概説 |
血糖値を下げるお薬です。糖尿病の治療に用います。 |
作用 | 血液中の糖分「血糖」は、膵臓から分泌されるインスリン・ホルモンで調節されます。糖尿病は、そのインスリンの量が不足したり、働きが悪くなることで血糖値が上がってしまう病気です。そのまま放置すると、手足のしびれ(神経障害)、目の病気(網膜症)、腎臓病(腎症)などいろいろな合併症を引き起こします。
このお薬には、2種類の血糖降下薬が配合されています。その1つは、チアゾリジン系のピオグリタゾン(アクトス)。「インスリン抵抗性改善薬」とも呼ばれ、筋肉や脂肪組織、あるいは肝臓でのインスリンに対する感受性を高める作用をもつ薬剤です。そして、膵臓からのインスリン分泌を増やすことなく、肝臓における糖産生を抑制し、また末梢組織における糖利用を促進することで血糖を低下させます(膵外作用)。
もう1つの有効成分は、古くからあるビグアナイド系のメトホルミン(メルビン、メトグルコ)です。こちらも、インスリン抵抗性改善薬の部類で、おもに肝臓での糖分の生成を抑えることで血糖値を下げます。適応となるのは2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)、なかでも肥満型に向きます。日々の血糖値を適切に保つことは、将来起こるかもしれないさまざまな合併症の予防につながります。 |
特徴 |
- 新旧2種類のインスリン抵抗性改善薬を配合した2型糖尿病治療薬です。それぞれ作用点が異なるので、併用による多面的なインスリン抵抗性改善作用が期待できます。インスリン分泌促進作用はなく、膵臓に負担をかけません。肥満タイプで、インスリンに対する感受性が鈍っている人によい適応となります。
- 配合量の異なるLDとHDの2種類の製剤が販売されています。LDはピオグリタゾンの含量が15mgの低用量製剤、HDは30mgの高用量製剤です。メトホルミン塩酸塩の配合量はどちらも同じ500mgになります。配合剤ですので、2剤による併用療法が1日1回いずれか1錠の服薬で済みます。以前のように、別々に飲み分ける必要がありません。
- 原則として、第一選択薬とはしません。まずは、単剤での治療を優先するようにします。処方対象となるのは、1剤で効果不十分な場合、あるいは2剤以上の多剤併用をすでに行っている場合などです。
- 合併症のある人に処方しにくいのが難点です。腎臓病や肝臓病、心臓病のある人は使用できないことがあります。そのような病気があると、乳酸アシドーシスや心不全の副作用を起こしやすいためです。
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注意 |
【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 妊娠中または妊娠している可能性のある人は申し出てください。
- もし、体調が悪ければ、そのことも伝えてください(発熱、食欲がない、下痢をしている・・など)
- 飲み合わせに注意する薬がたくさんあります。服用中の薬は、すべて報告しておきましょう。
- 注意事項や副作用について十分説明を受けてください。とくに浮腫と心不全、乳酸アシドーシスと低血糖症の対処法を心得ておくことが大事です。万一にそなえ、ご家族にもよく話しておきましょう。
- 体調が悪いときの飲み方「シックデイルール」を確認してください。
- 膀胱がんの発症リスクについても説明を受け、納得のうえで治療にあたりましょう。
- 治療中に低血糖症を起こした場合は、必ず医師に報告してください。
- CT検査や心臓カテーテル検査をふくめX線造影検査(レントゲン)を行うさいは、服薬の継続について相談しておきましょう。
- 【注意する人】
- 心不全のある人は服用禁止です。膀胱がんを治療中の人も避けてください。また、副作用として、乳酸アシドーシスや低血糖を起こす可能性が高い場合は処方を控えることがあります。たとえば、重い腎臓病や肝臓病、心臓病のある人、また体の状態がひどく悪いときなどです。中等度までの腎障害であれば使用可能ですが、最初は低用量の各単剤を併用し様子をみるなど慎重に用いる必要があります。造影剤を用いて検査を行うさいは、一時休薬しなければなりません。
