概説 |
炎症をを抑えるお薬です。関節リウマチや乾癬の治療に用います。 |
作用 |
- 【働き-1】
- リウマチは、体の免疫系がかかわっている膠原病の一種です。関節に強い炎症を生じ、腫れや痛みをともないます。やがて、関節の骨や軟骨が破壊され、変形とともにその機能が失われます。
このお薬は抗リウマチ薬です。免疫系の亢進状態を強力におさえ炎症をしずめます。そして、関節の破壊をくい止め病気の進行を遅らせることができるのです。おもに関節リウマチに用いられますが、関節症状をともなう若年性の特発性関節炎にも適応します。
実際の臨床効果にも優れ、はっきりとした効果が1〜2カ月であらわれます。重症の患者さんでも半分以上の人に効果(ACR20)がみられ、2割くらいはほぼ寛解(ACR70)します。従来の抗リウマチ薬が効かない重症例に向きますが、最近では関節破壊を阻止する意味合いから発症早期から使用されることが多くなりました。
- 【働き-2】
- 乾癬は皮膚に炎症を起こす病気で、病型により いくつかのタイプに分かれます。代表的なのは皮膚の紅斑と鱗屑(りんせつ)を特徴とする‘尋常性乾癬’、皮膚症状に加え炎症性関節炎をともなう‘関節症性乾癬’です。いずれも慢性に推移し、よくなったり悪くなったりを繰り返すことが多いです。
このお薬は、そのような乾癬に有効です。炎症にかかわる炎症性サイトカインの産生をおさえるなどして、皮膚や関節の炎症反応をしずめます。適応症は、尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症です。通常、軽症例には使いません。外用剤による局所療法で効果不十分な場合、あるいは関節炎を伴うなど中等症以上の患者さんに用います。
- 【薬理】
- 免疫機能や炎症にかかわる 免疫グロブリンや炎症性サイトカインのインターロイキンなどの産生をおさえ、さらに滑膜組織や軟骨組織の破壊にかわるコラゲナーゼ産生を抑制します。また、異常な血管新生や滑膜増生を抑制する作用も持ち合わせています。
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特徴 |
- 関節リウマチの世界的な標準薬です。疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)のうちの免疫抑制薬の部類になります。抗リウマチ薬としては、効果の発現が1〜2カ月と比較的早く、有効率もかなり高いです。関節リウマチの基礎薬「アンカードラッグ」として第一選択されるようになりました。
- 2019年、関節リウマチに加え 乾癬に対する適応が追加承認されました。海外では、以前から 乾癬治療における第一選択薬、または標準治療薬の一つとして使用され実績が豊富です。
- 主成分のメトトレキサートは、もとは抗がん薬(葉酸代謝拮抗薬)として認可された歴史ある薬剤です。関節リウマチのほか、膠原病、胞状奇胎、また、比較的大量を白血病やリンバ腫の治療に用いることがあります。
- 免疫抑制薬と抗がん薬としての横顔があり、他の正常な細胞に少なからず悪影響します。骨髄抑制や肝障害、肺障害、腸炎、感染症などいろいろな副作用がでやすいのです。ここに、この薬の難しさがあります。
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注意 |
【診察で】
- 持病や病歴を医師に伝えておきましょう。
- 服用中の薬を医師に教えてください。
- 妊娠中や授乳中の女性は申し出てください。また、男性を含め、妊娠出産の予定のある人は事前に医師と相談するようにしましょう。
- 副作用や注意事項について、医師から十分説明を受けてください。薬の性質をよく理解し、納得のうえで使用するようにしましょう。
- 飲みかたが変則的になります。医師または薬剤師から服用スケジュールを確認してください。
- 体に異常を感じたら、どのようなことでも医師に報告するようにしてください。
- 【注意する人】
- 病気によっては、その病状を悪化させるおそれがあります。肝臓や腎臓の悪い人は、副作用がでやすいので使用できないことがあります。また、ウイルス性肝炎を含め、感染症を合併している人は慎重に用いる必要があります。妊娠中は使用できません。
- 適さないケース..肝臓や腎臓の悪い人、骨髄抑制、胸水・腹水のある人、結核、妊娠中もしくはその可能性のある人、授乳中の人など。
- 注意が必要なケース..間質性肺炎など肺の病気または既往歴のある人、感染症、結核にかかったことのある人、B型またはC型肝炎ウイルスをもっている人、高齢の人など。
