おくすり110番
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成分(一般名) メトホルミン塩酸塩
製品例 メトグルコ錠250mg~500mg、グリコラン錠250mg、(旧:メルビン) ・・その他(ジェネリック) & 薬価
区分 糖尿病用剤/ビグアナイド系/経口糖尿病用剤

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   概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用
概説 血糖値を下げるお薬です。糖尿病の治療に用います。
作用

【働き-1】

血液中の糖分「血糖」は、膵臓から分泌されるインスリン・ホルモンで調節されます。糖尿病は、そのインスリンの量が不足したり働きが悪くなることで血糖値が上がってしまう病気です。そのまま放置すると、手足のしびれ(神経障害)、目の病気(網膜症)、腎臓病などいろいろな合併症を引き起こします。

このお薬は、血糖降下薬です。インスリンに対する感受性を高め、おもに肝臓での糖分の生成を抑えることで血糖を下げます。適応となるのは2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)で、なかでも肥満型に向くといわれています。日々の血糖値を適切に保つことは、将来起こるかもしれないさまざまな合併症の予防につながります。

【働き-2】

多嚢胞性卵巣症候群の不妊治療に用いられることがあります。多嚢胞性卵巣症候群における排卵障害は、卵巣でのアンドロゲン(男性ホルモン)産生亢進による閉鎖卵胞の増加が原因とされます。アンドロゲン産生亢進には多嚢胞性卵巣症候群に伴うインスリン抵抗性や高インスリン状態が関与するため、この薬でインスリン抵抗性やインスリン高値を改善できれば、卵胞の発育障害の改善につながると考えられるのです。実際の臨床試験でも、他の排卵誘発薬との併用により排卵や妊娠率の向上が報告されます。

【薬理】

肝臓での糖新生抑制、末梢での糖利用促進、腸管からの糖吸収抑制の3つの作用により血糖を下げます。これらは膵外作用であり、膵β細胞のインスリン分泌を介しません。

  • 糖新生抑制:肝臓での糖の生成が抑制されます。
  • 糖利用促進:筋肉、脂肪組織など末梢での糖分の利用を促進します。
  • 糖吸収抑制:小腸における糖分の吸収が抑制されます。
特徴
  • 古くからあるビグアナイド系の血糖降下薬です。略称はBG薬。作用的にはインスリン抵抗性改善薬の部類になります。スルホニルウレア薬(SU薬)に代表されるインスリン分泌促進薬とは異なり、膵臓でのインスリン分泌を介することなく血糖降下作用を発揮します(膵外作用)。この系統の特異な副作用として乳酸アシドーシスが知られています。
  • この薬の有効成分メトホルミンは、同系のなかでは乳酸アシドーシスの発現が少なく、比較的安全性が高いです。イギリスでおこなわれた大規模長期臨床試験で良好な成績が得られたことから、欧米では2型糖尿病の第一選択薬として広く用いられています。日本では、乳酸アシドーシスの問題から用法用量に制限がくわえられ長い間ほとんど使われませんでしたが、近年また見直されています。
  • 2010年、メトグルコ錠が新薬として改めて承認されました。海外での使用実績をふまえ、従来のメトホルミンの用法・用量を大きく見直し、高用量処方を可能としたものです。それまでの1日最大用量750mg に対し、1日維持用量として750〜1500mg、1日最大用量として2250mg の処方が可能となり、また食後に加え食直前の服用が認められています。
  • 体重増加を助長しないことから、とくに肥満型の2型糖尿病に好んで用いられます。SU薬やDPP-4阻害薬など他の血糖降下薬と併用されることもたいへん多くなりました。
  • 2022年に不妊治療に関わる効能が新たに認められました。多嚢胞性卵巣症候群のある患者さんに対する一般不妊治療における排卵誘発の際、他の排卵誘発薬と併用します。また、生殖補助医療における調節卵巣刺激の際も、他の卵巣刺激薬との併用投与が推奨されています。
注意
【診察で】
  • 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
  • 妊娠中または妊娠している可能性のある人は申し出てください。妊娠中は服用禁止です。
  • もし、体調が悪ければ、そのことも伝えてください(発熱、食欲がない、下痢をしている・・など)
  • 飲み合わせに注意する薬がたくさんあります。服用中の薬は、すべて報告しておきましょう。
  • 注意事項や副作用、また、体調が悪いときの飲み方「シックデイルール」などについて十分説明を受けてください。とくに乳酸アシドーシスと低血糖時の対処法について、ご家族も含めて理解を深めておくことが大切です。
  • 治療中に低血糖症を起こした場合は、必ず医師に報告してください。
  • CT検査や心臓カテーテル検査をふくめX線造影検査(レントゲン)を行うさいは、服薬の継続について相談しておきましょう。