- 適さないケース..心不全、乳酸アシドーシスになったことのある人、重い腎臓病、重い肝臓病、重い心臓病や肺の病気、膀胱がん、アルコール摂取量の多い人、脱水症、脱水症が心配される激しい下痢や嘔吐、重症ケトーシス、糖尿病性昏睡、1型糖尿病、重い外傷や感染症、手術前後,、脳下垂体機能不全、副腎機能不全、栄養不良状態、衰弱状態、妊娠中、ヨード造影剤使用時など。
- 注意が必要なケース..心臓病、腎臓病、肝臓病、感染症、高齢の人、不規則な食事や食事摂取量の不足、激しい筋肉運動をおこなう場合など。
- 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- 飲み合わせによっては、この薬の作用が強まり、乳酸アシドーシスや低血糖の副作用がでやすくなります。逆に効果が弱くなってしまうこともあります。他の薬との併用は、医師の判断で慎重に行わなければなりません。
- 血糖降下作用を強める薬の例として、他の血糖降下薬、解熱鎮痛薬(アスピリンなど)、血圧や心臓の薬(β遮断薬、ACE阻害薬など)、胃薬のシメチジン(タガメット)などがあげられます。
- 血糖降下作用を弱める薬には、ホルモン剤(副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモン、女性ホルモンなど)、利尿薬、結核の薬のリファンピシン(リファジン)やイソニアジド、フェノチアジン系の安定剤などがあります。とくにリファンピシンは、この薬の血中濃度を半分くらいに下げてしまう可能性があります。
- 緊急時は別として、ヨード造影剤を使用して造影検査(レントゲン)を行うさいは、一時的に服薬を中止することになります。とくに大量の造影剤を用いる心臓カテーテル検査などにおいては適切な対応が必要です。服用再開は検査後2日目以降にします。
- 過度のアルコール摂取は避けなければなりません。アルコールは乳酸アシドーシスの危険要因です。また、血糖値を乱し、ときに低血糖発作を誘発します。飲酒を希望するなら、医師とよく相談のうえにしましょう。
【使用にあたり】
- 1日1回朝食後に、LDまたはHDいずれか1錠を服用します。女性は浮腫の副作用が出やすいので、低用量のLDから開始することが望ましいです。
- 体調が悪く食事がとれていないとき、下痢や嘔吐、発熱時、あるいは激しい運動の前後、疲労のひどいときなどは、薬の量を減らしたり休薬したほうがよいことがあります。このようなときの飲み方や対処法(シックデイルール)をしっかり守りましょう。
- 低血糖症に注意してください。症状は副作用の項にあります。症状があらわれたら、すぐ糖分をとってください。吸収のいい砂糖がおすすめです。10〜20gをとりましょう。そのほか甘いジュースでもかまいませんが、アメ玉は溶けるのに時間がかかるので向きません。なお、αグルコシダーゼ阻害薬(グルコバイ、ベイスン、セイブル等)を併用している場合は、病院から渡されるステイックシュガー(ブドウ糖)にしてください。糖分を十分とれば15分くらいで治ってきます。外出のさいも持ち歩きましょう。
- 万一の重い低血糖症にそなえ、糖尿病手帳やカードを身に付けるとよいでしょう。
- 低血糖には注意が必要ですが、こわがりすぎて血糖値を高いままにしてはいけません。
- 【検査】
- 定期的に血糖値やHbA1C、膀胱がんに関係する尿検査、その他必要な検査を受け、効果や副作用をチェックするようにしましょう。病状によっては、腎機能や肝機能検査、心エコー、心電図検査、骨密度検査などをおこなう必要があります。
- 【妊娠授乳】
- 妊娠中は、飲み薬ではなくインスリン注射薬による治療をおこないます。このお薬は、動物実験で胎児に悪い影響をおよぼすことが示されています。
【食生活】
- 低血糖によるめまいやふらつきを起こすおそれがあります。車の運転や高所での危険な作業などには十分注意しましょう。
- この薬を飲みはじめても、食事療法や運動療法をきちんと続けるようにしてください。
【備考】
- 2型糖尿病では、食事療法や運動療法がとても大切です。アメリカでおこなわれた「糖尿病予防プログラム(DPP)」でも、その重要性が示されています。糖尿病の一歩手前の人(IGT)約3200人を、@プラセボ(にせ薬)を飲む人、A糖尿病治療薬のメトホルミンを飲む人、B食生活を改善する人(強化食事・運動療法)の3つのグループに分け、糖尿病の発症予防効果を比較した試験です。試験の結果、もっとも予防効果があったのはBの「食生活を改善するグループ」でした。
