概説 |
注意力を高め、落ち着きをとりもどすお薬です。注意欠陥・多動性障害(AD・HD)の治療に用います。 |
作用 |
- 【働き】
- 注意欠陥・多動性障害、略称AD・HDは、学齢期の子供に多くみられる精神的な発達障害の一つです。集中力や注意力が欠如し、また多動性・衝動性が顕著にあらわれ、学校での集団生活や学業に支障となります。年とともによくなりますが、半数くらいは成人期にもなお持続します。
このお薬は、そのような注意欠陥・多動性障害に有効です。詳しい作用機序は分かっていませんが、脳内神経伝達物質の働きを調節し、神経伝達をよくすることで関連症状を改善します。6歳以上の小児期AD・HDにくわえ成人期AD・HDに対しても使用可能です。
- 【薬理】
- 注意欠陥・多動性障害では、脳の前頭前皮質のノルアドレナリン作動性神経伝達に何らかの調節異常があるのではと考えられています。この薬は、ノルアドレナリンの神経受容体であるα2A受容体を選択的に刺激することにより神経伝達を増強させることが非臨床研究で認められています。このような作用機序から「選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬」と呼ばれています。
- 【臨床試験】
- 注意欠陥・多動性障害をもつ子供を対象とした臨床試験が行われています。65人はこの薬を少な目(0.08mg/kg)に、別の66人は多め目(0.12mg/kg)に、さらに別の67人はプラセボ(にせ薬)を服用し、各グループの効果を比較する試験です。もちろん、実薬かプラセボか患者さんにも医師にも伝えません(プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験)。効果の判定は、学校生活での不注意や多動・衝動性にかかわる行動を18項目ごとに4段階(0点〜3点)で評価し、その合計点の変化量でおこないます。
その結果、服薬50日後において、この薬を少な目に飲んだグループは平均14.6点低下(37.0点→22.4点)、多めのグループは16.9点低下(36.0点→18.3点)、プラセボでは6.7点低下(36.6点→30.0点)しました。この薬の下げ幅はプラセボを明らかに上回り、薬としての有効性が証明されたわけです。安全性については、プラセボに比べ血圧低下と脈拍数減少が用量依存的に多くみられました。なお、その後 18歳以上の大人を対象とした試験も実施されています。プラセボの7.3点低下に対し、この薬では11.6点低下したことから成人期注意欠陥・多動性障害にも有効なことが分かりました。
|
特徴 |
- メチルフェニデート(コンサータ)、アトモキセチン(ストラテラ)に続く、国内3番目の「注意欠陥・多動性障害治療薬」です。グアンファシンを有効成分とする徐放性製剤で、薬理作用から「選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬」に分類されます。なお、同一成分の即放性製剤は、かつて高血圧症治療薬(中枢性交感神経抑制薬)‘エスタリック錠’として販売されていました。
- メチルフェニデートが中枢神経刺激薬であるのに対し、この薬は作用が異なる非中枢神経刺激薬になります。また、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬のアトモキセチンとも作用機序が違います。新作用をもつこの薬の登場により、治療の選択肢が広がりそうです。
- 効力は速効性のメチルフェニデートに及びませんが、アトモキセチンと同程度の有効性が示されています。効果発現はアトモキセチンよりやや早く、服薬開始後1〜2週で効いてきます。
- もともと高血圧の薬なので、低血圧や徐脈の発現に注意が必要です。メチルフェニデートのような依存の心配はありません。
|
注意 |
【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えてください。
- 妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は申し出てください。
- 使用中の薬を医師に教えてください。
- 保護者をふくめ注意事項や副作用について十分説明を受けてください。薬の性質をよく理解し、納得のうえで治療にあたりましょう。
- 【注意する人】
- 心臓病のある人は、病状の悪化に注意するなど慎重に用います。とくに重度の房室ブロックがあれば処方を控えます。また、血圧が低めの人は、いっそうの低下に注意が必要です。肝臓や腎臓が悪いと、薬の血中濃度が上昇しやすいため、用法・用量に留意します。
- 適さないケース..房室ブロック。
- 注意が必要なケース..心臓病(徐脈、不整脈、狭心症、心筋梗塞等)、低血圧、脳梗塞、重い肝臓病や腎臓病のある人、抑うつ状態の人など。
- 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- いろいろな薬と相互作用を起こすおそれがあります。飲み合わせによっては、この薬の作用が増強し副作用がでやすくります。逆に作用が減弱する可能性もあります。使用中の薬は必ず医師に報告しておきましょう。また、別の病院で診察を受けるときも、この薬を飲んでいることを伝えてください。
- この薬の血中濃度が上昇し、副作用がでやすくなる飲み合わせがあります。この理由で注意が必要なのが、抗生物質のクラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)とエリスロマイシン(エリスロシン)、アゾール系抗真菌薬のイトラコナゾール(イトリゾール)、ボリコナゾール(ブイフェンド)、抗エイズウイルス薬のリトナビル(ノービア、カレトラ、ヴィキラックス)などCYP3A4/5阻害薬と呼ばれる部類です。併用する場合、この薬(グアンファシン)の減量を考慮します。
