概説 |
血圧を下げるお薬です。高血圧症に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 2種類の有効成分からできている高血圧症治療薬です。成分の1つは、ARBことアンジオテンシンU受容体拮抗薬のバルサルタン(ディオバン)です。これは新しいタイプの降圧薬で、血圧を上げる「アンジオテンシンU」という体内物質をおさえる作用があります。そして、体の血管が広がり、また水分や電解質が調整されて血圧が下がります。
もう一つの配合薬は、古くからあるチアジド系降圧利尿薬のヒドロクロロチアジドです。こちらは、体の余分な水分を塩分とともに尿に排出して血圧を下げます。近年、同系の利尿薬は処方される機会が少ないのですが、大規模臨床試験で寿命を延ばすことが証明されている良薬です。少量であれば副作用も少なく、併用薬としても優れています。
これらの2成分がいっしょに作用することで、降圧効果が高まり、十分血圧が下がるようになります。また、心臓や腎臓の負担が軽くなる効果も期待できます。日々の血圧を適切にたもつことは、将来起こるかもしれない脳卒中や心臓病、腎臓病を防ぎ、より長生きにつながるのです。実際の長期試験でも、類似薬の併用療法により脳卒中が減ることが確かめられています(PROGRESS)。

- 【薬理】

- 血圧上昇をもたらす一連の働きとしてレニン・アンジオテンシン系サイクルがあります。このサイクルにかかわるホルモンの一種アンジオテンシンUをおさえるのがARBのバルサルタンです。利尿薬のヒドロクロロチアジドは食塩と水分を排出し循環血液量を減少させることで血圧を下げるのですが、これに反応してレニン・アンジオテンシン系の働きが高まることが知られています。
バルサルタンは、利尿薬投与により亢進するレニン・アンジオテンシン系を抑制するのに好都合です。さらに、アルドステロン分泌を低下させ尿中カリウム排泄を抑制することから、利尿薬の副作用である低カリウム血症の軽減がはかれるものと考えられます。このように、ARBと利尿薬の併用は それらの薬理作用からも 降圧効果の増強と副作用の軽減がはかれる優れた組み合わせと推察されるのです。
|
特徴 |
- アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)と少量利尿薬との合剤です。利尿薬のヒドロクロロチアジドの含量はMDが6.25mg、EXが12.5mgと通常量の1/4〜1/2ほどで副作用が出にくい量です。ARBのバルサルタンは両剤ともに80mgです。持続性があるので通常1日1回、服用錠数も1錠で済みます。
- 基本的に第1選択薬とはせず、単剤で効果不十分な場合に使用するようにします。今後、第2選択薬として処方される機会が増えることでしょう。なお、ARBと利尿薬の配合剤には、ほかにもプレミネント、エカード、ミコンビ、イルトラがあります。
|
注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 妊娠中の人は医師に伝えてください。また、服用中に妊娠した場合は、すぐ医師に報告してください。
- 使用中の薬を医師に教えてください。

