概説 |
痰の粘度を下げる吸入薬です。嚢胞性線維症の治療に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 嚢胞性線維症は、呼吸器や消化器が障害される遺伝性の病気です。呼吸器系で特徴的なのは、肺に粘稠な痰がたまり気道をふさいでしまうことです。このため呼吸困難を生じるとともに、細菌が気道に定着し重い感染症を起こしやすくなります。発症率はきわめて低いものの、有効な治療法は確立しておらず予後は思わしくありません。
このお薬は、そのような嚢胞性線維症の呼吸器症状を改善する吸入液として開発されました。痰に含まれ粘稠性を高くしている好中球由来のデオキシリボ核酸(DNA)を分解し痰の粘度を低下させる作用があります。結果的に痰の排出が容易となり、肺の働きがよくなるのです。また、肺病変の改善により、気道感染症のリスク低減も確かめられています。

- 【臨床試験】

- 嚢胞性線維症の発病率が高い海外で臨床試験がおこなわれています。5歳以上の968人の患者さんをクジ引きで分け、643人はこの薬を、別の325人はプラセボ(にせ薬)を使用し、その効果を比較する試験です。効果の判定は、6ヶ月間の気道感染の発症率でおこないます。
その結果、気道感染の発症率は、この薬を飲んでいた人達で33%(214/643人)、プラセボの人達が43%(140/325人)でした。この薬のほうが発症率が低く、気道感染をある程度防げることが確認できたわけです。 また、プラセボでは変化がみられなかった肺活量(FEV1:1秒間呼気量)が高まるなど、呼吸機能の改善も認められました。
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特徴 |
- 遺伝子組換え技術により製造されるヒトデオキシリボ核酸(DNA)分解酵素製剤です。国内での発売が遅れていましたが、厚生労働省により医療上の必要性の高い希少疾病用医薬品に指定され、その開発が促進されました。
- 嚢胞性線維症の患者さんが比較的多い欧米では、肺病変における標準的な治療薬として位置付けられます。カルボシスティン(ムコダイン)など一般的な去痰薬よりも効果が確実です。
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注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えてください。
- 正しい使い方と吸入方法の説明を受けておきましょう。

- 【注意する人】

- 肺機能が著しく低下している場合は、呼吸困難の発現など病状の変化に注意が必要です。
 【使用にあたり】
- 効果を持続するために毎日継続して吸入する必要があります。説明書をよく読み、指示通りに正しく吸入してください。
- ふつう、1日1回、1アンプルをジェット式ネブライザーを用いて吸入します。年齢や重症度が慮され、1日2回になることもあります。
- 吸入時には新しいアンプル1本を使用し、残液は使用しないでください。また、希釈したり、他の薬剤と混合してはいけません。未使用のアンプルは、光を避けて冷蔵庫(2〜8度)で保管してください。
- 吸入開始後も、標準的な肺理学療法をふくめ、痰の排出促進を目的とした通常の治療を継続する必要があります。
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効能 |
嚢胞性線維症における肺機能の改善 |
用法 |
通常、ドルナーゼ アルファ(遺伝子組換え)として2.5mgを1日1回ネブライザーを用いて吸入投与する。なお、患者の状態に応じて1回2.5mgを1日2回まで吸入投与することができる。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
比較的多いのは、非感染性の咽頭炎や喉頭炎、発声障害、鼻炎症状などです。その多くは、エアロゾル吸入による気道への直接刺激によるもので、薬自体によるものではないと考えられます。重い副作用はまずありませんが、呼吸困難の発現など病状の変化に注意してください。
- 非感染性の咽頭炎、発声障害、鼻炎、呼吸困難
- 発熱、胸痛
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