概説 |
眼圧を下げる目薬です。緑内障や高眼圧症の治療に用います。 |
作用 |
- 【働き】
- 眼球内では房水と呼ばれる水分が循環しています。房水の役目は、内側から圧をかけ眼球を保つこと、それに目に栄養分を与えることです。ところが、房水が充満しすぎると、眼圧が上がり視神経を圧迫してきます(高眼圧症)。そのままでいると視神経が弱り、視野が狭くなったり視力が落ちたりします。このような状態が高眼圧をともなう典型的な緑内障です。
この目薬は、房水の流出を促進することで 眼圧を下げます。このため、緑内障や高眼圧症の治療に用いられます。有効性が高いことから、第一選択されることも多いです。緑内障の治療目標は、健常眼圧を日々保つことにより、視力や視野を長期にわたり維持することです。根治療法ではないので治療期間は長くなりますが、眼圧を適正にコントロールするため根気よく続けなければなりません。
- 【薬理】
- 房水流出にかかわる生理活性物質プロスタマイドF2αの受容体(FP/FPスプライスバリアント複合受容体)を刺激することにより、ぶどう膜強膜流出経路からの房水流出を促進します。
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特徴 |
- 生理活性物質プロスタマイドF2α類似の化学構造をもつプロスタマイド誘導体製剤になります。広くはPG関連薬(プロスタグランジン関連薬)に分類されますが、既存薬とは異なるプロスタマイド受容体に直接作用するとされます。
- 作用や副作用、効能・効果は既存のPG関連薬だいたい同じです。1日1回の点眼で、強力かつ安定した眼圧下降作用を示します。ベースラインからの平均眼圧下降率は約30%でした。
- 全身性の副作用はなく、比較的安全に使用できます。ただし、PG関連薬にみられる特異な副作用として、 まつ毛が異常に伸びたり、虹彩に色素沈着を生じるなど美容上の問題があります。
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注意 |
【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 副作用や注意事項についてよく説明を受けてください。虹彩色調変化のリスクについてもよく聞いておきましょう。
【注意する人】
- 喘息のある人、虹彩炎やぶどう膜炎など眼内炎を起こしている人、無水晶体眼、眼内レンズを挿入している人、ヘルペスウイルスが潜在している可能性のある人、あるいは妊娠中の女性は慎重に用いる必要があります。
- 閉塞隅角緑内障に対しては、使用実績が少ないことから注意深く使用することが望ましいです。
【使用にあたり】
- ふつう1日1回、1滴点眼します。時間は朝がよいでしょう。頻回に点眼すると、かえって作用が弱くなってしまいますので注意してください。
- 根治療法ではないので、一般的に治療期間は長くなります。適正な眼圧を維持するため、決められた期間 根気よく続けてください。
- 正しく点眼することにより、副作用の予防や軽減がはかれます。以下に一般的な点眼方法を示しますが、医師の指示を優先し決められた手順で点眼してください。
- できるだけ仰向けの状態で点眼するようにします。清潔な手で下まぶたを下にひき、容器の先がまぶたの縁やまつげに触れないように点眼してください。
- 1滴点眼したあと、ゆっくりと目を閉じ、まばたきをしないで1〜5分間そのまま閉じていてください。このとき、目がしらを指先で押さえておくと鼻や口に薬液が回らず苦い思いをしなくて済みますし、全身性の副作用の予防になります。
- 点眼液が目の回りに付いたり、目からあふれ出たときは、ガーゼやティッシュで拭き取るか、目を閉じて洗顔するようにしてください。皮膚変色やかぶれ、多毛化の予防や軽減のために大事なことです。
- 他の点眼薬と併用しているときは、点眼間隔を5分以上あけてください。
- コンタクトレンズをしている場合は、レンズをはずしてから点眼し、15分以上経過してからつけてください。防腐剤のベンザルコニウムによるレンズの変色を防ぐためです。
- 点眼し忘れた場合は、 すぐに1回分を点眼してください。ただし、翌日に気づいた場合は、前日分は抜かし、通常どおり1日1回1滴点眼してください。1日に2回点眼したり、1回に2滴点眼してはいけません。
- 涼しい所に保管しましょう。なお、決められた使用期限を過ぎたら破棄してください。
- 【食生活】
- 点眼後、一時的に物がかすんで見えることがあります。症状が回復するまで危険な機械類の操作や車の運転は避けてください。
- 【備考】
- 緑内障はその成因から大きく2つのタイプに分かれます。「閉塞隅角緑内障」と「開放隅角緑内障」です。閉塞隅角緑内障は、房水の排水路である隅角が虹彩でふさがれてしまうタイプです。その多くは慢性型ですが、ときに眼圧が急上昇し激しい眼痛や頭痛、充血や視覚異常などをともなう緑内障発作を起こします。一方、開放隅角緑内障は、隅角とは関係なく、房水の排水口が目詰まりするタイプです。慢性に推移し、自覚症状が乏しく、視野異常にも気づきにくいので、自覚したときには相当に進行していることが多いです。
治療方法も違います。閉塞隅角緑内障では、房水を排出させるための手術を優先し、薬物療法は補助的におこなわれます。一方、開放隅角緑内障では、点眼薬による薬物治療が中心になります。その第一選択薬として処方されるのがプロスタグランジン関連薬(この薬)またはβ遮断薬です。単薬で効果不十分な場合は、これらによる併用療法もおこなわれます。
なお、最近の調査で、緑内障の約6割が「正常眼圧緑内障」であることが分かりました。眼圧は正常範囲なのに緑内障になってしまうのです。視神経が耐えられる眼圧には個人差があり人それぞれで大きく異なります。視神経がもともと弱いなど、必ずしも高い眼圧だけが緑内障の要因ともいえないのです。治療は、開放隅角緑内障に準じますが、その人にとっての適正な眼圧‘健常眼圧’になるように、より低めにコントロールするようにします。
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効能 |
緑内障、高眼圧症 |
用法 |
1回1滴、1日1回点眼する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
一番多いのは目の充血です。まれに角膜障害を起こすことがありますので、痛みやかゆみ、異物感などの症状が持続するときは、すぐに受診してください。点眼時の一時的な刺激症状(しみる、かすむ)は心配ないと思います。
長く続けていると、まぶたなど目の周囲の皮膚の色がくすんだり、まつ毛が長くなってくるかもしれません。また、虹彩(茶目の部分)にメラニンが増加し、虹彩の色調が変わってしまうことがあります。日本人に多い暗褐色の単色虹彩ではあまり目立たないとされますが、気になるときは医師とよく相談してください。
【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 虹彩色素沈着..長期使用で虹彩(茶目の部分)の色調変化
【その他】
- 一時的な刺激症状(しみる、灼熱感、痛み)、かゆみ
- 充血、まぶたの腫れ、一時的なかすみ目
- 目の周囲の皮膚変色(黒ずむ)、まつ毛の異常(長く、太く、濃くなる)
- 角膜障害(しみる、かゆみ、目の痛み、異物感、かすみ目などの症状が続く)
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