概説 |
関節の腫れや痛みを抑えるお薬です。関節リウマチの治療に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- リウマチは、体の免疫系がかかわっている膠原病の一種です。関節に強い炎症を生じ、腫れや痛みをともないます。やがて、関節の骨や軟骨が破壊され、変形とともにその機能が失われます。
このお薬は、抗リウマチ薬です。免疫の亢進状態を抑制し、関節の炎症をしずめ腫れや痛みを軽くします。病気の進行がおさえられる可能性もあります。単独で使用するほか、標準薬のメトトレキサート(リウマトレックス)との併用で いっそうの効果が望めます。

- 【薬理】

- 免疫機能や炎症にかかわる さまざまな体内物質をおさええることで、抗リウマチ作用を発揮します。具体的には、炎症性サイトカインのTNFα、IL-1β、IL-6、IL-8、MCP-1、さらにはB細胞による免疫グロブリンのIgGやIgMの産生を抑制する作用があります。

- 【臨床試験】

- 活動性のリウマチの患者さん376人を3つのグループに分け、この薬と、既存の類似薬のサラゾスルファピリジン(アザルフィジン)、それとプラセボ(にせ薬)の効果を比較する臨床試験が行われています。プラセボを上回る効果があるのか、またサラゾスルファピリジンに劣らない効果があるのかを調べるのが目的です。効果の判定は6ヶ月後のACR20改善率でおこないます。ACR20は、腫れのある関節数が20%以上減少し、その他いくつかの評価項目が20%以上よくなった場合に“改善”とする判定基準です。
その結果、この薬を飲んでいた人達のACR20にもとづく改善率は54%(71/132人)、プラセボの人達で17%(11/64人)でした。この薬を飲んだ半分以上の人が改善したのに対し、プラセボの人達では2割以下だったわけです。また、医師の評価による最終全般改善率でもサラゾスルファピリジンに劣らない同等の有効性が示されました。さらに、標準薬のメトトレキサートで効果不十分な患者さんを対象とした別の臨床試験において、この薬を追加併用した場合は70%(114/164人)の人が改善したのに対し、プラセボとの併用では31%(27/88人)の改善率にとどまりました。
|
特徴 |
- 疾患修飾性抗リウマチ薬のうちの免疫調整薬の仲間です。化学構造上は、既存の抗リウマチ薬とは異なるクロモン骨格から成ります。免疫調整薬の部類は、正常の免疫能には影響せず異常な免疫機能を正常化することで抗リウマチ作用を発揮します。メトトレキサートのようにすべての免疫機能を非特異的に抑制する免疫抑制薬とは異なり、感染症の心配もまずありません。
- 類似薬のサラゾスルファピリジンと同等の有効性が示され、また標準薬のメトトレキサートとの併用効果も認められています。処方の対象となるのは、発症早期で症状が比較的軽い場合です。またメトトレキサートが副作用で使用できない場合の代替薬として、あるいはメトトレキサート単独で効果不十分な患者さんに追加併用することも有用と考えられます。
|
注意 |
 【診察で】
- 持病や病歴を医師に伝えておきましょう。
- 市販薬をふくめ服用中の薬を医師に教えてください。
- 妊娠中または授乳中の女性は申し出てください。
- 注意事項や副作用について医師から説明を受けておきましょう。