【注意する人】

インスリン注射が適用となる1型糖尿病や、インスリン分泌能力が著しく低下している重い糖尿病には向きません。また、乳酸アシドーシスや低血糖を起こす可能性が高い場合は処方を控えることがあります。たとえば、重い腎臓病や肝臓病または心臓病のある人、あるいは下痢が続くなど体調がひどく悪いときなどです。中等度までの腎障害であれば使用可能ですが、低用量から開始するなど慎重に用いる必要があります。造影剤を用いて検査を行うさいは、一時休薬しなければなりません。

  • 適さないケース..乳酸アシドーシスになったことのある人、腎臓が相当に悪い人、透析を受けている人、重い肝臓病、重い心臓病や肺の病気、アルコール摂取量の多い人、脱水症、脱水症の危険性が高い激しい下痢や嘔吐、重症ケトーシス、糖尿病性昏睡、1型糖尿病、重い外傷や感染症、手術前後,、脳下垂体機能不全、副腎機能不全、栄養不良状態、衰弱状態、妊娠中、ヨード造影剤使用時など。
  • 注意が必要なケース..腎臓病、肝臓病、感染症、高齢の人、不規則な食事や食事摂取量の不足、発熱、下痢や嘔吐で脱水症が心配されるとき、激しい筋肉運動をおこなう人など。

【飲み合わせ・食べ合わせ】

飲み合わせによっては、この薬の作用が強まり、乳酸アシドーシスや低血糖の副作用がでやすくなります。逆に効果が弱くなってしまうケースもあります。他の薬との併用は、医師の判断で慎重に行わなければなりません。

  • スルホニルウレア薬をはじめとする他の血糖降下薬と併用するときは、低血糖の発現に十分注意する必要があります。ほかにも血糖降下作用を強める薬剤として、解熱鎮痛薬(アスピリンなど)、血圧や心臓の薬(β遮断薬、ACE阻害薬など)、胃薬のシメチジン(タガメット)などがあげられます。
  • 血糖降下作用を弱める薬には、ホルモン剤(副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモン、女性ホルモンなど)、利尿薬、結核の薬(イソニアジド)、安定剤(フェノチアジン系)などがあります。
  • 利尿薬や利尿作用をもつ血糖降下薬のSGLT2阻害薬(スーグラなど)と併用する場合は、脱水症の発現に注意が必要です。脱水は乳酸アシドーシスを起こしやすくします。利尿薬は高血圧の薬としても広く用いられていて、いっしょになるケースが少なくありません。
  • 緊急時は別として、ヨード造影剤を使用して造影検査(レントゲン)を行うさいは、一時的に服薬を中止することになります。とくに大量の造影剤を用いる心臓カテーテル検査などにおいては適切な対応が必要です。服用再開は検査後2日目以降にします。
  • 過度のアルコール摂取は避けなければなりません。アルコールは乳酸アシドーシスの危険要因です。また、血糖値を乱し、ときに低血糖発作を誘発します。飲酒を希望するなら、医師とよく相談のうえにしましょう。

