概説 |
葉酸代謝拮抗薬のメトトレキサートやプララトレキサートの副作用を予防するお薬です。また、高用量製剤を大腸がんの治療に用います。 |
作用 | 
- 【作用-1】

- 葉酸代謝拮抗薬のメトトレキサート(メソトレキセート、リウマトレックス)は、がんや白血病のほかリウマチの治療にも用いられる効き目の強い薬です。その抗腫瘍作用は、がん細胞の核酸合成に必要な葉酸の代謝を阻害することです。反面、その作用は正常な細胞にもおよび、さまざまな副作用を引き起こすおそれがあります。
このお薬、ホリナート(ロイコボリン)はビタミンの一種である葉酸の活性型製剤です。これを併用することで、メトトレキサートによって生じる過度の細胞増殖抑制をすみやかに回復させ、その副作用を回避することが可能です。とくに、がんや白血病に対しメトトレキサートを大量使用するさいに投与する方法を「ロイコボリン救助療法」と呼び一般に浸透しています。メトトレキサートのほか、同系の注射薬プララトレキサート(ジフォルタ)と併用することもあります。

- 【作用-2】

- 抗がん薬のテガフール・ウラシル(ユーエフティ)は、消化器がんによく用いる代表的な内用抗がん薬です。その作用は、がん細胞の遺伝情報を持つ“DNA”が作られるのを妨害しがん細胞の分裂増殖をおさえることです。
このお薬、ホリナート(ロイコボリン)は、テガフールの抗がん作用を強める役目をします。大規模な臨床試験においても、これら2剤併用療法の有効性が示され、より長生きにつながることが分かっています。ホリナート・テガフール・ウラシル療法と呼ばれ、大腸がん(結腸・直腸がん)に適応します。

- 【臨床試験】

- 大腸がんに対すする有効性を検証する試験が行われています。大腸がんの患者さん約800人が参加し、従来からの注射剤を用いるホリナート・フルオロウラシル療法(5FU/LV)を受けるグループと、この薬を含む飲み薬による併用療法ホリナート・テガフール・ウラシル療法(UFT/LV)を受けるグループに分かれ生存期間を比べる試験です。その結果、生存期間の中央値は、ホリナート・フルオロウラシル療法の人達で13.4ヶ月、この薬を含む併用療法で12.4ヶ月でした。標準的なホリナート・フルオロウラシル療法とほとんど差がなく、同等の有効性が確認できたわけです。
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特徴 | ホリナートカルシウムを有効成分とする活性型葉酸製剤(還元型葉酸製剤)です。ロイコボリンと呼ばれることが多く、略号はLV。この薬自体に抗がん作用はありませんが、メトトレキサートの毒性軽減やフッ化ピリミジン系抗がん薬の作用増強にたいへん有用です。同成分の注射薬による治療も広くおこなわれています。 |
注意 |
 【診察で】
- 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
- 服用中の薬を医師に教えてください。
- 妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は医師に伝えてださい。
- 治療方法について十分説明を受けてください。併用薬の副作用や注意事項についてもよく聞いておきましょう。
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- 抗けいれん薬のフェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)や抗血栓薬のワルファリン(ワーファリン)の副作用を増強するおそれがあります。
- 抗菌薬のST合剤(バクタ)の作用を弱める可能性があります。
- 葉酸を含むビタミン剤を服用している人は、医師に伝えておいてください。
- ホリナート・テガフール・ウラシル療法では、別の抗がん薬のテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合薬(ティーエスワン)との併用が禁止されます。
 【使用にあたり】
- 病状や治療方法によって飲み方が違います。休薬日を守るなど、決められた治療スケジュールを厳守してください。
- 吐き気や嘔吐、腹痛や下痢、口内炎、けん怠感、皮下出血、また、発熱やかぜ症状を含め、この薬を服用中にいつもと違う症状があらわれたら、医師に連絡してください。

- 【検査】

- 併用薬の副作用や効果をチェックするため、定期的に検査を受けなければなりません。肝機能や血液に異常がないかを調べます。
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効能 |

- 【錠5mg】

- 葉酸代謝拮抗剤の毒性軽減

- 【錠25mg】

- 結腸・直腸癌に対するテガフール・ウラシルの抗腫瘍効果の増強
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用法 |
 【錠5mg】- <メトトレキサート通常療法、CMF療法、メトトレキサート関節リウマチ療法又はM-VAC療法>

- メトトレキサート通常療法、CMF療法、メトトレキサート関節リウマチ療法又はM-VAC療法でメトトレキサートによると思われる副作用が発現した場合には、通常、ロイコボリンとして成人1回10mgを6時間間隔で4回経口服用する。なお、メトトレキサートを過剰服用した場合には、服用したメトトレキサートと同量を服用する。
- <メトトレキサート・フルオロウラシル交代療法>

- 通常、メトトレキサート服用後24時間目よりロイコボリンとして1回15mgを6時間間隔で2〜6回(メトトレキサート服用後24、30、36、42、48、54時間目)経口服用する。メトトレキサートによると思われる重篤な副作用があらわれた場合には、用量を増加し、服用期間を延長する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
- <プララトレキサート投与時>

- 通常、成人はプララトレキサート服用後24時間目よりホリナートとして1回25mgを8時間間隔で6回経口服用する。なお、患者の状態により適宜減量する。
 【錠25mg】- <ホリナート・テガフール・ウラシル療法>

- 通常、成人はホリナートとして75mgを、1日3回に分けて(約8時間ごとに)、テガフール・ウラシル配合剤と同時に経口服用する。テガフール・ウラシル配合剤の服用量は、通常、1日量として、テガフール300〜600mg相当量(300mg/m2を基準)を1日3回に分けて(約8時間ごとに)、食事の前後1時間を避けて経口服用する。以上を28日間連日経口服用し、その後7日間休薬する。これを1クールとして服用を繰り返す。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
この薬自体はビタミン誘導体ですので、副作用はほとんどありません。ただし、併用される抗がん薬や抗リウマチ薬による副作用には十分な注意が必要です。
とくに、ホリナート・テガフール・ウラシル療法においては、嘔吐や下痢など消化器症状が強く現れることがあります。激しい腹痛や下痢が続くときは、いったん中止し、ただちに受診してください。
そのほか、骨髄抑制にともなう血液障害、肝障害、間質性肺炎、感染症などを起こすこともあります。下記のような初期症状をふまえ、併用療法中にいつもと違う症状があらわれたら、医師と連絡をとり適切な指示を受けるようにしてください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 重い血液成分の異常..発熱、喉の痛み、口内炎、だるい、皮下出血(血豆・青あざ)や鼻血・歯肉出血など出血傾向。
- 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
- 腸炎..激しい腹痛、下痢、下血(血液便、黒いタール状の便)。
- 白質脳症..頭痛、もの忘れ、ボーとする、歩行時のふらつき、手足のしびれ・まひ、うまく話せない、動作がにぶる、けいれん、二重に見える、見えにくい。
- 間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。
- 重い口内炎、消化管潰瘍・出血..ひどい口内炎、胃痛、下血(黒いタール状の血液便)、吐血(コーヒー色のものを吐く)。
 【その他】
- 食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛
- 口内炎、味覚異常
- 発疹、かゆみ、色素沈着、脱毛
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