概説 |
ニーマン・ピック病C型を治療するお薬です。 |
作用 | 
- 【働き】

- ニーマン・ピック病C型は、脳や末梢組織の特定の細胞内にスフィンゴ糖脂質などの脂質が蓄積することによって引き起こされる遺伝性の病気です。神経変性をともない、異常な眼球運動、飲み込み困難、不自然な体の動き、歩行機能の低下、精神遅滞など広範な神経症状があらわれます。発病率はきわめて低いものの、幼くして発病し、進行性で予後は好ましくありません。
このお薬は、そのようなニーマン・ピック病C型の治療薬として開発されました。スフィンゴ糖脂質の生合成経路における第一段階であるグルコシルセラミド合成酵素活性を阻害することにより、神経細胞内へのスフィンゴ糖脂質の蓄積を減少させます。これにより神経症状が改善し、病気の進行がおさえられることになるのです。

- 【臨床試験】

- ニーマン・ピック病C型の患者さんをクジ引きで分け、20人はこの薬を使用し、別の9人は使用しないでそれまでの治療を続けます。そして、1年後の両者の病状の変化を比較することで、この薬の有効性を検証します。有効性を判定する主要評価項目は、衝動性眼球運動速度の変化量です。
その結果、この薬を使用していた人達の眼球運動速度は平均0.43減少(改善)したのに対し、使用しなかった人達は0.07増加(悪化)しました。眼球運動速度はニーマン・ピック病C型の典型的な症状のひとつである眼球運動障害の程度を客観的に示す指標で、数値の減少は改善を意味します。さらに別の副次評価項目として、飲み込みや歩行機能、認知機能なども、この薬を使用していたほうが改善もしくは維持される傾向が高いことが示されました。
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特徴 |
- 植物や微生物から抽出されるポリヒドロキシ化アルカロイド(イミノ糖)に属する合成誘導体です。スフィンゴ糖脂質の生合成経路において、グルコシルセラミド合成酵素を阻害する作用をもつことから、グルコシルセラミド合成酵素阻害薬とも呼ばれます。
- ニーマン・ピック病C型に適応を持つ世界で唯一の薬剤です。同適応のほかゴーシェ病 I 型の治療薬としても各国で承認されています。国内でも、患者団体からの早期承認の要望を受け、厚生労働省により医療上の必要性の高い希少疾病用医薬品に指定され、その開発が促進されました。
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注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 妊娠中もしくはその可能性のある人は、医師に申し出てください。
- 注意事項や副作用について、ご本人、できたらご家族も含め、事前によく説明を受けておきましょう。

- 【注意する人】

- 腎臓病や肝臓病、下痢や腹痛など胃腸障害のある人は慎重に用いる必要があります。この薬により、それらの病状が悪化するおそれがあるためです。妊娠中は禁止です。
- 適さないケース..妊娠中もしくはその可能性のある人。
- 注意が必要なケース..腎臓病、肝臓病、胃腸障害のある人など。
 【使用にあたり】
- 決められた飲み方を守ってください。通常、大人は1回2カプセル(200mg)を1日3回服用します。子供は体表面積にあわせて、服用量が決められます。腎臓の働きが落ちている場合は、その機能に応じて減量することがあります。
- 自分だけの判断でやめてはいけません。継続の可否は、医師により半年ないし1年毎に有用性を評価したうえで決められます。一般的には長期服用となります。

- 【検査】

- 処方に先立ち、服用に問題がないかを慎重に調べます。必要な検査は、神経学的検査、血液検査、肝機能・腎機能検査、体重測定などです。服用開始後も、効果や副作用をチェックするため、定期的に各種検査を受けなければなりません。

- 【妊娠・授乳】

- 妊娠中は使用できません。妊娠(受胎)を希望する場合は、男女ともに医師と相談してください。
 【食生活】
- 下痢が続く場合、食事の内容を見直すように指示されるかもしれません。炭水化物を多く含む食事を控えることで、下痢や鼓腸などの胃腸症状が軽減されると思います。
- めまいを起こすことがあります。車の運転など危険を伴う機械の操作、高所での危険な作業は避けましょう。
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効能 |
ニーマン・ピック病C型 |
用法 |
通常、成人は、1回200mgを1日3回経口服用する。小児は、下記の通り体表面積に基づき用量を調整して経口服用する。なお、患者の状態に応じて適宜減量する。
- 体表面積(m2):0.47以下..用量:1回100mg、1日1回
- 体表面積(m2):0.47を超え0.73以下..用量:1回100mg、1日2回
- 体表面積(m2):0.73を超え0.88以下..用量:1回100mg、1日3回
- 体表面積(m2):0.88を超え1.25以下..用量:1回200mg、1日2回
- 体表面積(m2):1.25を超える..用量:1回200mg、1日3回
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
一番多いのは、下痢や鼓腸、腹痛などの胃腸症状です。続けているうちに軽減することが多いのですが、ひどい下痢が続く場合は早めに受診してください。食事内容の見直し、服用時期を食事時間から離す、いったん減量後に徐々に増量するといった処置により、多くの場合継続応可能です。
そのほか、ふるえ、体重減少、食欲減退などもみられます。はっきりした因果関係は分かりませんが、服薬初期に体重増加の抑制や成長の遅延が報告されています。体重の増加が思わしくないなど、子供の成長が気になるときは、医師とよく相談してみましょう。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
 【その他】
- 下痢、おなかの張り、ゴロゴロ、腹痛、吐き気、吐く
- 体重減少、食欲減退
- 手足のふるえ、しびれ感、ピリピリ感、筋けいれん、筋力低下
- 頭痛、めまい
- 血小板数減少
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