【使用にあたり】
  • 症状によって、飲む量や飲み方が違います。決められた服用量、服用回数を厳守してください。一般的には、少量より開始し、副作用や血糖値に注意しながら慎重にゆっくりと増量していきます。不妊治療の場合は、指示されたスケジュール通りに服用ください。
  • 万一飲み忘れたら、その1回分は抜かしてください。絶対に、2回分を1度に飲んではいけません。
  • 体調が悪く食事がとれていないとき、下痢や嘔吐、発熱時、あるいは激しい運動の前後、疲労のひどいときなどは、薬の量を減らしたり休薬したほうがよいことがあります。このようなときの飲み方や対処法(シックデイルール)をしっかり守りましょう。
  • 低血糖症に注意してください。症状は副作用の項にあります。症状があらわれたら、すぐ糖分をとってください。吸収のいい砂糖がおすすめです。10〜20gをとりましょう。そのほか甘いジュースでもかまいませんが、アメ玉は溶けるのに時間がかかるので向きません。なお、αグルコシダーゼ阻害薬(グルコバイ、ベイスン、セイブル等)を併用している場合は、病院から渡されるステイックシュガー(ブドウ糖)にしてください。糖分を十分とれば15分くらいで治ってきます。外出のさいも持ち歩きましょう。
  • 万一の重い低血糖症にそなえ、糖尿病手帳やカードを身に付けるとよいでしょう。
  • 低血糖には注意が必要ですが、こわがりすぎて血糖値を高いままにしてはいけません。

【検査】

定期的に血糖値やHbA1c、腎機能や肝機能検査、その他必要な検査を受け、効果や副作用をチェックするようにしましょう。

【妊娠授乳】

妊娠中は飲み薬ではなく、インスリン注射薬による治療をおこないます。

【食生活】
  • 低血糖によるめまいやふらつきを起こすおそれがあります。車の運転や高所での危険な作業などには十分注意しましょう。
  • 脱水により乳酸アシドーシスの副作用がでやすくなります。発熱、下痢、嘔吐、食事が十分にとれないなどで 脱水の心配があるときは、いったん服用を中止し、すぐに医師と相談してください。
  • アルコールも乳酸アシドーシスの危険要因です。また、血糖値を乱し、ときに低血糖発作を誘発します。できるだけ控えてください。飲酒を希望するなら、医師とよく相談のうえにしましょう。
  • この薬を飲みはじめても、食事療法や運動療法をきちんと続けるようにしてください。

【備考】
  • 2型糖尿病では、食事療法や運動療法がとても大切です。アメリカでおこなわれた「糖尿病予防プログラム(DPP)」でも、その重要性が示されています。糖尿病の一歩手前の人(IGT)約3200人を、@プラセボ(にせ薬)を飲む人、A糖尿病治療薬のメトホルミンを飲む人、B食生活を改善する人(強化食事・運動療法)の3つのグループに分け、糖尿病の発症予防効果を比較した試験です。試験の結果、もっとも予防効果があったのはBの「食生活を改善するグループ」でした。
  • 2型糖尿病や境界型の人は、まず食事療法や運動療法からはじめます。医師や栄養士とよく相談のうえ、自分に適したやりかたで日々続けることが大切です。このような基本療法だけで血糖値が十分に下がれば薬を使う必要はありません。けれど不十分な場合は、飲み薬やインスリン注射による薬物治療が必要となってきます。基本療法は、薬を飲みはじめても続けるようにしてください。
  • メトホルミンは別かもしれませんが、飲み薬の最終的な効果(重い合併症を防げるか、長生きできるか)は、必ずしも明確ではありません。一方、インスリン注射薬でより厳格に血糖値をコントロールすると、目の病気(網膜症)や腎臓病などの重い合併症を減らせることが証明されています。2型糖尿病でも、医師からインスリン療法をすすめられた場合は積極的に受け入れてください。
効能

【効能A】

2型糖尿病

ただし、下記のいずれかの治療で十分な効果が得られない場合に限る

  • 食事療法・運動療法のみ
  • 食事療法・運動療法に加えてスルホニルウレア剤を使用

【効能B(一部製剤)】

多嚢胞性卵巣症候群における排卵誘発、多嚢胞性卵巣症候群の生殖補助医療における調節卵巣刺激

ただし、肥満、耐糖能異常、又はインスリン抵抗性のいずれかを呈する患者に限る。
用法

【従来品(効能A)】

通常、成人はメトホルミン塩酸塩として1日量500mgより開始し、1日2〜3回食後に分割経口服用する。維持量は効果を観察しながら決めるが、1日最高服用量は750mgとする。

