おくすり110番
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成分(一般名) トルバプタン
製品例 サムスカOD錠7.5mg~15mg~30mg、サムスカ顆粒1% ・・その他(ジェネリック) & 薬価
区分 利尿剤/その他/非ペプチド性バソプレシンV2-受容体拮抗剤

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   概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用
概説 水分を排出するお薬です。心不全や肝硬変による浮腫(むくみ)の治療に用います。また、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群‘SIADH’や多発性のう胞腎‘ADPKD’にも適用します。
作用

【働き-1】

心臓の機能が低下したり、肝臓病がすすみ肝硬変になると、体の水分代謝が悪くなり浮腫(体液貯留)を生じます。部位はさまざまですが、心不全による足首のむくみや肺うっ血、肝硬変ではお腹に水がたまる腹水が特徴的です。そのぶん体重が増加し、疲れがひどくなり、呼吸も苦しくなります。悪化を防ぐため、きびしい塩分・水分制限も必要です。

このお薬は、そのようなうっ血性心不全や肝硬変にともなう浮腫の治療に用います。必要な塩分は体に残し、余分な水分だけを尿にしてとり去る作用があります。その結果、むくみが取れて体重が減り、体の調子ももどってきます。従来の利尿薬とは効きかたが違うので、単独ではなく一般的な利尿薬で効果不十分な場合に追加し併用するようにします。

【働き-2】

抗利尿ホルモン不適合分泌症候群‘SIADH’は、抗利尿ホルモン(バソプレシン)の不適切な分泌により腎臓での水再吸収が増大し、稀釈性の低ナトリウム血症をきたす病気です。発症原因として肺炎や肺結核など肺疾患、脳炎や髄膜炎など中枢神経系疾患、肺がんや膵がんなど異所性バソプレシン産生腫瘍などがあげられます。

このお薬は、抗利尿ホルモンの作用を阻害し、水分の再吸収を抑制します。結果として、血液の水分過多な状態(低浸透圧血症)が是正され低ナトリウム血症が改善します。

【働き-3】

常染色体優性多発性のう胞腎「ADPKD」は、腎臓に多数の‘のう胞(液体の袋)’が出現する遺伝性の病気です。病状の進行とともに腎臓が大きくなり、腎機能が徐々に低下、腹痛、腹部膨満、血尿、高血圧といった症状もあらわれます。そして、最終的には末期腎不全に至り透析治療を余儀なくされるのです。

このお薬は、そのようなうADPKDに有効です。腎のう胞細胞に対するバソプレシンの作用を遮断し腎のう胞の増大を抑制することにより、腎臓が大きくなるスピードを落とします。また、腎機能の低下を抑制し、腹痛、腹部膨満などADPKDに伴なう諸症状をやわらげることができるのです。完治は困難ですが、透析の導入時期の先延ばしも期待できます。

【薬理】

電解質排泄にかかわらないで水分だけを排出する水利尿薬です。その利尿作用は、バソプレシンという抗利尿ホルモンの働きを抑制すことにもとづきます。バソプレシンの役目は、腎臓の集合管にあるV2受容体と結合し、尿中から血中への水の再吸収を促進することで体液を保持することです。

この薬の有効成分トルバプタンは、そのバソプレシンのV2受容体への結合を阻害し、腎集合管における水再吸収を減少させます。その結果、ナトリウムなどの電解質排泄に直接の影響を与えずに、水分だけを排出させことになのです(水利尿)。また、多発性のう胞腎においてはバソプレシンによる細胞内サイクリックAMPの上昇を抑制することで腎のう胞の増大を抑制します。

【臨床試験-1】

この薬の利尿効果をプラセボ(にせ薬)と比較する臨床試験が行われています。参加したのは、ループ利尿薬など他の利尿薬を飲んでも体液貯留が改善しないうっ血性心不全の患者さん110人。このうち53人はこの薬を、別の57人はプラセボを他の利尿薬とともに7日間併用します。そして、主要評価項目として、浮腫の改善度を体重の変化量をもって比較するのです。

