概説 |
血糖値を下げるお薬です。糖尿病の治療に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 血液中の糖分「血糖」は、膵臓から分泌されるインスリン・ホルモンで調節されます。糖尿病は、そのインスリンの量が不足したり、働きが悪くなることで血糖値が上がってしまう病気です。そのまま放置すると、手足のしびれ(神経障害)、目の病気(網膜症)、腎臓病などいろいろな合併症を引き起こします。
このお薬は、インスリンに対する体の感受性を高める作用をします。結果的に、インスリンの働きがよくなり、血糖値が下がります。おもに、2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)に用います。日々の血糖値を適切に保つことは、将来起こるかもしれないさまざまな合併症の予防につながります。

- 【薬理】

- 肝臓、筋肉、脂肪組織などのインスリン感受性を高める作用があります。結果として、肝臓での糖の産生がおさえられ、血液中の糖分は筋肉などに取り込まれます(膵外作用)。インスリンそのものの分泌を増やす作用はありません。
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特徴 |
- チアゾリジン系(グリタゾン系)の新しいタイプの糖尿病治療薬です。その作用から、「インスリン抵抗性改善薬」と呼ばれています。肥満タイプで、インスリンに対する感受性が鈍っている人に向きます。
- 単独で用いるほか、作用が違う別系統と併用することも多いです。併用療法が認められている薬には、スルホニルウレア系とグリニド系薬(オイグルコン、ダオニール、グリミクロン、アマリール、スターシス、ファスティック、グルファスト)、α-グルコシダーゼ阻害薬(グルコバイ、ベイスン、セイブル)、ビグアナイド系のメトホルミン(メルビン、グリコラン)などがあります。
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注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 妊娠中や、その可能性のある人は申し出てください。
- もし、体調が悪ければ、そのことも伝えてください(発熱、食欲がない、下痢をしている・・など)
- 服用中の薬を医師に教えてください。
- 注意事項や副作用、また、体調が悪いときの飲み方「シックデイルール」などについて十分説明を受けてください。とくに、浮腫と低血糖時の対処法については、ご家族も含めてよく知っておく必要があります。
- 膀胱がんの発症リスクについても、よく聞いておきましょう。
- 治療中に低血糖症を起こした場合は、必ず医師に報告してください。

- 【注意する人】

- 心不全、もしくはその既往歴のある人には用いません。浮腫を起こし、病状を悪化させるおそれがあるためです。狭心症や心筋梗塞など心臓に病気のある人も慎重に使用する必要があります。また、膀胱がんの治療を受けている人は飲まないでください。
- 適さないケース..心不全、重症ケトーシス、糖尿病性昏睡、1型糖尿病、重い肝臓病や腎臓病、膀胱がん、重い感染症、重い外傷、手術前後,、妊娠中。
- 注意が必要なケース..心不全発症のおそれのある狭心症や心筋梗塞・その他の心臓病、肝臓や腎臓の悪い人、脳下垂体機能不全、副腎機能不全、膀胱がんの既往、栄養不良状態、衰弱状態、不規則な食事やアルコール摂取量の多い人、激しい筋肉運動、高齢の人など。
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- インスリンを含め、他の血糖降下薬と併用するときは、低血糖の発現に注意が必要です。
- 結核の薬のリファンピシン(リファジン)は、この薬の血中濃度を半分くらいに下げてしまう可能性があります。
- アルコールは血糖値を乱し、ときに低血糖発作を誘発します。できるだけ控えてください。飲酒を希望するのなら、医師とよく相談のうえにしましょう。
 【使用にあたり】
- 症状によって、飲む量や飲み方が違います。一般的には、少量より開始し、副作用や血糖値に注意しながら慎重に増量します。
- 体調が悪く、食事がとれていないとき、下痢をしているとき、あるいは激しい運動の前後、疲労のひどいときなどは、薬の量を減らしたり休薬したほうがよいことがあります。そのようなときの対処法(シックデイルール)を医師から聞いておきましょう。
- 他の血糖降下薬と併用しているときは、低血糖(副作用の項参照)に注意しましょう。低血糖症状があらわれたら、すぐに甘いもの(糖分)をとるようにします。糖分としては、吸収の良い砂糖がおすすめで10〜20gをとるようにしてください。外出のときにも持ち歩くようにしましょう。そのほか糖分の多いジュースなどでもかまいませんが、アメ玉は溶けるのに時間がかかるので向いていません。なお、αグルコシダーゼ阻害薬(グルコバイ、ベイスン、セイブル等)を併用している場合は、病院から渡されるステイックシュガー(ブドウ糖)をとるようにしてください。糖分をとれば15分くらいで治ってきますが、早めに医師に報告することも忘れないように。
- 万一の重い低血糖症状にそなえ、糖尿病手帳やカードを身につけているとよいでしょう。
- 低血糖には注意が必要ですが、こわがりすぎて血糖値を高いままにしてはいけません。

- 【検査】

- 定期的に血糖値やHbA1C、膀胱がんに関係する尿検査、その他必要な検査を受け、効果や副作用をチェックするようにしましょう。病状によっては、腎機能や肝機能検査、心エコー、心電図検査、骨密度検査などをおこなう必要があります。

