|  概説 | 心臓を休ませるお薬です。狭心症や不整脈の治療に用います。 | 
|  作用 |  
 【働き】
  
心臓や体の血管を広げて血流をよくします。そうすると血液の抵抗が減り、心臓の負担が軽くなります。血圧も下がります。また、心臓の脈をゆっくりして、心臓を休ませる働きもします。
 おもに狭心症や不整脈の治療に使用されます。そのほか、脳、腎臓、手足、目の網膜など体全体の血流を改善するので、いろいろな病気に応用されることがあります。
  
 【薬理】
  
血管壁の細胞にカルシウムが流入すると、血管が収縮し血圧が上がります。このお薬は、カルシウムが細胞内に入るのをおさえます。その結果、血管が広がり血圧が下がります。同時に心臓の負担も軽くなります。このような作用から「カルシウム拮抗薬」と呼ばれています。
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|  特徴 | 一般的なカルシウム拮抗薬と異なり、心臓の心拍をおさえる作用が強いのが特徴です。この作用から、頻脈性不整脈の治療にしばしば用いられます。また、脳の血管拡張作用を期待して、片頭痛や群発頭痛の予防薬として応用することがあります。 | 
  
    |  注意 |  【診察で】
 持病やアレルギーのある人、また妊娠中の人は、医師に伝えておきましょう。服用中の薬は、医師に伝えてください。
  
 【注意する人】
  
心臓の働きが悪い人は、使用できないことがあります。高齢の人も副作用がでやすいので、少量より開始するなど慎重に用います。
 
 適さないケース..重い心不全、重い心臓の刺激伝導障害や徐脈、妊娠中の人など。注意が必要なケース..心不全、心臓の刺激伝導障害や徐脈、低血圧、重い腎臓病、重い肝臓病、高齢の人など。
  
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
  
飲み合わせに注意する薬がたくさんあります。飲み合わせによっては、薬の作用に悪い影響をしたり、副作用がでやすくなります。とくに脈が遅くなる徐脈など不整脈の発現に注意が必要です。服用中の薬は、忘れずに報告しておきましょう。また、別の病院で診察を受けるときも、この薬を飲んでいることを伝えてください。
 
 他の降圧薬や利尿薬、抗不整脈薬と併用するときは、過度な血圧降下や新たな不整脈に注意するなど慎重に用います。とくにβ遮断薬との併用では徐脈の発現に注意が必要です。心臓の薬のジギタリス薬と併用するときは、ジギタリス中毒、不整脈や徐脈の副作用に十分注意します。他の薬の代謝をじゃまする性質があります。結果として、その薬の血中濃度が上昇し副作用がでやすくなるのです。この理由で併用禁止となるのが、慢性心不全治療薬のイバブラジン(コララン)と高脂血症治療薬のロミタピド(ジャクスタピッド)です。禁止ではありませんが、エドキサバン(リクシアナ)など血栓治療薬、痙攣・三叉神経痛・躁うつ病治療薬のカルバマゼピン(テグレトール)、パーキンソン病治療薬のセレギリン(エフピー)、免疫抑制薬のタシクロスポリン(サンディミュン、ネオーラル)、喘息治療薬のテオフィリン(テオドール)なども注意が必要です。一方で、この薬の血中濃度が上昇し副作用がでやすくなる飲み合わせもあります。抗真菌薬のイトラコナゾール(イトリゾール)、マクロライド系抗生物質のクラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)やエリスロマイシン(エリスロシン)、抗コロナウイルス薬のニルマトレルビル・リトナビル(パキロビッド)や抗エイズウイルス薬のリトナビル(ノービア、カレトラ)などがその例です。グレープフルーツジュースにも同様の性質があるので同時服用は避けたほうが無難です。逆に、結核・抗酸菌症治療薬のリファンピシン(リファジン)は、この薬の血中濃度を低下させ、作用を弱める可能性があります。抗けいれん薬のフェノバルビタール(フェノバール)やフェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、さらには健康食品やハーブティーとして販売されているセイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)にも同様の性質があります。飲酒は控えめに。アルコールは、めまいや動悸などの副作用を強めます。
  【使用にあたり】
 決められた飲み方、服用量を守ってください。自分だけの判断で、量を減らしたり、飲むのをやめてはいけません。急に中止すると、反発的に症状が悪化するおそれがあります。中止するときは、医師の判断で徐々に減量するようにします。飲み忘れにも注意してください。万一飲み忘れた場合、2回分を同時に飲んではいけません。
  
 【検査】
  
心電図検査や血液検査をおこなうことがあります。決められた検査を受けるようにしましょう。
  
 【妊娠・授乳】
  
基本的に妊娠中は禁忌です。けれど、特別に危険性が高いわけではありません。他の降圧薬が効かない場合など、医師の判断で用いることがあるかもしれません。
  
 【食生活】
  
血圧が下がり、めまいを起こすことがあります。車の運転や高所での危険な作業には十分注意してください。
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    |  効能 |  【適用】
 <成人><小児>頻脈性不整脈(心房細動・粗動、発作性上室性頻拍)狭心症、心筋梗塞(急性期を除く)、その他の虚血性心疾患
  
 【応用】
  
医師の判断で、別の病気に応用されるかもしれません(片頭痛や群発頭痛の予防など)。
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    |  用法 | 通常成人、1回1〜2錠(ベラパミル塩酸塩として1回40〜80mg)を、1日3回経口服用する。なお、年齢、症状により適宜減量する。通常、小児は、ベラパミル塩酸塩として1日3〜6mg/kg(ただし、1日240mgを超えない)を、1日3回に分けて経口服用する。なお、年齢、症状により適宜減量する。
 
    
      
        | ※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
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    |  副作用 | 注意する症状として、脈が遅くなる「徐脈」があります。とくに、もともと心臓の弱っている人や、高齢の人は注意してください。もし、脈が1分間に50以下になるようでしたら、できるだけ早く受診しましょう。 
 そのほか、顔の潮紅、頭痛、めまいなどがみられます。これらは、徐々に慣れてくることが多いのですが、ひどいときは早めに受診してください。
 
 長く飲み続けるていると、足の甲がむくんだり、歯肉が腫れてくることがあります。歯肉の腫れは、歯肉をよくブラッシングし口内を清潔に保つことで、ある程度予防可能なようです。
 
 
  【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
 心不全、心ブロック、高度な徐脈..息苦しい、胸が苦しい、動悸、疲れやすい、むくみ、急な体重増加、脈が飛ぶ、脈が1分間50以下、めまい、気が遠くなる、失神。重い皮膚・粘膜障害..発疹、発赤、水ぶくれ、うみ、皮がむける、皮膚の熱感や痛み、かゆみ、唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血、発熱、全身けん怠感。
  【その他】
 徐脈、動悸、胸の痛み顔のほてり、潮紅、頭痛だるい、めまい、立ちくらみ、血圧低下足のむくみ、歯肉の腫れ、男性の乳房がふくれる発疹、かゆみ
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