- 【注意する人】

- 腎臓病や高カリウム血症のある人は、病状により使用できないことがあります。糖尿病がある人で、別の高血圧の薬のアリスキレン(ラジレス)を飲んでいる人も原則的に控えるようにします。また、糖尿病、痛風、脱水や電解質失調のある人、減塩療法中の人、また高齢の人などは、副作用の発現に注意するなど慎重に用います。
- 適さないケース..急性腎障害、無尿、透析療法中、明らかな低ナトリウム・低カリウム血症、糖尿病の人でアリスキレン(ラジレス)を服用している場合、妊娠中の人など。
- 注意が必要なケース..腎臓病、腎臓の動脈が狭い人、肝臓病、動脈硬化症、高尿酸血症、痛風、糖尿病、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症、脳卒中を起こしたことのある人、脱水・電解質失調(水分摂取不十分、過度の発汗、下痢、嘔吐)、減塩療法中、手術前、妊娠する可能性のある女性、高齢の人など。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 飲み合わせに注意する薬がたくさんあります。飲み合わせによっては、副作用がでやすくなります。服用中の薬は、市販薬もふくめ医師に報告しておきましょう。
- 男性の夜間頻尿にデスモプレシン(ミニリンメルト)を使用している場合は併用できません。併用により低ナトリウム血症を起こすおそれがあるためです。
- 別の血圧降下薬や利尿薬と飲み合わせるときは、血圧の下がりすぎに注意が必要です。利尿薬を服用中に この薬に切り替えまたは追加すると、思いのほか血圧が下がることがあるので、低用量から始めるようにします。
- 血圧降下薬のアリスキレン(ラジレス)と併用するのなら、腎障害や高カリウム血症、低血圧などの発現に十分注意する必要があります。とくに重い腎臓病や糖尿病のある人は、どうしても必要な場合を除き勧められません。併用により副作用が増強し、かえって悪い結果をまねくおそれがあるためです。
- カリウム補給薬のスローケー、またはエプレレノン(セララ)やスピロノラクトン(アルダクトン)などカリウム保持性降圧利尿薬(抗アルドステロン薬)と併用するさいは、血液中のカリウム分の増えすぎに留意しなければなりません。少量の併用でしたら、それほど心配ないでしょう。
- 高カリウム血症をまねく飲み合わせとして、ほかにも、降圧薬のACE阻害薬、月経困難症治療薬のドロスピレノン・エチニルエストラジオール(ヤーズ)、免疫抑制薬のシクロスポリン(サンディミュン、ネオーラル)、抗菌薬のスルファメトキサゾール・トリメトプリム(バクタ、バクトラミン)などがあります。
- 逆に、ステロイド薬やグリチルリチン製剤、一部の漢方薬などと飲み合わせると、カリウム分が減少し低カリウム血症を起こす可能性があります。
- 気分安定薬のリチウム(リーマス)の血中濃度が上がり、リチウム中毒を起こすおそれがあります。併用のさいはリチウム濃度の上昇に注意が必要です。
- コレスチラミン(クエストラン)など陰イオン交換樹脂剤あるいはリン吸着薬のビキサロマー(キックリン)といっしょに飲むと、この薬の吸収が阻害されるおそれがあります。同時服用を避け、時間をずらすことで影響を少なくできる可能性があります。
- 糖尿病の薬の作用を弱めるおそれがあります。
- 心臓の薬のジギタリス薬と併用するときは、ジギタリス中毒の副作用に十分注意します。
- 鎮痛薬との併用により、この薬の降圧作用が弱まる可能性があります。また、もともと腎臓の悪い人では、病状を悪化させるおそれがあります。
- 気分安定薬のリチウム(リーマス)と飲み合わせるときは、リチウム中毒の発現に注意が必要です。
- 骨の薬のビタミンD製剤との併用時は、高カルシウム血症の発現に留意する必要があります。
- 飲酒は控えてください。めまいや立ちくらみがでやすくなります。
 【使用にあたり】
- 決められた飲み方を守ってください。ふつう、1日1回朝食後に1錠飲みます。尿量が増えるので、夕刻以降は避けるのが一般的です。
- 夜間高血圧あるいは早朝高血圧に対処するため、夕食後または就寝前の服用を指示されることもあります。夜間のトイレがつらいときは医師と相談してください。