- 逆に、この薬の血中濃度が低下し作用が減弱するおそれもあります。結核・抗酸菌症治療薬のリファンピシン(リファジン)、抗けいれん薬のフェノバルビタール(フェノバール)やフェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、カルバマゼピン(テグレトール)、ステロイド薬のデキサメタゾン(デカドロン)などに注意が必要です。薬ではありませんが、健康食品やハーブティーとして販売されているセイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)にも同様の性質があります。
- 降圧薬、利尿薬、抗不整脈薬、強心薬のジギタリス製剤との併用により、相互に降圧・徐脈作用が増強し失神を起こすおそれがあります。また、脳の神経をしずめる薬剤、たとえば抗不安薬、抗精神病薬、抗うつ薬、睡眠薬あるいはアルコール類などは、鎮静や傾眠の副作用を強めるかもしれません。
【使用にあたり】
- 少量より開始し、副作用に注意しながら、1週間以上間隔をあけ徐々に増量します。よく効いてくるまでに数週間かかりますから、途中でやめず指示通りに続けてください。
- 特殊な徐放性製剤です。割ったり、砕いたりしてはいけません。コップ1杯くらいの水で、そのまま噛まずに飲んでください。
- ご両親など付き添いの方は、服用後の様子を注意深く見守りましょう。眠りがち、ふらつき、脈拍減少、意識低下といった症状に気をつけてください。また、かえって怒りっぽくなる、悲観的になる、不穏な行動をとるなど、いつもと違う精神症状が気になるときは、医師と相談してください。
- 自分だけの判断でやめてはいけません。急に中止すると血圧上昇や頻脈があらわれ体の具合が悪くなります。中止の際は、医師の判断で徐々に減量する必要があります。
- 飲み忘れにも注意しましょう。飲み忘れた場合は担当の医師または薬剤師に相談してください。決して2回分を一度に飲んではいけません。
- 【検査】
- 心拍数と血圧の測定が大事です。事前に心臓や血圧に悪影響がないか調べ、飲み始めてからも定期的に測定します。必要に応じ心電図検査を実施します。
- 【食生活】
- 眠気やめまいを起こしやすいです。車の運転をふくめ危険をともなう機械の操作や高所での作業は避けてください。
|
効能 |
注意欠陥/多動性障害(AD/HD)
- [注意1]6歳未満の患者における有効性及び安全性は確立していない
- [注意2]AD/HDの診断は、米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM*)等の標準的で確立した診断基準に基づき慎重に実施し、基準を満たす場合にのみ投与すること。
|
用法 |
- 【18歳未満の患者】
- 通常、18歳未満の患者には、体重50kg未満の場合はグアンファシンとして1日1mg、体重50kg以上の場合はグアンファシンとして1日2mgより服用を開始し、1週間以上の間隔をあけて1mgずつ、下表の維持用量まで増量する。
なお、症状により適宜増減するが、下表の最高用量を超えないこととし、いずれも1日1回経口服用すること。
※用法及び用量の表 参照(体重別1日用量)
- 17kg以上25kg未満:開始 1mg、維持 1mg、最高 2mg
- 25kg以上34kg未満:開始 1mg、維持 2mg、最高 3mg
- 34kg以上38kg未満:開始 1mg、維持 2mg、最高 4mg
- 38kg以上42kg未満:開始 1mg、維持 3mg、最高 4mg
- 42kg以上50kg未満:開始 1mg、維持 3mg、最高 5mg
- 50kg以上63kg未満:開始 2mg、維持 4mg、最高 6mg
- 63kg以上75kg未満:開始 2mg、維持 5mg、最高 6mg
- 75kg以上 :開始 2mg、維持 6mg、最高 6mg
- 【18歳以上の患者】
- 通常、18歳以上の患者には、グアンファシンとして1日2mgより服用を開始し、1週間以上の間隔をあけて1mgずつ、1日4〜6mgの維持用量まで増量する。
【注意】
- [注意1]CYP3A4/5阻害剤を服用中の患者、重度の肝機能障害のある患者又は重度の腎機能障害のある患者に服用する場合には、1日1mgより服用を開始すること。[本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。
- [注意2]本剤の服用を中止する場合は、原則として3日間以上の間隔をあけて1mgずつ、血圧及び脈拍数を測定するなど患者の状態を十分に観察しながら徐々に減量すること。[本剤の急な中止により、血圧上昇及び頻脈があらわれることがある。]
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
|
副作用 |
傾眠が50%以上の割合であらわれます。ひどい眠気が続いたり、昼間からうとうとして仕事や学業に支障がでるようでしたら医師とよく相談してください。
頻度はそれほどないものの、もっとも重要なのが低血圧と徐脈です。多くは軽度ですが、なかには失神するほどの重症例も報告されています。ふらつき、立ちくらみ、息切れ、意識低下といった症状に要必要です。
【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 低血圧、徐脈..めまい、ふらつき、立ちくらみ、息切れ、冷感、動悸、脈が飛ぶ、脈が1分間50以下、気が遠くなる、意識低下、気を失う。
- 房室ブロック..動悸、脈が飛ぶ、めまい・ふらつき、息切れ、息苦しい、胸の不快感・痛み、気を失う、転倒。
【その他】
- 傾眠、眠気、頭痛、倦怠感、気分がしずむ
- めまい、立ちくらみ
|