概説 |
腸の炎症をしずめるお薬です。潰瘍性大腸炎やクローン病に用います。 |
作用 |
- 【働き】
- 潰瘍性大腸炎やクローン病は、腸に炎症を起こす病気です。慢性に推移し、活動期には下痢や血便、腹痛などが激しくなり、ときに重症化します。原因はよくわかっていませんが、潰瘍性大腸炎は直腸など大腸の一部または大腸全体の粘膜層に潰瘍やびらんが発現し、クローン病ではおもに小腸末端や大腸あるいは肛門に非連続性の病変を生じ深い潰瘍ができたりします。
このお薬は、腸の患部に作用して炎症をおさえます。炎症が軽くなれば、下痢や腹痛もしだいによくなってきます。軽症から中等症における寛解導入に用いるほか、長期の維持療法にも有用です。製剤により作用部位が少し異なり、ペンタサに代表される製剤が小腸と大腸で作用するのに対し、アサコールとリアルダは大腸だけで作用します。このため、クローン病の小腸大腸型にはペンタサを用いる必要があります。
- 【薬理】
- おもな作用機序として、炎症性細胞から放出される活性酸素を消去することにより、炎症の進展と組織の障害を抑制するものと推察されています。さらに、ロイコトリエンの生合成をおさえ、炎症性細胞の組織への浸潤を抑制する作用をあわせもつと考えられています。
- 【臨床試験-1】
- 潰瘍性大腸炎に対する有効性を検証する試験が行われています。参加したのは、軽症から中等症の活動期の患者さん263人です。そして、アサコール錠(メサラジン3.6g/日)またはリアルダ錠(メサラジン4.8g/日)を飲む人に分かれ、服薬2カ月後の病状を調べるのです。
具体的には、排便回数、血便、直腸からS状結腸までの内視鏡検査による粘膜所見、医師による全般的評価の4つの評価項目をそれぞれ0〜3の4段階で点数化し、その合計点(0〜12点)の変化量をもって評価します。点数が低ければ軽症、高いほど重症です。ちなみに、患者さんの服薬前の合計点の平均は6点くらいでした。
試験の結果、アサコール錠を飲んでいた人達は平均1.8点低下(5.8→4.0点)、リアルダ錠の人達は2.6点低下(5.9→3.3点)しました。また、2点以下かつ血便がなく寛解したと判定された人の割合は、アサコール錠で31%(40/131人)、リアルダ錠で43%(59/136人)でした。
- 【臨床試験-2】
- 潰瘍性大腸炎の寛解期の患者さん約200人を対象に、この薬による維持療法の有効性を検証する試験もおこなわれています。1年間服薬を続け、その期間に血便が出なかった人の割合を調べるのです。その結果、血便の非発現率は、ペンタサ錠(メサラジン2.25g/日)で78%(78/100人)、リアルダ錠(メサラジン2.4g/日)で85%(84/99人)でした。
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特徴 |
- 抗炎症作用をもつメサラジン(5-ASA)の徐放製剤です。メサラジンは化学名から5-アミノサリチル酸、略して5-ASAと呼ばれています。
- 従来品のサラゾスルファピリジン(サラゾピリン)に近い薬剤で、有効成分のメサラジンだけが腸内で溶けるように改良されています。余分な成分を含まず副作用も軽減されていることから、サラゾスルファピリジンに代わり、潰瘍性大腸炎やクローン病の主要薬として広く処方されるようになりました。
- 製剤により作用部位が違います。ペンタサは時間依存性徐放剤で、小腸から大腸にいたる広い範囲でメサラジンを放出します。このため、クローン病の小腸大腸型にも適用可能です。一方、アサコールとリアルダはpH依存性徐放剤であり、pH7以上になる大腸に到達してからメサラジンを放出します。大腸で集中的に作用するように製剤設計されているわけです。このような特性から、アサコールとリアルダの適応症は潰瘍性大腸炎に限ります。リアルダは持続性にも優れ、服用回数は1日1回だけです。
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注意 |
【診察で】
- 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
- 今までに薬を飲んで発疹などアレルギー症状を起こしたことのある人は、その薬の名前を医師に教えてください。
- 妊娠出産を希望される人は、事前に医師と相談しておきましょう。
- 【注意する人】
- 肝臓や腎臓の悪い人は、慎重に用いる必要があります。病状によっては使用できません。
【使用にあたり】
- 決められた飲み方を守ってください。症状によって飲む量が違います。また、製品(ペンタサ、アサコール、リアルダ)により製剤特性が違うので、用法用量が異なります。医師の指示どおりにしてください。
- とくに活動期には、寛解導入のため多めになることがあります。徐々に効果がでてきますので、根気よく続けましょう。症状が落ち着けば、減量することも可能です。
- ペンタサ錠は二分割して飲めます。ただし、それ以上砕いたり、噛んで飲んではいけません。アサコール錠とリアルダ錠は、割ったり噛んだりしないで、そのまま飲んでください。
