重症(34点以上)です。そして、服薬2カ月後の平均合計点数の低下幅を比較するのです。ちなみに、試験に参加した患者さんの服薬前の合計点の平均は31点くらいでした。

その結果、この薬を飲んでいた人達は平均12.6点低下(30.9点→18.2点)、プラセボの人達は10.1点低下(30.8点→20.6点)しました。大きな差はでませんでしたが、この薬のほうが2.5点ほど下げ幅が大きく、プラセボに対する優越性が認められたわけです。また、副作用として、傾眠、体重増加、口渇などがみられたものの、旧知の副作用と変わりなく、安全性についても大きな問題はありませんでした。
特徴
  • セロトニン・ドーパミン拮抗薬に近い非定型抗精神病薬(第2世代抗精神病薬)です。セロトニン受容体とドーパミン受容体を主体として、いろいろな神経伝達物質の受容体に働きかけます(SDA or MARTA)。とくにセロトニン5HT2受容体に対する親和性が高いようです。
  • 第一の適応症は「統合失調症」です。抗ドーパミン作用を主とする旧来の定型抗精神病薬に比べ、陰性症状に対する効果に優れ、また錐体外路系の副作用がでにくいです。情動安定化作用や再発予防効果が期待できるので、長期の維持療法に適します。一方、陽性症状に対する効果は低いので、急性増悪例には不向きです。
  • 「双極性障害におけるうつ症状の改善」を新効能として、2017年にビプレッソ徐放錠が承認されました。従来品の普通錠(セロクエル)が1日2〜3回服用なのに対し、ビプレッソ徐放錠は1日1回で済みます。
  • 錐体外路症状(ふるえ、こわばり)や、高プロラクチン血症(生理不順、乳汁分泌)の副作用が少ない反面、高血糖を招くことがあります。
注意
【診察で】
  • 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
  • 他の薬と相互作用を起こしやすい性質があります。別に薬を飲んでいる場合は、必ず医師に伝えておきましょう。
  • 副作用について、ご本人、できたらご家族も含め、よく説明を受けておきましょう。

【注意する人】
  • 糖尿病のある人は使用できません。糖尿病の家族歴、高血糖、肥満などで糖尿病発症リスクの高い人は、血糖値の測定を頻繁におこなうなど、慎重に用いる必要があります。
  • 肝臓の悪い人は、薬の代謝・排泄が遅れがちですので、服用量に留意します。低血圧、脳血管障害、心臓病、不整脈、てんかんなどがある人、高齢の人、自分のいのちを絶ちたいという思いが強い人も慎重に使用します。
  • 寝たきり、または手術後などで長時間体を動かせない人、脱水状態の人、あるいは肥満のある人は血栓塞栓症の発現に念のため注意が必要です。
  • 双極性障害における若い人への処方のさいは、治療上の利益と不利益を考慮することになっています。複数の抗うつ薬の臨床試験を分析したところ、24歳以下では かえって悪い衝動を引き起こし危険な行為に及ぶおそれがあるとの報告があるためです。服用中は病状の変化に十分注意する必要があります。
  • 認知症関連の精神症状に対する適応外使用例において、死亡率が1.6〜1.7倍高かったという研究報告があります。認知症における安易な使用は控えるべきでしょう。

【飲み合わせ・食べ合わせ】

他の安定剤など脳の神経をしずめる薬と併用すると、作用が強くなりすぎるかもしれません。また、マクロライド系抗生物質やアゾール系抗真菌などとの併用で、この薬の血中濃度が上昇することがあります。副作用の増強をまねくため、飲み合わせによっては 減量を考慮します。逆に、てんかんの薬や結核の薬のリファンピシンと併用すると、この薬の作用が弱まる可能性があります。

  • 飲み合わせの悪い薬..アドレナリン(ボスミン)(アナフィラキシー救急治療は除く)。
  • 飲み合わせに注意(作用増強)..他の安定剤、マクロライド系抗生物質(エリスロシン、クラリス等)、アゾール系抗真菌(イトリゾール、ブイフェンド等)、抗エイズウイルス薬のリトナビル(ノービア、カレトラ、ヴィキラックス)など。
  • 飲み合わせに注意(作用減弱)..抗てんかん薬(フェノバール、アレビアチン、テグレトール等)、リファンピシン(リファジン)
  • アルコールといっしょに飲むと、眠気やふらつき、立ちくらみなどの副作用がでやすくなります。飲酒はできるだけ控えてください。

【使用にあたり】
  • 指示された用法用量どおりに正しくお飲みください。少量より開始し、効果や副作用に注意しながら段階的に増量していくのが一般的です。すぐに効果がでなくても、決められた期間、きちんと続けることが大切です。
  • のどが異常に渇き、水をガブ飲みしてしまうときは、すぐに受診してください。血糖値が高くなっているかもしれません。
  • 脱力感、けん怠感、冷や汗、ふるえ、眠気、もうろうとするなどの症状に注意してください。血糖値が下がっているかもしれません。
  • 双極性障害の治療において、かえって気分が不安定になるときは、医師と連絡をとってください。できましたら、ご家族など付き添いの方も、行動の変化や不穏な行為に注意するなど、服用後の様子を注意深く見守りましょう。因果関係ははっきりしませんが、敵意や攻撃性、衝動性にもとづく事故や犯罪事例も報告されているようです。
  • 自分だけの判断でやめてはいけません。急に飲むのを中止すると反動で症状が悪化したり、体の具合が悪くなることがあります。中止する際は、医師の判断で徐々に減量しなければなりません。飲み忘れにも注意しましょう。

