|  概説 | 女性ホルモンの「黄体ホルモン」を補うお薬です。 | 
|  作用 |  
 【働き-1】
  
黄体ホルモン(プロゲステロン)は、排卵後、卵胞から変化した黄体から分泌されます。そして、子宮内膜を充実させ、受精卵が着床しやすい状態にします。この期間は体温が上昇する高温期(黄体期)です。さらに、着床後も分泌が続き、妊娠を維持する働きをします。
 このお薬は、黄体ホルモンとして働く「黄体ホルモン薬」です。黄体ホルモンの不足やバランスのくずれで起こるいろいろな症状を改善します。生理不順や無月経、機能性子宮出血(器質的に異常のない予定外の出血)、黄体ホルモンの不足による不妊症、さらには流産の防止薬とします。
 
 
 生理不順、無月経..生理のリズムをとりもどすのに用います。まず、一定期間服用し子宮内膜を充実・維持させます。その後服用を中止し、生理(出血)を起こさせます。機能性子宮出血..子宮内膜を維持し剥がれにくくすることで、出血をおさえます。黄体機能不全による不妊症..黄体ホルモン補充療法です。黄体の働きが悪く、黄体期に体温上昇がみられないときや、黄体期が短い場合(10日以下)に用います。黄体ホルモンは、子宮内膜を分泌内膜に変えて、受精卵が着床しやすい状態にします。ふつう、排卵と合わせて服用をはじめます。流産・早産の予防..子宮の緊張をゆるめ妊娠を維持する働きをします。おなかの張りや腹痛、出血など前兆症状がみられたときに用います。また習慣性流産(不育症)に予防的に使うこともあります。少量短期間でしたら、赤ちゃんへの影響はまずないと考えられています。女性ホルモン補充療法..更年期障害に対し、卵胞ホルモン薬の補助薬として用います。併用の目的は、子宮がん発生の危険性をなくすためです。不妊治療..不妊治療(生殖補助医療)を行う周期の開始時期の調節に有用です。また、体外受精(凍結胚移植)にあたり、良質の成熟卵を採取するために、排卵誘発剤を使用し多くの卵子を採取する方法である調節卵巣刺激法においても使われます。この薬により早発黄体形成ホルモン(LH)サージという現象を抑制することで早発排卵を防ぐことができるのです。その他..医師の判断で、生理日の調整、子宮内膜症などに応用されるかもしれません。
  
 【働き-2】
  
高用量製剤を乳がんや子宮がんに用いることがあります。エストロゲン(卵胞ホルモン)を抑制するなど複合的な作用により、エストロゲン依存性のがん細胞の増殖をおさえます。
 
 乳がん..乳がんに対しては、第一選択されることはなく、他のホルモン療法薬の効き目が悪くなったときなどに使います。子宮がん..再発や転移例においても、よい効果を示します。
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|  特徴 | 代表的な合成黄体ホルモン薬です。天然の黄体ホルモンに近い自然な作用を示します(プレグナン型プロゲストーゲン)。産婦人科領域で広く処方されています。同類薬としては、中性脂肪を増やす作用が弱いです。そのため、長期服用が必要な更年期障害に対する「女性ホルモン補充療法」にも多用されています。高用量製剤(H200)に限り、乳がんと子宮がんに適応します。
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    |  注意 |  【診察で】
 心臓病や脳卒中など持病のある人は医師に伝えておきましょう。妊娠中もしくはその可能性のある人は、医師に伝えてださい。服用中の薬を医師に教えてください。
  
 【注意する人】
  
脳梗塞や心筋梗塞など血栓性の病気のある人、また、重い肝臓病のある人は使用できません。この薬により病状が悪化するおそれがあるためです。また、高用量製剤においては、手術後1週間以内の服用を控える必要があります。
 
 適さないケース..脳梗塞、心筋梗塞、血栓静脈炎、重い肝臓病のある人など。注意が必要なケース..心臓病、腎臓病、糖尿病、てんかん、うつ病、片頭痛、喘息、ポルフィリン症、髄膜腫のある人など。
  【使用にあたり】
 治療目的によって飲み方が違います。周期的投与法など変則的になることが多いですから、指示どおりに正しくお飲みください。卵胞ホルモン薬といっしょに飲むことがあります。飲み始めの吐き気は、徐々に慣れてなくなることが多いです。服用中に妊娠の可能性がでてきたら、すぐ医師に連絡してください。
  
