概説 |
気管支を広げるお薬です。喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に用います。 |
作用 |
- 【働き】
- 気道の閉塞にもとづく病気に気管支喘息と慢性閉塞性肺疾患があります。喘息では気管支が炎症で過敏になり、発作的にせき込んだり、ゼーゼー・ヒューヒューと息苦しくなったりします。一方、慢性閉塞性肺疾患いわゆるCOPDは可逆性に乏しく、慢性的な気道閉塞障害による体動時の呼吸困難が特徴的です。これには慢性気管支炎と肺気腫がふくまれます。
この吸入薬には気管支を広げる成分が含まれています。吸入による直接作用で気管支の収縮をおさえ、気道の通気をよくして呼吸を楽にするのです。同系としては作用時間が長い長時間作用型です。吸入後まもなく効果があらわれ、約24時間持続します。このため、喘息やCOPDの維持管理薬(予防薬)として用いられます。喘息においては、症状や重症度に応じ、吸入ステロイド薬と併用したりします。COPDに対しては第一選択薬として単独で用いることが多いです。
- 【薬理】
- 気管支の収縮でかなめになるのがアセチルコリンという神経伝達物質です。つまり、肺の副交感神経系から遊離するアセチルコリンが、気管支平滑筋にあるムスカリン受容体に結合し、その刺激を受けて収縮するのです。この薬の有効成分のチオトロピウムは、ムスカリン受容体と強く結合し、アセチルコリンの結合を競合的に阻害することにより、気管支収縮を強力かつ持続的に抑制します。このような作用から、抗コリン薬(抗アセチルコリン薬)、または作用する受容体の名前にちなみムスカリン受容体拮抗薬もしくはムスカリン性アセチルコリン受容体遮断薬などと呼ばれています。
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特徴 |
- 長時間作用型の抗コリン薬(LAMA)に分類される気管支拡張薬です。細い気管支を拡張するβ刺激薬に対し、抗コリン薬は太い気管支に作用して拡張させます。β刺激薬に比べ効力・速効性ともやや劣りますが、安全性が高く、また効き目が落ちないなどの利点から長期維持療法に適します。作用持続時間が長いので吸入回数は1日1回だけです。
- 対症療法薬ですので病気そのものは治せません。ただ、症状悪化による悪循環を断ち、COPDにおいてはその進行を遅らせる効果が期待できます。実際に、COPDの大規模長期臨床試験で4年間にわたる呼吸機能の維持と死亡率の低下が報告されています。
- 吸入用カプセルと吸入液の2種類の製剤があります。カプセルの保険適応症はCOPDに限られます。吸入液は、COPDにくわえ、気管支喘息の効能も追加取得しています。
- カプセルの内容物は微細な粉末で、これを専用の吸入器ハンディヘラーで吸入します。一方、吸入液はカートリッジに充填されており、レスピマットという吸入器に取り付けて吸入します。このレスピマットは、噴射ガスを使わずに薬剤をごく細かい霧状にして噴出する新型のソフトミスト吸入器です。
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注意 |
【診察で】
- 緑内障や前立腺肥大症など、持病のある人は医師に伝えておいてください。
- 正しい吸入方法の説明を受けておきましょう。
【注意する人】
- 緑内障のうちの閉塞隅角緑内障がある人は禁止です。前立腺肥大症で尿の出が悪い場合も使用できないことがあります。
- 心臓病や腎臓の働きの悪い人、前立腺肥大症のある人は慎重に用います。
【使用にあたり】
- カプセルは吸入用です。飲んでしまっては効果がありません。専用の吸入器ハンディヘラーを使って吸入してください。具体的な使い方は説明書にありますから、よく読んでおきましょう。カプセル内の薬を完全に吸入するため、1回に2吸入する必要があります。なお、カプセルを取り出す際は、ブリスターをミシン目にそって切り離し、吸入の直前に1カプセルだけ取り出すようにしましょう。
- 吸入液はレスピマットという吸入用器具と1セットになっています。説明書にならい、カートリッジを組み入れたあと、正しい方法で吸入してください。原則、1回に2吸入します。
- ふつう1日1回、症状の安定のために定期吸入します。急な呼吸困難には、他の速効性の吸入薬(β刺激薬)のほうが向きます。
- 目に入らないように注意してください。
- 涼しいところに保管しましょう。
- 【食生活】
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の第一の原因はタバコ。タバコの煙が肺や気管支を傷つけ機能を悪くするのです。禁煙が治療の第一歩です。
- 【備考】
