概説 |
神経痛をやわらげるお薬です。神経障害性疼痛に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 神経障害性疼痛は神経の損傷や機能異常による痛みで、障害部位の違いから中枢性と末梢性に大別されます。中枢性は脳または脊髄の神経に起因するもので、脳卒中後疼痛、脊髄損傷後疼痛、椎間板ヘルニアや頚椎症、さらには大部分の三叉神経痛がこれにあたります。一方、末梢性とされるのが糖尿病性末梢神経障害性疼痛や帯状疱疹後神経痛です。中枢性と末梢性の両要素を含むものとしては脊髄神経根症、幻肢痛、がん痛、化学療法誘発性疼痛などがあげられます。有病率が多い慢性腰痛やひざ関節痛の要因はさまざまで、複合要因の一つとして神経障害が関与していることがあります。
このお薬は、そのような神経に起因する神経障害性疼痛に有効な鎮痛薬です。作用メカニズムは、痛みを発する異常に興奮した神経系において、各種の興奮性神経伝達物質の放出を抑制することによります。過敏になっている神経をしずめることから、一般的な鎮痛薬(NSAIDs)が効きにくい神経痛に効果的なのです。痛みの感じ方はまちまちですが、ジンジンとしびれる感じの痛み、ヒリヒリ焼け付くような痛み、ピリッと電気が走るような痛み、ズキズキする痛み、締め付けられるような痛みに向きます。中枢性と末梢性をふくめ前述の神経障害性疼痛に広く適応するほか、線維筋痛症に対する効能も取得しています。慢性腰痛やひざ関節痛に対しては、神経障害の関与を慎重に見極めたうえで使用します。

- 【薬理】

- 過剰に興奮した興奮性神経系において、電位依存性カルシウムチャネルの機能に対し補助的な役割をになうα2δ(アルファ2デルタ)サブユニットと強く結合します。すると、神経シナプスにおけるカルシウム流入が低下し、グルタミン酸等の興奮性神経伝達物質の放出が抑制されます。その結果として、神経障害性疼痛や線維筋痛症による痛みがやわらぐのです。

- 【臨床試験】

- 実際の鎮痛効果を確かめる臨床試験もおこなわれています。痛みのレベルを、痛みなしの0点から、これ以上ない痛みの10点のあいだで自己採点する方法です。この日記を集めて集計したところ、この薬を飲んでいた89人の平均は約4点、プラセボ(にせ薬)を飲んでいた97人はおおよそ5点でした。この薬により、痛みのレベルが平均して1点ほど下がることが証明されたわけです。同様な臨床試験が各種病態でおこなわれており、それぞれで相応の有効性が示されています。
|
特徴 |
- 新しい作用機序をもつ疼痛治療薬です。専門的にカルシウムチャネルα2δ(アルファ2デルタ)リガンドと呼ばれる部類です。その特異な作用から、従来の鎮痛薬が不得意とする神経障害性疼痛によい効果を示します。なお、化学構造的にはGABA(γ-アミノ酪酸)誘導体になり、同系の薬剤としてガバペンチン(ガバペン、レグナイト)が抗てんかん薬もしくはレストレスレッグス症候群治療薬として承認されています。
- 海外では、神経障害性疼痛に対する第一選択薬として位置づけられています。また、てんかんの治療にも応用されているようです。日本での適応は「帯状疱疹後神経痛」を皮切りに、帯状疱疹後神経痛をふくむ「末梢性神経障害性疼痛」に改訂され、新効能として「線維筋痛症に伴う疼痛」が追加されました。さらにその後、中枢性と末梢性をふくめた「神経障害性疼痛」に適応症が拡大されています。今後、神経障害性疼痛や線維筋痛症の治療に広く用いられることになるでしょう。
|
注意 |
 【診察で】
- 腎臓病や心臓病など持病のある人は、医師に報告してください。
- 妊娠中の人、授乳をしている人は医師に申し出てください。
- 使用中の薬を医師に教えてください。

- 【注意する人】

- 腎臓の悪い人は薬の排泄が遅れがちです。そのため、少量で開始するなど服用量や服用間隔に配慮が必要です。心不全など心臓病をもっている人は、病状の悪化に注意してください。
- 注意が必要なケース..腎臓病、重い心不全、血管浮腫既往、精神障害または薬物依存傾向のある人、高齢の人など。
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- 安定薬など精神・神経系を抑制する薬と飲み合わせると眠気などの副作用が出やすくなります。同様に、モルヒネの部類の鎮痛薬との併用にも注意が必要です。
- 高血圧治療薬のACE阻害薬と併用した場合、血管浮腫の発現頻度が高まるおそれがあります。
- 糖尿病治療薬のピオグリタゾン(アクトス)との併用により、浮腫(むくみ)の副作用が出やすくなるかもしれません。とくに心臓病がある人は要注意です。
- 飲酒は控えてください。アルコールと飲み合わせると眠気やふらつきが起こりやすくなります。
 【使用にあたり】
- 医師の指示どおりに飲んでください。通常、少量から開始し、効果や副作用をチェックしながら1週間以上かけて増量します。したがって、十分な効果がでるまで少し時間を要することがあります。
- 自分だけの判断で中止してはいけません。急に飲むのをやめると、その反動で眠れなくなったり、吐き気や頭痛、下痢、不安、発汗などを起こすおそれがあります。中止する場合は、医師の判断で 少なくとも1週間以上かけ徐々に減量します。