 【検査】
  
長期に続けるときは、定期的に決められた検査を受けてください。
  
 【妊娠・授乳】
  
妊娠中のホルモン薬の胎児への影響は、使用量と使用期間、また使用時期によって違います。流産の予防に用いる量であれば、影響することはまずないと考えられています。そのほか、不妊治療などにも使われますが、この場合も比較的少量で済みますので、心配するようなことはないでしょう。
 日本母性保護医協会による調査によると、流産防止のために妊娠中に黄体ホルモン薬を使用したグループと、使用しなかった人のグループを比較した結果、先天異常の発生率にとくに差は認められなかったそうです。オーストラリアの危険度分類でも、少量の黄体ホルモン薬についてはもっとも安全な“A”のカテゴリーに分類されています。けれど一方で、アメリカでは黄体ホルモン薬による切迫流産の治療は必ずしもすすめられていません。長期間の大量服用は危険度が高まりますので避けなければなりません。
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    |  効能 |  【一般製剤】
 <効能A>無月経、月経周期異常(稀発月経、多発月経)、月経量異常(過少月経、過多月経)機能性子宮出血黄体機能不全による不妊症切迫流早産、習慣性流早産
 <効能B>
  
生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整(ヒスロン錠5、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル錠2.5mg「xx」)
 <効能C>
  
調節卵巣刺激下における早発排卵の防止(ヒスロン錠5、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル錠2.5mg「xx」)
 <応用>
  
医師の判断で、別の病気に応用されるかもしれません(更年期障害に対する女性ホルモン補充療法、子宮内膜症、生理日の調整など)。
  【高用量製剤(H錠200mg)】
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    |  用法 |  【一般製剤】
 <効能A・B>
  
メドロキシプロゲステロン酢酸エステルとして、通常成人1日2.5〜15mgを1〜3回に分割経口服用する。
 <効能C>
  
メドロキシプロゲステロン酢酸エステルとして、通常、月経周期2〜5日目より1日10mgを1又は2回に分割経口服用する。患者の状態により1日5mgまで減量できる。
  【高用量製剤(H200)】
 乳癌には、メドロキシプロゲステロン酢酸エステルとして通常成人1日600〜1200mgを3回に分けて経口服用する。子宮体癌(内膜癌)には、メドロキシプロゲステロン酢酸エステルとして通常成人1日400〜600mgを2〜3回に分けて経口服用する。なお、症状により適宜増減する。
 
    
      
        | ※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
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    |  副作用 | 飲み始めに多いのは、吐き気や嘔吐、乳房の張りや痛み、頭痛などです。これらは、2〜3カ月して体が慣れてくればたいてい軽快しますので、それほど心配いりません。また、人によっては、体がだるくなったり、気分が憂うつになることもあります。このようなときは、早めに受診し医師と相談してください。 
 重い副作用はまずありませんが、高用量製剤で「血栓症」が報告されています。大量服用時や、他のホルモン薬と併用しているときなど念のため注意してください。血栓は、血液の固まりによる血管の詰まりです。生じる部位によりますが、手足、とくにふくらはぎの痛みやシビレ、突然の息切れや胸の痛み、激しい頭痛、急に視力が落ちるといった症状が前触れとなることがあります。万一、そのような症状があらわれたら、すぐ医師に連絡してください。
 
 
  【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
 血栓症..手足とくにふくらはぎの痛み・はれ・むくみ・しびれ、突然の息切れ・息苦しい、深呼吸で胸が痛い、急に視力が落ちる、視野が欠ける、目が痛む、頭痛、片側のまひ、うまく話せない、意識が薄れる。心不全..疲れやすい、息苦しい、息切れ、むくみ、急な体重増加、痰、ゼィゼィ、咳、頻脈。ショック、アナフィラキシー..気持ちが悪い、胸苦しい、冷汗、顔面蒼白、手足の冷え・しびれ、じんま疹、全身発赤、顔のむくみ・腫れ、咳、のどが腫れゼーゼー息苦しい、めまい、血圧低下、目の前が暗くなり意識が薄れる。乳頭水腫..物がよく見えない、二重に見える、片頭痛
  【その他】
 乳房が張る、乳房痛、予定外の出血吐き気、吐く、食欲不振、腹痛、胃の膨満感、下痢むくみ、体重増加、にきびだるい、めまい、頭痛、眠気、不眠、気分の落ち込み発疹、肝機能の異常
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