- 【妊娠授乳】

- 妊娠中は、飲み薬ではなくインスリン注射薬による治療をおこないます。このお薬は、動物実験で胎児に悪い影響をおよぼすことが示されています。
 【食生活】
- この薬の影響で、食欲が亢進し体重が増えてくることがあります。そうなってしまうと、かえって逆効果です。薬を飲みはじめても、食事療法や運動療法をきちんと続けましょう。
- 低血糖によるめまいやふらつき、さらには意識障害を起こすおそれがあります。車の運転や高所作業のさいは十分注意してください。
 【備考】
- 2型糖尿病では、食事療法や運動療法がとても大切です。アメリカでおこなわれた「糖尿病予防プログラム(DPP)」でも、その重要性が示されています。糖尿病の一歩手前の人(IGT)約3200人を、@プラセボ(にせ薬)を飲む人、A糖尿病治療薬のメトホルミンを飲む人、B食生活を改善する人(強化食事・運動療法)の3つのグループに分け、糖尿病の発症予防効果を比較した試験です。試験の結果、もっとも予防効果があったのはBの「食生活を改善するグループ」でした。
- 2型糖尿病や境界型の人は、まず食事療法や運動療法からはじめます。医師や栄養士とよく相談のうえ、自分に適したやりかたで日々続けることが大切です。このような基本療法だけで血糖値が十分に下がれば薬を使う必要はありません。けれど不十分な場合は、飲み薬やインスリン注射による薬物治療が必要となってきます。基本療法は、薬を飲みはじめても続けるようにしてください。
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効能 |
 2型糖尿病。ただし、下記のいずれかの治療で十分な効果が得られずインスリン抵抗性が推定される場合に限る。
 【効能A】
- 食事療法、運動療法のみ
- 食事療法、運動療法に加えてスルホニルウレア剤を使用
- 食事療法、運動療法に加えてα−グルコシダーゼ阻害剤を使用
- 食事療法、運動療法に加えてビグアナイド系薬剤を使用

- 【効能B】

- 食事療法、運動療法に加えてインスリン製剤を使用
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用法 |

- 【効能A】

- 通常、成人はピオグリタゾンとして15〜30mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口服用する。なお、性別、年齢、症状により適宜増減するが、45mgを上限とする。

- 【効能B】

- 通常、成人はピオグリタゾンとして15mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口服用する。なお、性別、年齢、症状により適宜増減するが、30mgを上限とする。
 【注意】
- 浮腫が比較的女性に多く報告されているので、女性に投与する場合は、浮腫の発現に留意し、1日1回15mgから投与を開始することが望ましい。
- 1日1回30mgから45mgに増量した後に浮腫が発現した例が多くみられているので、45mgに増量する場合には、浮腫の発現に留意すること。
- インスリンとの併用時においては、浮腫が多く報告されていることから、1日1回15mgから投与を開始すること。本剤を増量する場合は浮腫及び心不全の症状・徴候を十分に観察しながら慎重に行うこと。ただし、1日量として30mgを超えないこと。
- 一般に高齢者では生理機能が低下しているので、1日1回15mgから投与を開始することが望ましい。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
注意する副作用として、浮腫(むくみ)があります。とくに女性の発現率は10%以上にのぼり、さらにインスリン併用時では30%近くに達します。もともと心臓の弱い人では、心臓に負担がかかり心不全を起こすおそれもあります。手足のむくみ、急激な体重増加、息苦しさ、動悸などの症状に注意しましょう。
インスリンを含め他の血糖降下薬と併用しているときは、「低血糖」にも注意が必要です。低血糖とは、必要以上に血糖値が下がってしまう状態です。おおよそ血糖値が50mg/dl以下になると低血糖特有の症状があらわれてきます。ふるえ、さむけ、動悸、冷や汗、強い空腹感、力の抜けた感じ、目のちらつき、イライラ、ぼんやり、さらに重くなると、気が遠くなり、けいれんを起こしたり意識を失うこともあります。すぐに糖分を補給しましょう。
そのほか重い副作用として、肝機能障害や黄疸が発現する可能性があります。まれな副作用ですが、定期的に肝機能検査をおこなうなど注意が必要です。また、海外の疫学研究で、服用期間が2年以上になると、膀胱がんの発生リスクが1.4倍に増えるとの報告があります(10年間の最終解析では否定されています)。万一のことですが、服用中に血尿や頻尿、排尿痛などがあらわれたら、直ちに受診するようにしてください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 浮腫..むくみ、急激な体重増加。
- 心不全..息苦しい、息切れ、胸が苦しい、動悸、疲れやすい、むくみ、急な体重増加。
- 肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
- 低血糖..力の抜けた感じ、ふるえ、さむけ、動悸、冷や汗、強い空腹感、頭痛、不安感、吐き気、目のちらつき、イライラ、眠気、ぼんやり。さらに重くなると、異常な言動、けいれん、昏睡(意識がなくなる)。
- 横紋筋融解症..手足のしびれ・けいれん、力が入らない、筋力低下、筋肉痛、歩行困難、赤褐色の尿。
- 間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。
- 膀胱がん..血尿、頻尿、排尿痛。
 【その他】
- 肝機能値の異常
- 血圧上昇、心胸比増大、心電図異常
- 発疹、かゆみ
- 吐き気、吐く、胃の不快感、食欲亢進
- 骨密度低下、骨折
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