【メトグルコ等(効能A)】

通常、成人はメトホルミン塩酸塩として1日500mgより開始し、1日2〜3回に分割して食直前又は食後に経口服用する。維持量は効果を観察しながら決めるが、通常1日750〜1,500mgとする。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日最高服用量は2,250mgまでとする。

通常、10歳以上の小児はメトホルミン塩酸塩として1日500mgより開始し、1日2〜3回に分割して食直前又は食後に経口服用する。維持量は効果を観察しながら決めるが、通常1日500〜1,500mgとする。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日最高服用量は2,000mgまでとする。

【メトグルコ等(効能B)】
<多嚢胞性卵巣症候群における排卵誘発>

他の排卵誘発薬との併用で、通常、メトホルミン塩酸塩として500mgの1日1回経口服用より開始する。患者の忍容性を確認しながら増量し、1日服用量として1,500mgを超えない範囲で、1日2〜3回に分割して経口服用する。なお、本剤は排卵までに中止する。
<多嚢胞性卵巣症候群の生殖補助医療における調節卵巣刺激>

他の卵巣刺激薬との併用で、通常、メトホルミン塩酸塩として500mgの1日1回経口服用より開始する。患者の忍容性を確認しながら増量し、1日服用量として1,500mgを超えない範囲で、1日2〜3回に分割して経口服用する。なお、本剤は採卵までに中止する。

※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
副作用 比較的多いのは、下痢、吐き気、食欲不振や腹痛などです。このような胃腸症状は脱水症につながりますし、以下のような重篤な乳酸アシドーシスの初期症状としてあらわれることもあります。症状が強い場合は医師と連絡をとり、継続の可否を含めて指示をあおいでください。

乳酸アシドーシスはこの薬に特有な副作用で、血液中に乳酸がたまり血液が酸性になった状態です。とくに、もともと腎臓病や肝臓病、心臓病などの持病のある人、体の弱っている人、高齢の人、脱水を起こしている場合、利尿薬との併用時、また飲み始めや量を増やしたときに起こりやすいものです。胃腸症状をはじめ、けん怠感、筋肉痛、息苦しさ、過呼吸などを伴いますので、このような場合は直ちに受診してください。

そのほか、「低血糖」を起こすおそれもあります。低血糖とは、必要以上に血糖値が下がってしまう状態です。おおよそ血糖値が50mg/dl以下になると低血糖特有の症状があらわれてきます。ふるえ、さむけ、動悸、冷や汗、強い空腹感、力の抜けた感じ、目のちらつき、イライラ、ぼんやり・・といった症状です。さらに重くなると、けいれんしたり、意識を失うこともあります。すぐに糖分を補給しましょう。


【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
  • 乳酸アシドーシス..吐き気、吐く、腹痛、下痢、けん怠感、筋肉痛、手足の震え・脱力、歩けない、動悸、急激な体重減少、息苦しい、息が荒い、深く大きい呼吸、意識低下。
  • 低血糖..脱力感、ふるえ、さむけ、動悸、冷や汗、強い空腹感、頭痛、不安感、吐き気、目のちらつき、イライラ、眠気、ぼんやり、異常な言動、けいれん、昏睡(意識がなくなる)。
  • 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
  • 横紋筋融解症..手足のしびれ・こわばり、脱力、筋力低下、筋肉痛、歩行困難、赤褐色の尿。

【その他】
  • 下痢、吐き気、嘔吐、食欲不振、腹痛
  • 乳酸上昇、肝機能異常
  • 発疹、かゆみ
   概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用
  









用法用量は医師・薬剤師の指示を必ずお守りください。
すべての副作用を掲載しているわけではありません。いつもと違う「おかしいな」と感じたら早めに受診してください。
症状に合った薬が適正に処方され、また正しく使用するかぎり、重い副作用はめったに起こりません。まずは安心して、決められたとおりにご使用ください。
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