- 便のなかに錠剤の破片が見つかることがあります。ペンタサ錠は白色、アサコール錠とリアルダ錠は茶色い殻が残ります。いずれも、錠剤表面のコーティング剤ですので問題ありません。
- 包装(シート)のまま湿気を避けて保管してください。服用直前に包装から取り出すようにしましょう。
- 【検査】
- 定期的に決められた検査を受け、副作用をチェックするようにしましょう。
- 【備考】
- 潰瘍性大腸炎やクローン病の内科的治療で中心となるのがサラゾピリン、ペンタサ、アサコールやリアルダ錠に代表されるメサラジン(5-ASA)系薬剤です。重症例には、ステロイド薬や免疫抑制薬、抗TNF-α抗体薬などが用いられます。クローン病では、腸の安静と栄養補給を目的に特殊な栄養剤を使用します。
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効能 |
【ペンタサ、その他(錠500mg、顆粒94%)】
- 【アサコール、その他(錠400mg)】
- 潰瘍性大腸炎(重症を除く)
- 【リアルダ(錠1200mg)】
- 潰瘍性大腸炎(重症を除く)
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用法 |
【ペンタサ、その他(錠500mg、顆粒94%)】<潰瘍性大腸炎>- 通常、成人はメサラジンとして1日1,500mgを3回に分けて食後経口服用するが、寛解期には、必要に応じて1日1回の服用とすることができる。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日2,250mgを上限とする。ただし、活動期には、必要に応じて1日4,000mgを2回に分けて服用することができる。
- 通常、小児はメサラジンとして1日30〜60mg/kgを3回に分けて食後経口服用する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日2250mgを上限とする。
[注意1]1日4,000mgへの増量は、再燃寛解型で中等症の潰瘍性大腸炎患者(直腸炎型を除く)に対して行うよう考慮すること。
[注意2]1日4,000mgを、8週間を超えて投与した際の有効性は確立していないため、患者の病態を十分観察し、漫然と1日4,000mgの投与を継続しないこと。 <クローン病>- 通常、成人はメサラジンとして1日1500mg〜3000mgを3回に分けて食後経口服用する。なお、年齢、症状により適宜減量する。
- 通常、小児はメサラジンとして1日40〜60mg/kgを3回に分けて食後経口服用する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
- 【アサコール、その他(錠400mg)】
- 通常、成人にはメサラジンとして1日2,400mgを3回に分けて食後経口服用するが、寛解期には、必要に応じて1日1回2,400mg食後経口服用とすることができる。活動期には、1日3,600mgを3回に分けて食後経口服用する。なお、患者の状態により適宜減量する。
[注意]1日3,600mgを、8週間を超えて投与した際の有効性は確立していないため、漫然と投与せず、患者の病態を十分観察し、重症度、病変の広がり等に応じて適宜減量を考慮すること。
- 【リアルダ(錠1200mg)】
- 通常、成人はメサラジンとして1日1回2,400mgを食後経口服用する。活動期は、通常、成人はメサラジンとして1日1回4,800mgを食後経口服用するが、患者の状態により適宜減量する。
[注意]1日4,800mgを投与する場合は、投与開始8週間を目安に有効性を評価し、漫然と継続しないこと。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
病気自体の症状かもしれませんが、この薬の副作用で腹痛や吐き気、下痢などを起こす可能性があります。発疹やかゆみなど皮膚症状がでることもあります。
重い副作用としては、肝炎、肺障害、血液障害、腎炎などが報告されています。これらはきわめてまれな副作用ですが、定期的な検査で早く見つけることが大事です。ひどい倦怠感、皮膚や白目が黄色くなる、咳や息切れ、呼吸困難などがあらわれた場合は医師に連絡してください。
【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
- 間質性肺炎など肺障害..息切れ、息苦しさ、咳、痰、発熱。
- 重い血液成分の異常..発熱、喉の痛み、口内炎、だるい、皮下出血(血豆・青あざ)や鼻血・歯肉出血など出血傾向。
- 腎臓の重い症状..尿が少ない・出ない、尿の濁り・泡立ち、血尿、むくみ、だるい、吐き気、側腹部痛、腰痛、発熱、発疹。
- 心筋炎、心膜炎、胸膜炎..胸が痛い、息苦しい。
- 膵炎..吐き気、吐く、持続的な激しい腹痛、上腹部または腰から背中の激痛、発熱。
【その他】
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