- 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- 鎮痛薬や抗生物質など、飲み合わせによっては、この薬の作用が強まり、副作用がでやすくなります。服用中の薬は必ず医師に報告しておきましょう。また、別の病院で診察を受けるときも、この薬を飲んでいることを伝えてください。
- 作用を増強する薬剤として、鎮痛薬(NSAIDs)や抗生物質、抗菌薬、ST合剤(バクタ)、フェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、フェノバルビタール(フェノバール)、プロベネシド(ベネシッド)、レフルノミド(アラバ)、プロトンポンプ阻害薬(オメプラール、オメプラゾン、タケプロン、パリエット、ネキシウム等)などがあります。
- 生ワクチンの予防接種は避けてください。
- アルコールは肝臓の副作用をでやすくします。飲酒は、できるだけ控えましょう。
- タバコを吸う人は、肺の副作用がでやすいといわれます。できるだけ控えてください。
【使用にあたり】
- 決められた飲み方を厳守してください。薬のシートに服薬日が書いてあるはずです。休薬期間(薬を飲まない期間)が必要な特殊な薬剤ですから、服薬日、時間、休薬日に十分留意し、正確に服用しましょう。リウマチの治療には比較的少量を用いますが、誤って多く飲みすぎると重い副作用があらわれます。
- 体を起こして、十分な水で飲みましょう。寝たまま飲むと、薬が食道に停滞し、粘膜を荒らすおそれがあります。とくに、高齢の人は注意してくださてい。
- 副作用の予防にビタミンの一種の葉酸(フォリアミン錠)と併用することがあります。1〜2日後に服用するのが一般的です。
- 十分な効果がでるまでに、1〜2カ月かかります。指示された期間続けるようにしましょう。
- 【検査】
- 治療に先立ち、服薬に問題がないか慎重に調べます。必要な検査は、血液検査、肝機能検査、腎機能検査、尿検査、肝炎ウイルスの検査などです。さらに、結核の有無を確認するために、胸部レントゲンやインターフェロン-γ遊離試験またはツベルクリン反応検査をおこなう必要があります。治療開始後も、定期的に同様の検査をおこない、効果や副作用をチェックするようにします。
- 【妊娠授乳】
- おなかの赤ちゃんに悪い影響を及ぼすおそれがあります(催奇形性を疑う症例報告)。そのため、治療中は妊娠を避ける必要があります。
- 女性..妊娠中やその可能性のある場合、および授乳中の女性は服用禁止です。また、服薬中および服薬終了後少なくとも1月経周期は妊娠を避けなければなりません。
- 男性..服薬中および服薬終了後少なくとも3カ月間は配偶者の妊娠を避けるようにします。
【食生活】
- 人によっては皮膚が日光に敏感になり、日焼けしやすくなります。強い直射日光は、できるだけ避けたほうがよいでしょう。
- アルコールとタバコはできるだけ控えましょう。肝臓や肺によくありません。
【備考】
- 関節リウマチの治療目標は、関節の破壊をおさえ その機能を維持すること、さらには生命予後を改善することです。そのためには、発症早期から抗リウマチ薬による十分な治療が必要です。最近は、メトトレキサート(この薬)や生物学的製剤(注射)などによる強力な治療が積極的におこなわれるようになりました。
- 抗リウマチ薬の効きかたには個人差があります。劇的に効く人もいれば、逆にまったく効果がないこともあります。ですから、半年くらい使用しても効果がまったくない場合は、別の薬に切り替えなければなりません。その人にもっとも適した薬を選ぶことが重要です。
- リウマチそのものを治せる薬はありません。関節リウマチの治療では、いくつかの薬を長期間使用することになります。有益性と副作用について正しく理解したうえで、薬と上手につきあっていってください。きちんと治療を続ければ、病気の進行を止めたり遅らせることが十分可能です。
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効能 |
- 【効能A】
- 関節リウマチ
- 【効能B】
- 局所療法で効果不十分な尋常性乾癬、乾癬性関節炎、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症
- 注意:以下のいずれかを満たす患者に投与すること。
(1)ステロイド外用剤等で十分な効果が得られず、皮疹が体表面積の10%以上に及ぶ患者
(2)難治性の皮疹、関節症状又は膿疱を有する患者
- 【効能C】
- 関節症状を伴う若年性特発性関節炎
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用法 |