- 【注意する人】

- 病気によっては、その病状を悪化させるおそれがあります。とくに重い肝臓病や胃潰瘍のある人は使用しないようにします。また、体重の軽い人は副作用がでやすいので慎重に用いる必要があります。妊娠中は禁止です。
- 適さないケース..重い肝臓病、消化性潰瘍のある人、妊娠中もしくはその可能性のある人。
- 注意が必要なケース..肝臓病、腎臓病、消化性潰瘍の既往、骨髄機能低下、貧血、白血球減少症、血小板減少症などがある人、低体重(40kg未満)、授乳中の人、高齢の人など。
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- 抗血栓薬のワルファリン(ワーファリン)とは併用禁止です。併用により出血の危険性が高まるためです。ワルファリンによる抗凝固療法をおこなっている場合は、原則ワルファリンを優先し、この薬を避けてください。
- 消炎鎮痛薬と飲み合わせると胃腸障害の副作用がでやすくなります。併用する場合は、消化性潰瘍の発現に十分注意する必要があります。
- 胃薬のシメチジン(タガメット)との併用により、この薬の血中濃度が上昇し副作用が増強するおそれかあります。逆に、フェノバルビタール(フェノバール)と飲み合わせると、この薬の血中濃度が低下する可能性があります。
 【使用にあたり】
- 決められた飲み方を厳守してください。通常、肝臓の副作用を避けるため、はじめの1ヵ月間は少なめにします。当初の服用量は1日1回朝食後に1錠です。その後増量し1日2回朝夕食後の服用となります。
- よい効果がでるまでに4ヵ月くらいかかることがあります。途中でやめないで、指示どおり飲み続けましょう。

- 【検査】

- 処方に先立ち、服用に問題がないか慎重に調べます。必要な検査は、血液検査、肝機能検査、腎機能検査などです。服用開始後も、副作用や効果をチェックするため、定期的に各種の検査を受けなければなりません。とくに飲み始めの2ヵ月間は、2週間ごとにおこないます。
 【妊娠・授乳】
- 動物実験で催奇形作用が報告されています。妊娠中は使用できません。妊娠を希望するときは、事前に医師と相談しておきましょう。
- 乳汁中へ薬が移行する可能性があります。授乳中に服用する場合には授乳を避けてください。
 【備考】
- 関節リウマチの治療目標は、関節の破壊をおさえ その機能を維持すること、さらには生命予後を改善することです。そのためには、発症早期から抗リウマチ薬による十分な治療が必要です。最近は、メトトレキサート(リウマトレックス)や生物学的製剤(注射)などによる強力な治療が積極的におこなわれるようになりました。
- 抗リウマチ薬の効きかたには個人差があります。劇的に効く人もいれば、逆にまったく効果がないこともあります。ですから、半年くらい使用しても効果がまったくない場合は、別の薬に切り替えなければなりません。その人にもっとも適した薬を選ぶことが重要です。
- リウマチそのものを治せる薬はありません。関節リウマチの治療では、いくつかの薬を長期間使用することになります。有益性と副作用について正しく理解したうえで、薬と上手につきあっていってください。きちんと治療を続ければ、病気の進行を止めたり遅らせることが十分可能です。
|
効能 |
関節リウマチ |
用法 |
通常、成人はイグラチモドとして、1回25mgを1日1回朝食後に4週間以上経口服用し、それ以降、1回25mgを1日2回(朝食後、夕食後)に増量する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
|
副作用 |
比較的多いのは、吐き気や嘔吐、腹痛、めまい、発疹などです。また検査でよくみつかるのが肝機能値の異常です。重症化することはまれですが、肝機能障害にともない 全身けん怠感、発熱、皮膚や白目が黄色くなるといった症状があらわれることがありますので、念のため注意してください。
消化性潰瘍もまれにみられる副作用です。とくに胃潰瘍や十二指腸潰瘍の既往歴のあるる人は要注意。万一、吐血や下血などがあらわれた場合は、医師と連絡をとるようにしてください。そのほか、頻度は低いものの、血液障害や間質性肺炎の報告があります。メトトレキサートとの併用時は感染症の発現にも注意が必要です。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
- 重い血液成分の異常..発熱、喉の痛み、口内炎、だるい、皮下出血(血豆・青あざ)や鼻血・歯肉出血など出血傾向。
- 消化管潰瘍..胃痛、腹痛、下血(黒いタール状の血液便)、吐血(コーヒー色のものを吐く)。
- 間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。
- 重い感染症..発熱、寒気、だるさ、食欲不振、のどの痛み、咳や痰、息苦しい、嘔吐、下痢、皮膚発赤・小水疱・ピリピリ痛い、水ぶくれ、できもの。
 【その他】
- 吐き気、食欲不振、腹痛、下痢、口内炎、胃炎
- めまい、頭痛、貧血、血圧上昇
- 発疹、かゆみ
- 肝機能値の異常、総胆汁酸増加
|