その結果、この薬を飲んでいた人達の体重が平均で約1.5kg減少したのに対し、プラセボの人達は約0.5kgの減少にとどまりました。また、下肢浮腫が改善した人の割合は この薬を飲んでいた人達で約64%、プラセボの人達で42%でした。肺うっ血の改善率はあまり差がなく、 この薬で約50%、プラセボで45%でした。主要評価項目の体重変化量はプラセボを大きく上回り、また各種症状に対しても一定の効果が示されたわけです。さらに、肝性浮腫の患者さんを対象にした別の臨床試験でも、同様の有効性が示されています。ただし、浮腫に対する対症療法になりますので、生命予後の改善はあまり期待できません。

【臨床試験-2】

常染色体優性多発性のう胞腎「ADPKD」に対する効果をプラセボ(にせ薬)と比較する国際共同試験が行われています。参加したのは、腎容積の増加が速いと推定される患者さん1445人です。そして、無作為に2:1の比率で分かれ、961人はこの薬を、別の484人はプラセボを服用し、主要評価項目として3年間服用後の腎臓の容積の変化率を比較するのです。そのほか、副次的に腎機能や腎臓痛なども調べます。

その結果、この薬を飲んでいた人達の腎容積の増加率は年2.8%だったのに対し、プラセボの人達では5.5%増加しました。この薬のほうが2.7%(5.5-2.8)低く、腎臓の容積の増加が50%ほど抑えられたわけです。これに伴ない、腎機能の低下が抑制され、腎臓痛、尿路感染、血尿といったADPKDにみられる臨床症状の低減も認められました。
特徴
  • バソプレシンV2受容体拮抗薬という新しいタイプの利尿薬です。ふつうの利尿薬と異なり、ナトリウムなどの電解質排泄を増やさないで水分だけを排出させるのが特徴です。このよう作用から、一般的な利尿薬と区別して“水利尿薬”と呼ぶことがあります。なお、同類の水利尿薬としてモザバプタン(フィズリン)があますが、こちらの効能はある種の低ナトリウム血症に適応します。
  • 心性浮腫または肝性浮腫に適応しますが、通常 第1選択薬とはしません。処方されるのは、フロセミド(ラシックス)など標準的な利尿薬だけではよい効果が得られない場合、または電解質異常などの副作用から十分増量できない場合などです。
  • 電解質の排泄増加を伴わないので、低ナトリウム血症や低カリウム血症を起こす心配はありません。一方で、それらの血清濃度が異常に上昇してしまうおそれがあります。このため、開始当初は入院し、電解質の測定を小まめにおこなうようにします。
注意
【診察で】
  • 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
  • 服用中の薬を医師に教えてください。
  • 妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は医師に伝えてださい。
  • 医師から、この薬の有効性や安全性について十分説明を受けてください。薬の性質をよく理解し、同意のうえで治療にあたりましょう。

【注意する人】

高ナトリウム血症がある場合は避けます。また、血清ナトリウム濃度が低い人、狭心症や心筋梗塞のある人、脳梗塞など脳卒中のおそれのある人、高齢の人などは、より少量で開始するなど慎重に用いるようにします。妊娠中は使用できません。

  • 適さないケース..高ナトリウム血症、無尿、のどの渇きを感じない人、水が飲めない人、適切な水分補給ができない肝性脳症の人、重い腎機能障害や肝機能障害のある人(ADPKDの治療において)、妊娠中もしくはその可能性のある人。
  • 注意が必要なケース..血清ナトリウム濃度が低い人(125mEq/L未満)、狭心症や心筋梗塞のある人、脳卒中、高カリウム血症、重い腎臓病、肝性脳症のある人、高齢の人など。