- 【検査】

- 各種の検査を定期的に受ける必要があります。カリウム値など電解質の検査のほか、尿酸、血糖、腎機能、肝機能などに異常がないか調べます。腎機能が多少悪化しても、一過性であれば心配いりません。
 【妊娠・授乳】
- 妊娠中には用いません。中期以降に飲み続けると、胎児の発育に悪い影響をおよぼすおそれがあるためです。
- 妊娠する可能性がある場合は慎重に用います。服薬に先立ち妊娠していないことを確認し、さらに服薬中も定期的に確認します。もし、妊娠が判明または疑われる場合は、速やかに医師に伝えてください。なお、妊娠を計画する場合は、事前に担当医と相談しておきましょう。
- 授乳中の服薬の可否は医師が決めます。授乳中に服薬する場合は、授乳しないことが望ましいとされます。
 【食生活】
- とくに飲みはじめに、めまいや立ちくらみを起こしやすいです。急に立ち上がらないで、ゆっくり動作するようにしましょう。また、車の運転や高所での危険な作業には十分注意してください。
- 本態性高血圧症では、生活習慣の見直しも大切。減塩などの食事療法、運動療法、肥満があれば体重を落とすだけでも血圧が下がるものです。軽い高血圧であれば、薬をやめられることもあります。できたら簡易血圧計で自宅で血圧測定をおこない、適切に血圧がコントロールされているかチェックすることをおすすめします。
|
効能 |
高血圧症 |
用法 |
成人は1日1回1錠(バルサルタン/ヒドロクロロチアジドとして80mg/6.25mg又は80mg/12.5mg)を経口服用する。本剤は高血圧治療の第一選択薬として用いない。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
|
副作用 |
比較的多いのは、体のだるさ、めまい、頻尿、頭痛などです。検査でよく見つかるのは尿酸値の上昇です。血糖値は上がりぎみですが、糖尿病治療中の人は低血糖症にも注意が必要です。カリウム値は上がることも、逆に下がることもあります。
もともと腎臓の悪い人では、飲み始めに腎機能が一時的に悪化することがあります。この場合、カリウム値の上昇に十分注意しなければなりません。定期的に血液検査を受けて、重篤な「高カリウム血症」になる前に予防することが大切です。
重い副作用はまずありませんが、薬が効きすぎると、血圧が下がりすぎて、強いめまいや立ちくらみを起こします。失神など一過性の意識消失も報告されていますので、とくに高齢の人、厳重な減塩療法中、また他の薬と併用するときなどに注意してください。
まれに肝臓が悪くなることもあります。定期的に肝機能の検査を受けたほうがよいでしょう。そのほか、特異な副作用として、顔や口が腫れあがる重篤な血管浮腫も報告されています。飲み始めに念のため注意してください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 過度の血圧低下..めまい・ふらつき、立ちくらみ、冷感、吐き気、嘔吐、気を失う。
- ショック、アナフィラキシー..気持ちが悪い、胸苦しい、冷汗、顔面蒼白、手足の冷え・しびれ、じんま疹、全身発赤、顔のむくみ・腫れ、咳、のどが腫れゼーゼー息苦しい、めまい、血圧低下、目の前が暗くなり意識が薄れる。
- 血管浮腫..顔や唇、舌、喉がひどく腫れる、飲み込みにくい、息がしにくい、手足が腫れる。
- 腎不全..尿が少ない・出ない、むくみ、尿の濁り、血尿、だるい、吐き気、頭痛、のどが渇く、けいれん、血圧上昇。
- 高カリウム血症..だるい、手や唇のしびれ、脱力、吐き気、下痢、息切れ、脈拍低下、脈の乱れ、不安感、取り乱す、けいれん。
- 低ナトリウム血症..だるい、吐き気、嘔吐、意識もうろう、意味不明な言動、けいれん。
- 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
- 重い血液成分の異常..発熱、喉の痛み、口内炎、だるい、皮下出血(血豆・青あざ)や鼻血・歯肉出血など出血傾向。
- 肺障害(間質性肺炎など)..息切れ、息苦しさ、から咳、痰、発熱。
- 肺水腫、急性呼吸窮迫症候群..息苦しい、咳、痰でゼーゼー、呼吸があらい、頻脈、横になると苦しい、唇が紫。
- 低血糖..脱力感、ふるえ、さむけ、動悸、冷や汗、強い空腹感、頭痛、不安感、吐き気、目のちらつき、イライラ、眠気、ぼんやり、異常な言動、けいれん、昏睡(意識がなくなる)。
- 横紋筋融解症..手足のしびれ・こわばり、脱力、筋力低下、筋肉痛、歩行困難、赤褐色の尿。
- 急性近視、閉塞隅角緑内障..急激な視力の低下、目が痛い、見えにくい、かすんで見える(光の回りに虹の輪)、充血、頭痛、吐き気。
- 重い皮膚・粘膜障害..発疹、発赤、水ぶくれ、うみ、皮がむける、皮膚の熱感や痛み、かゆみ、唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血、発熱、全身けん怠感。
 【その他】
- だるい、めまい、立ちくらみ、頻尿、頭痛
- 腎機能の一過性の悪化
- 低カリウム血症(だるい、筋力低下、動悸、便秘)、高カルシウム血症
- 血糖値の上昇、糖尿病の悪化
- 尿酸値の上昇、痛風の悪化(発作誘発)
- 肝機能値の異常、発疹、光線過敏症
|