概説 |
ヨウ素を補給するお薬です。おもに、甲状腺腫などによる甲状腺機能亢進症に用います。 |
作用 | 
- 【作用-1】

- ヨウ素は、甲状腺ホルモンの原料です。ヨウ素が不足すると、甲状腺ホルモンが十分につくれなくなり、体の調子が悪くなります。このような甲状腺機能低下症に、このお薬で少量のヨウ素を補給してあげます。ヨウ素欠乏による甲状腺腫などの治療に用います。

- 【作用-2】

- 一方、甲状腺腫やバセドウ病などで甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、甲状腺機能亢進症として特有な症状があらわれます。食べてもやせる、汗をかく、微熱、震え、ドキドキ、イライラといった症状です。
このようなときに、ヨウ素薬を多めに飲むと、体の制御機能が働き、甲状腺ホルモンの過剰な分泌が抑制されます。そして、甲状腺機能亢進症にみられる諸症状が改善するのです。ただし、この効果は長続きしないので、抗甲状腺薬が副作用で使えないときの代替治療、あるいは手術までの応急的な治療法になります。

- 【作用-3】

- ヨウ素には、気管支粘膜分泌を増やす作用があります。そのため、痰がうすまり、痰の切れがよくなります。そのほか、第三期梅毒のゴム腫の吸収促進に用いることがあります。

- 【作用-4】

- 放射性ヨウ素による甲状腺の内部被曝を予防または低減することができます。放射性ヨウ素が体内に入る前に、この薬で十分量の安定ヨウ素を補充しておくことで、放射性ヨウ素の甲状腺への取り込みが抑えられるのです。使用が想定されるのは、万一の原発事故発生時などです。この場合、国や自治体の指示に従い使用する必要があります。
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特徴 | 古くから、ヨウ素の補充薬として、また甲状腺機能亢進症などの治療に用いられてきました。ただ、処方機会は少ないほうです。2011年の福島原発事故で放射性ヨウ素の内部被曝予防薬として注目され、その後2013年に正式な効能として承認されました。 |
注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 服用中の薬を医師に教えてください。

- 【注意する人】

- ヨウ素にアレルギーのある人は使用できません。甲状腺に異常のある人や、腎臓病のある人は、医師の判断で慎重に用います。
- 適さないケース..ヨウ素過敏症、肺結核(放射性ヨウ素による内部被曝の予防を目的とする場合は慎重に使用)。
- 注意が必要なケース..甲状腺機能亢進症または甲状腺機能低下症のある人、腎臓病、先天性筋強直症、高カリウム血症、低補体血症性蕁麻疹様血管炎またはその既往歴のある人、ジューリング疱疹状皮膚炎、ヨード造影剤で過敏症を起こしたことのある人など。
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- 高血圧の治療に用いられるエプレレノン(セララ)とエサキセレノン(ミネブロ)との併用は避けます。体内のカリウム分が増えすぎてしまうためです。禁止ではありませんが、カリウム補給薬(スローケー、グルコンサンK、アスパラカリウム等)、スピロノラクトン(アルダクトン)などカリウム保持性降圧利尿薬(抗アルドステロン薬)、降圧薬のACE阻害薬(レニベース、タナトリル等)やA2拮抗薬(ブロプレス、ニューロタン、ディオバン等)、アリスキレン(ラジレス)、フィネレノン(ケレンディア)なども同様の理由で注意が必要です。
- 放射性ヨードによる治療をおこなうときは、1週間前にこの薬を中止します。
- 抗甲状腺薬のチアマゾール(メルカゾール)またはプロピルチオウラシル(プロパジール)との飲み合わせにより、甲状腺機能低下と甲状腺腫生成作用が増強することがあります。
- 気分安定薬のリチウム薬(リーマス)も甲状腺機能低下作用を強めますので、併用のさいは甲状腺機能を測定するなど注意が必要です。
 【使用にあたり】
- 治療目的により用量や服用回数が違います。指示された用法用量を守り正しくお飲みください。
- 医師の指示しだいですが、服用時間は食後30分くらいがよいかもしれません。食事中または食直後ですと薬の吸収が多少悪くなります。また、空腹時に飲むと胃が荒れることがあります。
- コップ一杯以上の十分な水で飲んでください。なお、牛乳で飲むと 胃腸の負担が軽くて済みます。
- 万一の原発事故による内部被曝の予防薬として用いる場合は、医師または国や自治体の指示に従いすみやかに服用してください。
 【備考】
- バセドウ病など甲状腺機能亢進症の治療には、抗甲状腺薬(メルカゾールなど)を用いるのが一般的です。副作用で抗甲状腺薬が使えないときは、手術や放射性ヨードによる治療が試みられます。ヨウ素薬(この薬)は、緊急避難的に用いられます。
- 被爆による甲状腺障害の予防には、被爆直前の服用がもっとも効果的です。時間の経過とともに効果が薄くなりますので、自治体などの指示に従いすみやかに服用してください。事故の状況によりますが、被爆線量が5レム以下の場合は使用せず、50レム以上の場合は積極的に使用したほうがよいとされます。服用期間は、事故の影響度にもよりますが、3〜7日程度です。
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効能 |