- 慢性閉塞性肺疾患の治療の主役は気管支拡張薬。長時間作用性の抗コリン薬もしくはβ2刺激薬が第一選択され、効果不十分な場合には両者による吸入療法がおこなわれます。それでも増悪をくり返す場合、さらに吸入ステロイド薬を追加することもあります。いずれも対症療法薬ですので病気そのものは治せませんが、症状悪化による悪循環を断ち進行を遅らせることが可能です。
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効能 |
- 【吸入用カプセル】
- 慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解
- 【吸入液(1.25μgレスピマット)】
- 下記疾患の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解
- 【吸入液(2.5μgレスピマット)】
- 下記疾患の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解
- 慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)
- 気管支喘息
※注意:本剤は慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)及び気管支喘息の維持療法に用いること。本剤は急性症状の軽減を目的とした薬剤ではない。
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用法 |
- 【吸入用カプセル】
- 通常、成人には1回1カプセル(チオトロピウムとして18μg)を1日1回本剤専用の吸入用器具(ハンディヘラー)を用いて吸入する。
【吸入液(レスピマット)】- <慢性閉塞性肺疾患>
- 通常、成人にはスピリーバ2.5μgレスピマット1回2吸入(チオトロピウムとして5μg)を1日1回吸入投与する。
- <気管支喘息>
- 通常、成人にはスピリーバ1.25μgレスピマット1回2吸入(チオトロピウムとして2.5μg)を1日1回吸入投与する。なお、症状・重症度に応じて、スピリーバ2.5μgレスピマット1回2吸入(チオトロピウムとして5μg)を1日1回吸入投与する。
<参考>- 1日量:チオトロピウムとして2.5μg → 使用する製剤:スピリーバ1.25μgレスピマット
- 1日量:チオトロピウムとして5μg → 使用する製剤:スピリーバ2.5μgレスピマット
<注意>- 1.気管支喘息に対しては、吸入ステロイド剤等により症状の改善が得られない場合、あるいは患者の重症度から吸入ステロイド剤等との併用による治療が適切と判断された場合にのみ、本剤と吸入ステロイド剤等を併用して使用すること。
- 2.本剤は1回2吸入で投与する製剤である。1回1吸入では1日の投与量を担保できない。したがって、チオトロピウムとして2.5μgを投与する場合には、スピリーバ1.25μgレスピマットを使用すること。また、チオトロピウムとして5μgを投与する場合には、スピリーバ2.5μgレスピマットを使用すること。
- 3.重症度の高い喘息患者には、スピリーバ2.5μgレスピマット1回2吸入(チオトロピウムとして5μg)を1日1回吸入投与する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
比較的多いのは口内の乾燥です。一時的なのどの刺激感や軽いせき込みもみられます。これらはそれほど心配なく、ある程度はしかたないかもしれません。万一、吸入時に激しくせき込んだり、ぜいぜいして息苦しいなど呼吸困難があらわれた場合は使用を注意し直ちに受診してください。
その他の全身性の副作用はまずありませんが、もともと心臓病や腎臓の働きの悪い人は心不全や不整脈の発現に念のため注意が必要です。また、高齢で前立腺肥大のある人は、尿が出にくくなる可能性があります。
万一、誤って薬剤が目に入り、充血とともに眼痛や目のかすみ、視覚の異常などが現れたら、直ちに受診してください。緑内障発作につながるおそれがあります。
【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 心不全・不整脈..息切れ、息苦しい、むくみ、体重増加、動悸、脈が弱い、脈の乱れ、めまい、失神。
- イレウス(腸閉塞)..お腹が張る・膨れる、吐き気、吐く、便秘、腹痛。
- 緑内障..目が痛い、充血、見えにくい、かすむ、光の回りに虹の輪、頭痛、吐き気。
- アナフィラキシー..発疹、じんま疹、全身発赤、顔や口・喉や舌の腫れ、咳き込む、ゼーゼー息苦しい。
【その他】
- 口内乾燥、のどの刺激感、せき込み、嗄れ声
- めまい、排尿障害、動悸
- 発疹
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