- 【効能A・B】
- 通常、1週間単位の服用量をメトトレキサートとして6mgとし、1週間単位の服用量を1回又は2〜3回に分割して経口服用する。分割して服用する場合、初日から2日目にかけて12時間間隔で服用する。1回又は2回分割服用の場合は残りの6日間、3回分割服用の場合は残りの5日間は休薬する。これを1週間ごとに繰り返す。なお、患者の年齢、症状、忍容性及び本剤に対する反応等に応じて適宜増減するが、1週間単位の服用量として16mgを超えないようにする。
- 注意(1):4〜8週間服用しても十分な効果が得られない場合にはメトトレキサートとして1回2〜4mgずつ増量する。増量する前には、患者の状態を十分に確認し、増量の可否を慎重に判断すること。
- 注意(2):服用量を増量すると骨髄抑制、感染症、肝機能障害等の副作用の発現の可能性が増加するので、定期的に臨床検査値を確認する等を含め患者の状態を十分に観察すること。消化器症状、肝機能障害等の副作用の予防には、葉酸の服用が有効であるとの報告がある。
- 【効能C】
- 通常、1週間単位の服用量をメトトレキサートとして4〜10mg/m2とし、1週間単位の服用量を1回又は2〜3回に分割して経口服用する。分割して服用する場合、初日から2日目にかけて12時間間隔で服用する。1回又は2回分割服用の場合は残りの6日間、3回分割服用の場合は残りの5日間は休薬する。これを1週間ごとに繰り返す。なお、患者の年齢、症状、忍容性及び本剤に対する反応等に応じて適宜増減する。
- 注意(1):本剤の服用にあたっては、特に副作用の発現に注意し、患者の忍容性及び治療上の効果を基に、個々の患者の状況に応じて、服用量を適切に設定すること。
- 注意(2):本剤については、成人の方が小児に比べ忍容性が低いとの報告があるので、若年性特発性関節炎の10歳代半ば以上の年齢の患者等の服用量については特に注意すること。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
効果が高い反面、いろいろな副作用がでやすいです。あわてないよう、事前に医師から十分説明を受けておきましょう。重症なものは多くありませんが、下記の初期症状等に留意し、いつもと違う体調の変化に気づいたらすぐ医師に連絡してください。
とくに注意が必要なのは、骨髄抑制にともなう血液障害、肺障害、肝障害、腎障害、腸炎、それとウイルス肝炎や結核をふくめ各種の感染症です。異常なだるさ、皮下出血など出血傾向、発熱やのどの痛み、咳や息切れ、皮膚や白目が黄色くなる、口内炎、腹痛、下痢といった症状に注意してください。予防のために、頻回な検査が欠かせません。
【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- アナフィラキシー・ショック..じんま疹、全身発赤、顔や喉の腫れ、ゼーゼー息苦しい、冷汗、顔が白くなる、手足のしびれ、脈が弱い、血圧低下、目の前が暗くなり意識が薄れる。
- 重い血液成分の異常..発熱、喉の痛み、口内炎、だるい、皮下出血(血豆・青あざ)や鼻血・歯肉出血など出血傾向。
- 重い感染症..発熱、寒気、だるさ、食欲不振、のどの痛み、咳や痰、息苦しい、嘔吐、下痢、皮膚発赤・小水疱・ピリピリ痛い、水ぶくれ、できもの。
- 結核..持続する咳、発熱、微熱が続く。
- 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
- 腎臓の重い症状..尿が少ない・出ない、尿の濁り・泡立ち、血尿、むくみ、だるい、吐き気、側腹部痛、腰痛、発熱、発疹。
- 間質性肺炎など肺障害..息切れ、息苦しさ、咳、痰、発熱。
- 重い皮膚・粘膜障害..発疹、発赤、水ぶくれ、うみ、皮がむける、皮膚の熱感や痛み、かゆみ、唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血、発熱、全身けん怠感。
- 腸炎..激しい腹痛、下痢、下血(血液便、黒いタール状の便)。
- 膵炎..吐き気、吐く、持続的な激しい腹痛、上腹部または腰から背中の激痛、発熱。
- 骨粗鬆症..骨がもろくなる、背中や足腰の痛み、骨折。
- 白質脳症..頭痛、もの忘れ、ボーとする、歩行時のふらつき、手足のしびれ・まひ、うまく話せない、動作がにぶる、けいれん、二重に見える、見えにくい。
【その他】
- 吐き気、食欲不振、腹痛、下痢、口内炎
- 頭痛、脱毛
- 発疹、かゆみ、光線過敏症
- 腎機能・肝機能値の異常
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