- 【効能A】

- 甲状腺腫(ヨード欠乏によるもの及び甲状腺機能亢進症を伴うもの)
 【効能B】
- 次の疾患に伴う喀痰喀出困難//慢性気管支炎、喘息
- 第三期梅毒

- 【効能C】

- 放射性ヨウ素による甲状腺の内部被曝の予防・低減(一部製剤)(保険適用外)
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用法 |

- 【効能A】

- ヨード欠乏による甲状腺腫には、ヨウ化カリウムとして、1日0.3〜1.0mgを1〜3回に分割経口服用する。甲状腺機能亢進症をともなう甲状腺腫には、ヨウ化カリウムとして、1日5〜50mgを1〜3回に分割経口服用する。この場合は適応を慎重に考慮すること。なお、年齢、症状により適宜増減する。

- 【効能B】

- 慢性気管支炎及び喘息にともなう喀痰喀出困難、第三期梅毒には、通常、成人はヨウ化カリウムとして、1回0.1〜0.5gを1日3〜4回経口服用する。なお、いずれの場合も、年齢、症状により適宜増減する。

- 【効能C】

- 放射性ヨウ素による甲状腺の内部被曝の予防・低減には、ヨウ化カリウムとして通常13歳以上には1回100mg,3歳以上13歳未満には1回50mg、生後1ヵ月以上3歳未満には1回32.5mg,新生児には1回16.3mgを経口服用する。
- 注意1:食直後の経口服用により、胃内容物に吸着されることがあるので、注意すること。制酸剤、牛乳等との併用は胃障害を軽減させることができる。
- 注意2:放射性ヨウ素による甲状腺の内部被曝の予防・低減の場合、国等の指示に従い投与すること。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
副作用は少ないほうですが、ときに吐き気や胃痛、下痢など胃腸症状があらわれます。また、長期に多めの量を飲み続けると、甲状腺の調子が悪くなったり、ヨウ素中毒によるいろいろな症状がでるおそれがあります。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- ヨウ素中毒..カゼのような症状、耳下腺炎、結膜炎、まぶたの腫れ、発疹、にきび、水ぶくれ、甲状腺機能失調、甲状腺腫。
- ヨウ素悪液質..皮膚荒れ、体重減少、全身衰弱、動悸、いらいら感、抑うつ、不眠、性欲減退、乳房の腫大と痛み。
 【その他】
- 吐き気、吐く、胃痛、下痢、血便(消化管出血)
- 口内の灼熱感、金属味、歯肉痛
- 発疹、じん麻疹
- 甲状腺機能低下症、頭痛、息切れ、かぜ症状
- 高カリウム血症
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