- 【検査】

- 体重計測を定期的に行います。必要に応じ肝機能検査を実施します。
 【妊娠・授乳】
- 妊娠中における安全性はよく分かっていません。医師の判断で必要性が高い場合に限り用いられます。
- 授乳は避けてください。相当量の薬が母乳中への移行することが確かめられています。
 【食生活】
- 体重の変化に気をつけてください。とくに、大量服用時、あるいは長期服用にともない体重が増えてくることがあります。体重増加が気になるときは、食べ過ぎに注意し、適度な運動を心がけましょう。
- 眠気を催したり、めまいやふらつきを起こすことがあります。とくに高齢の人は、それらの症状から転倒や転落につながるおそれがあります。骨折の事例もありますので、十分に注意してください。
- さらに意識消失から自動車事故に至った例も報告されているようです。車の運転など危険を伴う機械の操作、あるいは高所での作業は避けましょう。
|
効能 |

- 【効能A】

- 神経障害性疼痛

- 【効能B】

- 線維筋痛症に伴う疼痛
|
用法 |

- 【効能A】

- 通常、成人は初期用量としてプレガバリン1日150mgを1日2回に分けて経口服用し、その後1週間以上かけて1日用量として300mgまで漸増する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日最高用量は600mgを超えないこととし、いずれも1日2回に分けて経口服用する。

- 【効能B】

- 通常、成人には初期用量としてプレガバリン1日150mgを1日2回に分けて経口投与し、その後1週間以上かけて1日用量として300mgまで漸増した後、300〜450mgで維持する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日最高用量は450mgを超えないこととし、いずれも1日2回に分けて経口投与する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
|
副作用 |
いちばん多いのは眠気です。めまいやふらつきもかなりの頻度でみられます。高齢の人では、それらの症状から転倒や転落事故につながるおそれがあります。実際に骨折に至った例も報告されているようです。症状が強い場合は、早めに受診し医師とよく話し合ってください。
眼障害も特異な副作用の1つです。物がかすんで見える、二重に見える、視力が落ちるといった症状です。長期大量服用時に発現しやすいようですので、気になるときは 医師と相談してください。
人によっては浮腫(むくみ)を生じたり、体重が増えてくることがあります。とくに、もともと心臓の悪い人では、うっ血性心不全のサインとして発現する可能性があります。ほかにも、低血糖や肝機能障害、劇症肝炎などが報告されています。これらの頻度はきわめでまれですが、なにか普段と違う「おかしいな」と感じたら早めに受診してください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 心不全..疲れやすい、息苦しい、息切れ、むくみ、急な体重増加、痰、ゼィゼィ、咳、頻脈。
- 意識消失..意識がなくなる
- 横紋筋融解症..手足のしびれ・こわばり、脱力、筋力低下、筋肉痛、歩行困難、赤褐色の尿。
- 腎不全..尿が少ない・出ない、むくみ、尿の濁り、血尿、だるい、吐き気、頭痛、のどが渇く、けいれん、血圧上昇。
- 血管浮腫..顔や唇、舌、喉がひどく腫れる、飲み込みにくい、息がしにくい、手足が腫れる。
- 低血糖..脱力感、ふるえ、さむけ、動悸、冷や汗、強い空腹感、頭痛、不安感、吐き気、目のちらつき、イライラ、眠気、ぼんやり、異常な言動、けいれん、昏睡(意識がなくなる)。
- 間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。
- ショック、アナフィラキシー様症状..気持ち悪い、胸苦しい、冷汗、顔面蒼白、手足の冷え・しびれ、じんま疹、全身発赤、顔や喉の腫れ、咳、ゼーゼー息苦しい、めまい、血圧低下、目の前が暗くなり意識が薄れる。
- 重い皮膚・粘膜障害..発疹、発赤、水ぶくれ、うみ、皮がむける、皮膚の熱感や痛み、かゆみ、唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血、発熱、全身けん怠感。
- 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
 【その他】
- 眠気、うとうと、不眠、頭痛、ふるえ、混乱
- めまい、ふらつき、運動失調、転倒・転落
- 浮腫(むくみ)、体重増加
- かすみ目、二重に見える、視力低下、視覚異常
- 便秘、下痢、吐き気、嘔吐、腹痛
- 発疹、かゆみ
|