概説 |
血液中のリンを減らすお薬です。腎臓病でリンが増えているときに用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 腎臓の働きが落ちると、リンの排泄が十分にできず、血液中にリンが溜まってきます。高リン血症です。このような状態が長く続くと、骨がもろくなったり、リン酸カルシウムが血管壁に沈着し動脈硬化を引き起こすなど、体のあちこちに悪い影響がでてきます。
このお薬はリン吸着薬です。消化管内で食物に含まれるリンを吸着し、体内への吸収を阻害します。その結果、血液のリンの濃度が低下し、高リン血症が改善されるのです。リンとカルシウムの血清濃度を正常に保つことは、骨の病変を防ぎ、また動脈硬化をおさえて重い心血管系合併症を防ぐことにもつながります。

- 【薬理】

- 非吸収性のアミン機能性ポリマーです。陽性荷電状態のアミノ基を介するイオン結合および水素結合により、消化管内で食物中に含まれるリン酸と結合・吸着し、糞中へのリン排泄を促進します。結果的に、体内へのリン吸収が阻害され血清リン濃度が低下します。

- 【臨床試験】

- この薬の有効性と安全性について、既存の類似薬のセベラマー(フォスブロック、レナジェル)と比較する臨床試験がおこなわれています。参加したのは血液透析中の慢性腎不全の患者さん104人、どちらを飲むかはクジ引きで半々に分かれるようにします。効果判定の主要評価項目は、服用期間3ヶ月後の血清リン濃度です。
その結果、この薬を飲んでいた人達54人の血清リン濃度(mg/dL)は平均で5.8まで下がりました(7.9→5.8)。一方、セベラマーの人達50人は5.6に下がりました(8.1→5.6)。両剤の血清リン濃度に差はなく、既存薬のセベラマーと同等の治療効果が確認できたわけです。また、胃腸障害の発現率については この薬が40%、セベラマー51%、胃腸障害のために中止した人は この薬で1人、セベラマーで6人でした。この薬のほうが胃腸障害の副作用が少なく、安全性についても問題ないことがわかりました。
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特徴 |
- リン結合性ポリマーの高リン血症治療薬です。炭酸カルシウム(カルタン)や炭酸ランタン(ホスレノール)とは異なるタイプのリン吸着薬です。非吸収性で、カルシウムや金属を含まないため、高カルシウム血症や金属の組織蓄積による毒性発現の心配がありません。とくに、血清カルシウム値が高く、炭酸カルシウム製剤が使いにくい場合に有用です。効果不十分な場合は、炭酸カルシウムと併用することもあります。
- 同類薬のセベラマー(フォスブロック、レナジェル)と比べ膨潤の程度が小さく腹部膨満や便秘など消化器系の副作用が軽減されています。このため、胃腸障害でセベラマーが継続困難な場合に代替できる可能性があります。
- セベラマーで心配される過塩素血症性の代謝性アシドーシスを引き起こすことがなく、また胆汁酸の吸着能が低く、ビタミンの吸収障害を生じる可能性も低いです。
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注意 |
 【診察で】
- 便秘や痔など持病のある人は、医師に伝えておきましょう。
- 服用中の薬を医師に教えてください。

- 【注意する人】

- 腸閉塞のある人は使用禁止です。腸管狭窄や消化管潰瘍など胃腸の病気、また便秘や痔のある人は慎重に用いるようにします。
- 適さないケース..腸管閉塞。
- 注意が必要なケース..腸管狭窄、腸管憩室、便秘、痔、消化管潰瘍、胃腸の手術を受けたことのある人、重い消化管運動障害のある人など。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 他の薬と結合して、その薬の吸収を阻害する性質があります。てんかんの薬や心臓の薬、ステロイド薬、免疫抑制薬など重要度の高い薬との同時服用は避け、できるだけ間隔をあける必要があります。別に薬を飲んでいる場合は、必ず医師と相談してください。
 【使用にあたり】
- ふつう、1日3回食事の直前に飲みます。食事と間隔があくと、効果がなくなりますので注意してください。
- 血清リン濃度を確認しながら用量調節をおこないます。増量する場合は1週間以上の間隔をあけるようにします。
- 排便状況に留意しましょう。便秘が続いたり、おなかが膨れるような場合は、早めに受診し医師と相談してください。

- 【検査】

- 定期的に決められた検査を受け、効果や副作用をチェックしましょう。リンやカルシウム、あるいは副甲状腺ホルモン(PTH)の濃度がきちんと保たれているか調べる必要があります。

- 【食生活】

- この薬を飲んでいても、リン摂取量の制限が必要なことがあります。医師から指示される食事療法をきちんと守りましょう。
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効能 |
慢性腎臓病患者における高リン血症の改善 |
用法 |

- 【用量】

- 通常、成人は、ビキサロマーとして1回500mgを開始用量とし、1日3回食直前に経口服用する。以後、症状、血清リン濃度の程度により適宜増減するが、最高用量は1日7,500mgとする。

- 【注意1】

- 〔保存期慢性腎臓病患者の場合〕投与量は、血清リン濃度を各施設の基準値内に維持するよう適宜増減する。増量幅はビキサロマーとして1回あたりの用量で500mgまでとする。
〔透析患者の場合〕投与量は、血清リン濃度が3.5〜6.0mg/dLとなるよう、以下の基準を目安に適宜増減する。
- 血清リン濃度 6.0mg/dLを超える:1回250〜500mg増量する
- 血清リン濃度 3.5〜6.0mg/dL:投与量を維持する
- 血清リン濃度 3.5mg/dL未満:1回250〜500mg減量する

- 【注意2】

- 本剤投与開始時又は用量変更時には、1〜2週間後を目安に血清リン濃度の確認を行うことが望ましい。

- 【注意3】

- 増量を行う場合は1週間以上の間隔をあけて行うこと。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
副作用で比較的多いのは便秘です。10人に2人くらいの割合です。毎日の排便を心がけましょう。そのほか、おなかの不快感、膨満感、便が硬めになるといった症状もみられます。きわめてまれな例ですが、類似薬において腸管穿孔や腸閉塞も報告されています。ひどい便秘や腹痛が続くときは、医師に連絡してください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 腸管穿孔、腸閉塞、憩室炎、虚血性腸炎..ひどい便秘、おなかが張る、強い吐き気、吐く、持続する腹痛、血便。
- 消化管潰瘍・胃腸出血..胃痛、腹痛、吐き気、嘔吐、吐血(コーヒー色のものを吐く)、下血(血液便、黒いタール状の便)。
 【その他】
- 便秘、硬便、腹部不快感、腹部膨満、腹痛
- 食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、胃炎
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