 概説 |
オピオイド鎮痛薬による便秘症状をやわらげるお薬です。 |
 作用 | 
- 【働き】
- モルヒネに代表されるオピオイド鎮痛薬は、がん痛や慢性疼痛に対し、一般的な鎮痛薬が効かないときに用いられます。強力な鎮痛作用をもつ半面、副作用として頑固な便秘を起こしやすいのが難点です。
このお薬は、そのようなオピオイド誘発性便秘症に有効です。オピオイドによる腸の運動抑制作用に拮抗し便通をよくします。疼痛管理の妨げとなる便秘症状をおさえられるわけです。
- 【薬理】
- オピオイド薬は、脳のμオピオイド受容体を介して鎮痛作用を発揮する一方、腸管に存在する末梢のμオピオイド受容体とも結合し腸の運動を抑制します。その結果として、オピオイド誘発性便秘症を引き起こすのです。
このお薬は、腸管末梢のμオピオイド受容体への結合をじゃまします。結果的にオピオイド薬による腸運動抑制作用がおさえられ便秘が改善されるのです。血液脳関門の透過性が低く脳内に入りにくいので、脳のμオピオイド受容体を介する鎮痛作用にほとんど影響しません。このような作用機序から末梢性μオピオイド受容体拮抗薬と呼ばれています。
- 【臨床試験】
- オピオイド誘発性便秘症に対する効果をプラセボ（にせ薬）と比較する試験がおこなわれています。参加したのは、オピオイド鎮痛薬を服用中で、２週間に自発排便回数が５回以下のがん患者さん１９３人です。そして、この薬を飲む人と、プラセボを飲む人半々に分かれ、両グループの有効率（レスポンダー率）を比べるのです。有効とするのは、治療期２週間における自発排便回数が週３回以上かつ服薬前から週１回以上増えた場合です。
その結果、この薬を飲んだ人達の有効率は７１.1％（69/97人）、プラセボの人達で３４.4％（33/96人）でした。プラセボに比べ明らかに有効率が高く、プラセボに対する優越性が検証されたわけです。また、非がん性慢性疼痛を対象とした別の試験でも、８０％以上という高い有効率が得られています。安全性については、プラセボに比べ下痢が多かったものの、ほとんどが軽度から中等度であり、適切な処置により回復しました。
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 特徴 |
- 末梢性μオピオイド受容体拮抗薬に分類される新薬です。国内で唯一、オピオイド誘発性便秘症を適応症とします。対症療法的な既存の下剤とは異なり、オピオピオイド誘発性便秘症そのものを起きにくくします。
- 治療の対象となるのは、オピオイド鎮痛薬を使用しているがんの患者さん、または非がん性の慢性疼痛のある患者さんです。なお、便秘を起こしやすいオピオイド鎮痛薬には、麻薬系の強オピオイドに分類されるモルヒネ（MSコンチン、カディアン、ピーガード）、オキシコドン（オキシコンチン、オキノーム）、フェンタニル（デュロテップ、ワンデュロ、フェントス）、タペンタドール（タペンタ）、非麻薬系の弱オピオイドのトラマドール（トラマール、ワントラム、トラムセット）などがあります。
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注意 |
【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 別に薬を飲んでいる場合は、その薬を医師に教えてください。
- 【注意する人】
- 腸に閉塞や通過障害のある人は使用できないことがあります。
- 適さないケース．．消化管閉塞のある人または既往があり再発のおそれの高い人。
- 注意が必要なケース．．消化管が弱っている人（消化管潰瘍、クローン病など）、血液脳関門が機能していない または機能不全が疑われる場合など。
【飲み合わせ・食べ合わせ】
- ある種の薬と飲み合わせると、この薬の代謝が遅れ副作用が強まるおそれがあります。たとえば、抗真菌薬のイトラコナゾール（イトリゾール）やフルコナゾール（ジフルカン）、ボリコナゾール（ブイフェンド）、抗菌薬のクラリスロマイシン（クラリス）、免疫抑制薬のシクロスポリン（サンディミュン、ネオーラル）などに注意が必要です。
- 逆に、この薬の作用を弱める飲み合わせもあります。たとえば、結核・抗酸菌症治療薬のリファンピシン（リファジン）、抗けいれん薬のフェノバルビタール（フェノバール）やフェニトイン（アレビアチン、ヒダントール）、カルバマゼピン（テグレトール）、ステロイド薬のデキサメタゾン（デカドロン）などです。
【使用にあたり】
- 通常、１日１回、１回に１錠（0.2mg）服用します。食事と関係なく飲めますが、決められた時間にしてください。
- 飲み忘れた場合、気づいたときにすぐ服用してください。ただし、翌日に気づき次の服用時間が近ければ、その分は抜かし次の通常の時間に１回分を飲んでください。２回分を一度に飲んではいけません。
- 治療終了時期は医師が決めます。オピオイド鎮痛薬を中止する場合は、この薬も中止します。
【妊娠・授乳】
- 妊娠中の服用については､医師とよく相談してください。
- 授乳は避けてください。乳汁中に薬が移行する可能性があります。
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効能 |
オピオイド誘発性便秘症 |
用法 |
通常、成人はナルデメジンとして1回0.2mgを1日1回経口服用する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
比較的多いのは下痢です。軽い下痢がほとんどで、重症化することは少ないですが、腹痛が強いときや下痢が続くときは受診してください。
過量服用により心配されるのが、オピオイド離脱症候群です。不安、吐き気、嘔吐、発汗、下痢、筋肉痛などがあらわれ体調が悪くなります。なので、効かないからと自分の判断で増やしてはいけません。決められた用量を守ることが大事です。
【重い副作用】 ．．めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 重度の下痢．．水のような便、頻回な下痢、下痢が数日続く、嘔吐をともなう下痢。
【その他】
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