【飲み合わせ・食べ合わせ】
  • 飲み合わせによっては、この薬の作用が強まり、副作用が出やすくなります。たとえば、抗生物質のエリスロマイシン(エリスロシン)やクラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)、抗真菌薬のイトラコナゾール(イトリゾール)、高血圧や心臓病に用いるジルチアゼム(ヘルベッサー)、C型慢性肝炎治療薬のテラプレビル(テラビック)、抗エイズウイルス薬のリトナビル(ノービア)、免疫抑制薬のシクロスポリン(サンディミュン、ネオーラル)などに注意が必要です。併用するのなら、この薬の減量を考慮するようにします。
  • 逆に、この薬の作用を弱めてしまう飲み合わせもあります。抗結核薬のリファンピシン(リファジン)、抗けいれん薬のカルバマゼピン(テグレトール)やフェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、フェノバルビタール(フェノバール)などがこれに当たります。服用中の薬は必ず医師に報告しておきましょう。
  • 心臓の薬のジゴキシン(ジゴシン)の血中濃度を上昇させる可能性があります。併用のさいは、ジギタリス中毒の発現に注意が必要です。
  • カリウム補給薬をはじめ抗アルドステロン薬(カリウム保持性降圧利尿薬)のエプレレノン(セララ)やスピロノラクトン(アルダクトン)、あるいはレニン・アンジオテンシン系に作用する降圧薬(ACE阻害薬、ARB、ラジレス)と飲み合わせるときは、血液中のカリウム濃度の上昇に注意が必要です。
  • グレープフルーツジュースは飲まないほうがよいでしょう。同時服用により、この薬の血中濃度が上昇し作用が増強するおそれがあるためです。
  • セイヨウオトギリソウは、この薬の作用を弱めるかもしれません。このため、セント・ジョーンズ・ワートなど、この薬草を含む健康食品はとらないようにしてください。

【使用にあたり】
  • 病気により飲みかたが違います。医師の指示通りにしてください。通常、治療の開始あるいは再開にあたっては、少なくとも数日間入院します。血清ナトリウム濃度を頻回にチェックするなど、注意深く様子をみる必要があるためです。体液貯留(浮腫)に用いる場合、治療期間は原則 浮腫が改善するまでです。一方、多発性のう胞腎では、長期服用になります。
  • 体液貯留に対しては、通常1日1回午前中に1錠服用します(心性浮腫は錠15mg、肝性浮腫は錠7.5mg)。血清ナトリウム濃度が低めの場合は、半錠になることがあります。電解質バランスを保つため、他の利尿薬と併用します。飲みはじめると尿の量も回数も増えてきます。夕刻以降に飲むと、夜間の排尿が多くなりますので注意してください。
  • 多発性のう胞腎の治療では、1日2回、朝と夕方に分けて服用します。通常、少量で開始し、効果や副作用をみながら段階的に増量していきます。こまめな水分補強を心がけましょう。

【検査】

体重、血圧、脈拍数、尿量、血清ナトリウム値・カリウム値の測定、肝機能検査などが重要です。とくに、飲みはじめは、これらの検査を頻回におこなう必要があります。

【妊娠授乳】

動物実験で催奇形作用が報告されています。妊娠する可能性のある人は、治療中に妊娠しないように避妊してください。もし妊娠がわかったら、すぐ医師に相談してください。また、服用中は授乳を避けましょう。

【食生活】
  • 医師の指導に従い、適切な水分補給を心がけてください。のどが渇いたら、早めに水分を補給しましょう。ただし、むやみにガブ飲みしてはいけません。ひどい口渇が続くようでしたら、医師に申し出てください。薬の減量が必要かもしれません。
  • 多発性のう胞腎の治療では、就寝前にコップ1〜2杯の水分を補給し、夜間は排尿に行くたびに水分を補給してください。
  • めまいを起こすことがありますので、転ばないように気をつけてください。車の運転や高所での危険な作業にも十分注意しましょう。
効能

【効能A】

ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留(錠7.5mg、錠15mg、顆粒1%)

【効能B】

ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な肝硬変における体液貯留(錠7.5mg、顆粒1%)

【効能C】

抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)における低ナトリウム血症の改善(錠7.5mg、錠15mg、錠30mg、顆粒1%)

【効能D】

腎容積が既に増大しており、かつ、腎容積の増大速度が速い常染色体優性多発性のう胞腎の進行抑制(錠7.5mg、錠15mg、錠30mg、顆粒1%)
用法

【効能A(心不全)】

通常、成人はトルバプタンとして15mgを1日1回経口服用する。

【効能B(肝硬変)】

通常、成人はトルバプタンとして7.5mgを1日1回経口服用する。

【効能C(SIADH)】

通常、成人にはトルバプタンとして7.5mgを1日1回経口投与する。必要に応じて、望ましい血清ナトリウム濃度に達するまで段階的に増量できる。なお、患者の状態により適宜増減するが、最高用量は1日60mgまでとする。