- 2型糖尿病や境界型の人は、まず食事療法や運動療法からはじめます。医師や栄養士とよく相談のうえ、自分に適したやりかたで日々続けることが大切です。このような基本療法だけで血糖値が十分に下がれば薬を使う必要はありません。けれど不十分な場合は、飲み薬やインスリン注射による薬物治療が必要となってきます。基本療法は、薬を飲みはじめても続けるようにしてください。
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効能 |
2型糖尿病。ただし、ピオグリタゾン塩酸塩及びメトホルミン塩酸塩の併用による治療が適切と判断される場合に限る。 |
用法 |
通常、成人は1日1回1錠(ピオグリタゾン/メトホルミン塩酸塩として15mg/500mg又は30mg/500mg)を朝食後に経口服用する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
比較的多いのは、ピオグリタゾンによる浮腫(むくみ)です。とくに女性の発現率は10%以上にのぼり、さらにインスリン併用時では30%近くに達します。もともと心臓の弱い人では、心臓に負担がかかり心不全を起こすおそれもあります。手足のむくみ、急激な体重増加、息苦しさ、動悸などの症状に注意しましょう。
一方、ビグアナイド系のメトホルミンで多いのは、下痢、吐き気、食欲不振や腹痛などです。このような胃腸症状は脱水症につながりますし、以下のような重篤な乳酸アシドーシスの初期症状としてあらわれることもあります。症状が強い場合は医師と連絡をとり、継続の可否を含めて指示をあおいでください。
乳酸アシドーシスはビグアナイド系に特有な副作用で、血液中に乳酸がたまり血液が酸性になった状態です。とくに、もともと肝臓病や腎臓病、心臓病などの持病のある人、体の弱っている人、高齢の人、下痢や嘔吐で脱水状態にある場合、また薬の飲み始めや量を増やしたときに起こりやすいものです。胃腸症状をはじめ、けん怠感、筋肉痛、息苦しさ、過呼吸などを伴いますので、このような場合は直ちに受診してください。
低血糖症にも注意が必要です。低血糖とは、必要以上に血糖値が下がってしまう状態です。おおよそ血糖値が50mg/dl以下になると低血糖特有の症状があらわれてきます。ふるえ、さむけ、動悸、冷や汗、強い空腹感、力の抜けた感じ、目のちらつき、イライラ、ぼんやり・・といった症状です。さらに重くなると、けいれんしたり、意識を失うこともあります。すぐに糖分を補給しましょう。
そのほか重い副作用として、肝機能障害や黄疸が発現する可能性があります。まれな副作用ですが、定期的に肝機能検査をおこなうなど注意が必要です。また、海外の疫学研究で、服用期間が2年以上になると、膀胱がんの発生リスクが1.4倍に増えるとの報告があります(10年間の最終解析では否定されています)。万一のことですが、服用中に血尿や頻尿、排尿痛などがあらわれたら、直ちに受診するようにしてください。
【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 浮腫..むくみ、急激な体重増加。
- 心不全..疲れやすい、息苦しい、息切れ、むくみ、急な体重増加、痰、ゼィゼィ、咳、頻脈。
- 乳酸アシドーシス..吐き気、吐く、腹痛、下痢、けん怠感、筋肉痛、手足の震え・脱力、歩けない、動悸、急激な体重減少、息苦しい、息が荒い、深く大きい呼吸、意識低下。
- 低血糖..力の抜けた感じ、ふるえ、さむけ、動悸、冷や汗、強い空腹感、頭痛、不安感、吐き気、目のちらつき、イライラ、眠気、ぼんやり。さらに重くなると、異常な言動、けいれん、昏睡(意識がなくなる)。
- 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
- 横紋筋融解症..手足のしびれ・こわばり、脱力、筋力低下、筋肉痛、歩行困難、赤褐色の尿。
- 間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。
- 膀胱がん..血尿、頻尿、排尿痛。
【その他】
- 下痢、吐き気、嘔吐、腹痛、食欲不振、食欲亢進
- 血圧上昇、心胸比増大、心電図異常
- 乳酸上昇、肝機能異常
- 発疹、かゆみ
- 骨密度低下、骨折
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