【検査】

必要に応じ血糖値の測定をおこないます。

【食生活】
  • とくに飲みはじめに起立性低血圧(立ちくらみ)を起こしやすいです。急に立ち上がらないで、ゆっくり動作するようにしましょう。
  • 眠気がしたり、注意力や反射運動能力が低下することがあります。車の運転など危険を伴う機械の操作、高所での危険な作業は避けましょう。
  • 口が乾いて不快なときは、冷たい水で口をすすいだり、小さな氷を口に含むとよいでしょう。
  • 体重が増えてきたら、食生活を見直してください。食べすぎに注意し、適度な運動を心がけましょう。
効能

【効能A:即放性製剤(セロクエル、その他)】

統合失調症

【効能B:徐放性製剤(ビプレッソ)】

双極性障害におけるうつ症状の改善
用法

【効能A】

通常、成人はクエチアピンとして1回25mg、1日2又は3回より服用を開始し、患者の状態に応じて徐々に増量する。通常、1日服用量は150〜600mgとし、2又は3回に分けて経口服用する。なお、服用量は年齢・症状により適宜増減する。但し、1日量として750mgを超えないこと。

【効能B】

通常、成人はクエチアピンとして1回50mgより服用を開始し、2日以上の間隔をあけて1回150mgへ増量する。その後、さらに2日以上の間隔をあけて、推奨用量である1回300mgに増量する。なお、いずれも1日1回就寝前とし、食後2時間以上あけて経口服用すること。

※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
副作用 比較的多いのは、眠気、めまい、立ちくらみ、口の渇き、便秘、高血糖、体重増加、神経過敏などです。とくに飲み始めの強い「立ちくらみ」には十分注意してください。もし、普通でない不安や焦燥、イライラ、気分の高ぶり、悪い衝動にかられるなど、精神的な変調が気になるときは、医師と連絡をとり指示をあおいでください。

従来の定型抗精神病薬に比べ、錐体外路系の副作用(下記)はかなり少ないのですが、やはり、手のふるえ、こわばり、じっとできないといったパーキンソン病のような症状がでる可能性があります。長期服用時は「遅発性ジスキネジア」にも注意が必要です。

そのほか、血糖値の変動による昏睡や意識障害の報告があります。高血糖のサインとしては、のどが異常に渇く、多飲、多尿、頻尿などがあげられます。逆に低血糖を起こすと、脱力感やけん怠感、冷や汗、ふるえ、眠気などが現れます。どちらの場合も、すぐに受診してください。もともと血糖値が高めの人や太りぎみの人は、定期的に血糖値の検査を受けましょう。

この薬に限らず、抗精神病薬を使用中に注意を要するのが「悪性症候群」です。発現頻度は多くありませんが、とくに高齢の人、体の弱っている人、薬の量を増やしたときなどに出現しやすいです。特徴的な症状として、体の硬直、高熱、発汗、意識障害などがあらわれます。ご家族や周囲の方も注意をはらい、そのような症状がみられたら、すぐ医師に連絡してください。


【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
  • 高血糖、糖尿病性昏睡..異常にのどが渇く、多飲、多尿、食欲亢進、多食、脱力感、もうろう、意識がうすれる。
  • 低血糖..力の抜けた感じ、ふるえ、さむけ、動悸、冷や汗、強い空腹感、頭痛、不安感、吐き気、目のちらつき、イライラ、眠気、ぼんやり。さらに重くなると、異常な言動、けいれん、昏睡(意識がなくなる)。
  • 悪性症候群(Syndrome malin)..動かず黙り込む、体の硬直、飲み込めない、急激な体温上昇、発汗、頻脈、ふるえ、精神変調、意識障害。
  • 肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
  • 横紋筋融解症..手足のしびれ・こわばり、脱力、筋力低下、筋肉痛、歩行困難、赤褐色の尿。
  • けいれん..めまい、頭痛、ふるえ、手足のしびれ感、筋肉のぴくつき、意識低下、全身けいれん。
  • 無顆粒球症、白血球減少..発熱、のどの痛み、口内炎、咳、痰、だるい。
  • 遅発性ジスキネジア..頻回なまばたき、口の周辺がピクピクけいれん、口をすぼめる、口をモグモグさせる、舌のふるえ。
  • 麻痺性イレウス..食欲不振、吐き気、吐く、激しい腹痛、ひどい便秘、お腹がふくれる。
  • 静脈血栓症、肺塞栓症..手足(特にふくらはぎ)の痛み・はれ・むくみ・しびれ、爪の色が紫、突然の息切れ・息苦しい、深呼吸で胸が痛い、急な視力低下、視野が欠ける、目が痛む。
  • 重い皮膚・粘膜障害..発疹、発赤、水ぶくれ、うみ、皮がむける、皮膚の熱感や痛み、かゆみ、唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血、発熱、全身けん怠感。

【その他】
  • 錐体外路症状..指や手足のふるえ、体のこわばり・つっぱり、ひきつけ、体が勝手に動く、じっとできない、そわそわ感、動作がにぶい、無表情、よだれが多い、目の異常運動(正面を向かない、上転)、舌のもつれ、うまく歩けない。
  • 眠気、傾眠、不眠、頭痛、めまい
  • 神経過敏、イライラ、不安感、幻覚、妄想の顕在化
  • 食欲亢進、吐き気
  • 口が渇く、便秘、尿が出にくい、目のかすみ、鼻づまり
  • 立ちくらみ、血圧変動、動悸、頻脈、不整脈
  • 体重増加、高プロラクチン血症、生理不順
   概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用
  









用法用量は医師・薬剤師の指示を必ずお守りください。
すべての副作用を掲載しているわけではありません。いつもと違う「おかしいな」と感じたら早めに受診してください。
症状に合った薬が適正に処方され、また正しく使用するかぎり、重い副作用はめったに起こりません。まずは安心して、決められたとおりにご使用ください。
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