【効能D(のう胞腎)】

通常、成人はトルバプタンとして1日60mgを2回(朝45mg、夕方15mg)に分けて経口服用を開始する。1日60mgの用量で1週間以上服用し、忍容性がある場合には、1日90mg(朝60mg、夕方30mg)、1日120mg(朝90mg、夕方30mg)と1週間以上の間隔を空けて段階的に増量する。なお、忍容性に応じて適宜増減するが、最高用量は1日120mgまでとする。

※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
副作用 頻尿や尿量の増加は、ある程度やむおえません。薬が効いている裏返しです。口渇、めまい、便秘なども比較的多いほうです。のどが渇くようでしたら、脱水を起こしている可能性がありますので、早めに適量の水分を補給してください。また、脱水により めまいを起こすことがありますので、転倒にも注意しましょう。

脱水がすすむと、腎臓の働きが落ち腎不全を起こす危険性がでてきます。また、脱水とともに、血液中のナトリウムやカリウム濃度が上昇し、不整脈を起こすなど体の調子がおかしくなってきます。これらについては、頻繁に検査して重症化する前に対処することが大事です。医師も十分に注意を払うと思います。

さらに血栓塞栓症を引き起こす危険性もあります。脱水により血液が濃縮し、血液が固まりやすくなるためです。発現部位はいろいろです。手足、とくにふくらはぎの痛みやシビレ、激しい頭痛、突然の息切れ、急に視力が落ちるといった症状が前触れとなります。万一、そのような症状があらわれたら、すぐ医師に連絡してください。

そのほか、重い肝障害が報告されています。飲みはじめの1〜2週間に発現することが多いので、服用開始1ヵ月間は頻回に肝機能検査をおこなう必要があります。万一のことですが、初期症状として、発熱、ひどい倦怠感、食欲不振、吐き気、皮膚や白目が黄色くなる、尿の色が茶褐色になるといった症状に注意してください。


【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
  • 腎不全..尿が少ない・出ない、むくみ、尿の濁り、血尿、だるい、吐き気、頭痛、のどが渇く、けいれん、血圧上昇。
  • 血栓塞栓症..手足とくにふくらはぎの痛み・はれ・むくみ・しびれ、爪の色が紫、突然の息切れ・息苦しい、深呼吸で胸が痛い、急に視力が落ちる、視野が欠ける、目が痛む、頭痛、片側のまひ、うまく話せない、意識が薄れる。
  • 高ナトリウム血症..のどが異常に渇く、息苦しい、呼吸が荒い、混乱、意識がうすれる。
  • 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
  • ショック、アナフィラキシー..気持ちが悪い、胸苦しい、冷汗、顔面蒼白、手足の冷え・しびれ、じんま疹、全身発赤、顔のむくみ・腫れ、のどが腫れゼーゼー息苦しい、めまい、血圧低下、目の前が暗くなり意識が薄れる。
  • 過度の血圧低下、重い不整脈..めまい・ふらつき、立ちくらみ、吐き気、動悸、脈の乱れ、気を失う。
  • 肝性脳症(肝性浮腫の場合)..睡眠が不規則、無関心、ぼんやりして認知症のような症状、混乱、興奮、ふるえ、けいれん、意識がうすれる、意識消失
  • 重い血液成分の異常..発熱、喉の痛み、口内炎、だるい、皮下出血(血豆・青あざ)や鼻血・歯肉出血など出血傾向。

【その他】
  • 頻尿、多尿、脱水
  • 口渇、便秘、吐き気、下痢
  • めまい、ふらつき、頭痛、けん怠感、血圧低下
  • 高カリウム血症(だるい、息切れ、脈の乱れ、手足のしびれ)、尿酸値の上昇
   概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用
  









用法用量は医師・薬剤師の指示を必ずお守りください。
すべての副作用を掲載しているわけではありません。いつもと違う「おかしいな」と感じたら早めに受診してください。
症状に合った薬が適正に処方され、また正しく使用するかぎり、重い副作用はめったに起こりません。まずは安心して、決められたとおりにご使用ください。
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Good luck & Good bye