概説 |
不妊症のお薬です。排卵障害による不妊症のほか、乏精子症による男性不妊にも用います。 |
作用 |
- 【働き】
- 性腺刺激ホルモンの分泌を促進することにより、卵胞の発育をよくして排卵を誘発します。一般不妊治療において、生理のある無排卵周期症の場合で排卵の成功率は70〜80%以上、第1度無月経でも60〜70%くらいです。
生殖補助医療においても使用されています。体外受精や卵細胞質内精子注入を行うための卵を得るため、この薬により調節卵巣刺激を行い複数の卵胞を育てたあとで採卵します。
男性にも有用です。男性においては性腺刺激ホルモンは精巣に作用し精子形成を助け、また男性ホルモン(テストステロン)を増やします。血中の性腺刺激ホルモンや男性ホルモン濃度が低い特発性乏精子症に向きます。
- 【薬理】
- 比較的少量で抗エストロゲ作用を示すとされ、視床下部のエストロゲン受容体に結合しエストロゲンの刺激をブロックします。エストロゲンによる負のフィードバックが抑制されるため、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の分泌が増え、その刺激を受け下垂体からの性腺刺激ホルモン(FSH、LH)の分泌が増大します。性腺刺激ホルモンは、卵巣に働きかけ卵胞の発育を促進、成熟させ排卵へと導きます。男性の場合は、精巣に働き、精子の分化成熟や男性ホルモン(テストステロン)の生合成を促進します。
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特徴 |
- 代表的な排卵誘発薬です。薬理作用から抗エストロゲン薬に分類されることもあります。同類薬のシクロフェニル(セキソビット)よりも作用が強力で効果が確実です。排卵がない場合、まず最初にこの薬が試みられるものです。欠点として、頚管粘液の分泌抑制や子宮内膜への悪影響があげられます。
- 性腺刺激ホルモンの分泌低下を伴う乏精子症による男性不妊症に対しても、国内外で古くから使用されてきました。2022年の不妊治療保険適用拡大により、正式な効能として承認され保険が利くようになりました。
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注意 |
【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 排卵誘発薬を用いると、二子の可能性が少し高まります(5%)。そのことも含め注意事項や副作用について十分説明を受けてください。薬の性質をよく理解し、同意のうえで治療にあたりましょう。
【注意する人】
- 乳がんや子宮がん、卵巣がん、あるいは卵巣腫大がある場合、使用できないことがあります。肝臓病がある人も控えるようにします。
- 子宮筋腫や子宮内膜症、乳がんの既往歴、乳房結節、乳腺症のある人は、病状の悪化に注意するなど慎重に用いる必要があります。
- 妊娠中は禁止です。とくに妊娠初期の不注意な服用を避けるため、基礎体温を必ず記録するなど十分な対策をとる必要があります。
【使用にあたり】
- 治療目的により飲みかたが違います。治療スケジュールにそって正確に飲みましょう。
- 一般的には、生理開始の3〜5日目から1日1錠を5日間服用します。服用終了後、1〜2週間で排卵が起こります。排卵の有無を確認するため、必ず基礎体温を記録してください。排卵がみられなかった場合、次回は2錠に増やします。
- 男性の乏精子症の場合は、1錠を隔日に服用します。服用期間は3〜6カ月くらいです。
- いつもと違う症状があらわれたら、すぐに医師に相談してください。女性の不妊治療において、下腹部の痛み・張り、吐き気、腰痛などの症状や急激な体重増加がみられたら、すぐに医師に相談してください。
- 【検査】
- 不妊治療では、卵巣過剰刺激症候群の兆候を見逃さないためのモニタリングず大事です。超音波検査で卵巣腫大がないか調べたりします。
【食生活】
- 治療スケジュールを守りましょう。
- 女性の不妊治療においては、毎日、基礎体温を記録してください。
- 目がかすむことがあります。服用中は車の運転など危険な作業は控えましょう。
- 【備考】
- 不妊の原因は、男性不妊も含めさまざまです。個々のケースにより治療方法が異なります。原因をきちんと見きわめたうえで治療することが大切です。排卵誘発薬が有効なのは、性腺刺激ホルモンの低分泌による排卵障害が原因の不妊症です。無効な場合、性腺刺激ホルモンそのものの注射による治療法がおこなわれます。
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効能 |
- 【効能A】
- 排卵障害にもとづく不妊症の排卵誘発
- 【効能B】
- 生殖補助医療における調節卵巣刺激
- 【効能C】
- 乏精子症における精子形成の誘導
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用法 |
- 【効能A】
- 無排卵症の患者に対して本剤により排卵誘発を試みる場合には、まずGestagen、Estrogen testを必ず行って、消退性出血の出現を確認し、子宮性無月経を除外した後、経口服用を開始する。
通常第1クール1日クロミフェンクエン酸塩として50mg 5日間で開始し、第1クールで無効の場合は1日100mg 5日間に増量する。用量・期間は1日100mg 5日間を限度とする。
- 【効能B】
- 通常、クロミフェンクエン酸塩として1日50mgを月経周期3日目から5日間経口服用する。効果不十分な場合は、次周期以降の用量を1日100mgに増量できる。
- 【効能C】
- 通常、クロミフェンクエン酸塩として1回50mgを隔日経口服用する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
不妊治療で注意が必要なのが卵巣過剰刺激症候群です。この薬は比較的マイルドでそのリスクは低いほうですが、効き過ぎると卵巣が腫大し腹痛が起きたりします。まれに血栓塞栓症を併発し重症化することもあります。下腹部に痛みや張りを感じたり、急激な体重増加があらわれたら、直ちに医師に連絡してください。
そのほか、吐き気、頭痛、ほてり、いらいら感、倦怠感、目のかすみなど視覚症状もみられます。視覚症状が強い場合、念のため眼科的検査が必要です。
【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 卵巣過剰刺激症候群..下腹部痛、下腹部緊迫感、吐き気、腰痛、息苦しい、急激な体重増加。
【その他】
- 視覚症状..物がかすんで見える
- 吐き気、吐く、食欲不振
- 頭痛、いらいら感、だるい
- 顔の潮紅、尿が増える、口が渇く
- 発疹
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