おくすり110番
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成分(一般名) バリシチニブ
製品例 オルミエント錠2mg~4mg ・・その他(ジェネリック) & 薬価
区分 他の代謝性医薬/抗リウマチ剤/ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤

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   概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用
概説 炎症を抑えるお薬です。関節リウマチやアトピー性皮膚炎の治療に用います。また新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による中等度以上の肺炎にも適用します。
作用

【働き-1】

リウマチは、体の免疫系がかかわっている膠原病の一種です。関節に強い炎症を生じ、腫れや痛みをともないます。やがて、関節の骨や軟骨が破壊され、変形とともにその機能が失われます。

このお薬は関節リウマチに有効です。関節の炎症をしずめ腫れや痛みを軽くします。また、関節の破壊をおさえます。ただ、感染症など副作用がでやすいので、既存の標準療法が効果不十分な場合に用います。

【働き-2】

アトピー性皮膚炎は、アトピー素因のある人に生じる慢性的な皮膚の湿疹病変です。ステロイドの塗り薬による治療が行われますが、外用療法だけでは効果不十分なことがあります。その場合の治療選択肢となるのがこの薬です。全身性治療薬として体の中から皮膚の炎症を抑え湿疹病変を改善します。

【働き-3】

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、肺に入り肺炎を起こしやすいのが特徴です。ときに重症化し命にもかかわります。このお薬は、肺の炎症を鎮め肺炎を改善します。抗ウイルス薬のレムデシビルと併用することにより、重症化を防ぐとともに死亡リスクの低減が報告されています。酸素吸入を必要とする中等度以上の肺炎に用います。

【薬理】

炎症性サイトカインは、リンパ球など免疫細胞の活性化や増殖に不可欠です。サイトカインの第一の役目は、細胞表面にある受容体に結合し、細胞を活性化させる信号を細胞内へ発信することです。その受容体と細胞内側でくっつき、サイトカインの信号を監視・仲介するのがJAK(Janus kinase)ことヤヌスキナーゼです。

JAKはキナーゼと呼ばれるリン酸基転移酵素の一種で、2分子が受容体を囲むように会合しています。サイトカインの信号を受けると、ATP結合によリ活性化し、まず受容体をリン酸化、続いて次の信号伝達物質のSTAT(転写因子)をリン酸化し活性化させます。活性化したSTATは核内へと進入し、サイトカインに関連する遺伝子群の転写を促進するのです。ちなみに、ヤヌスの名は、その役割や作用部位から、また2つのリン酸化あるいは2分子が会合する構造をとることから、ローマ神話の門の守護神「二面神ヤヌス」にちなむそうです。

この薬はJAK阻害薬と呼ばれ、JAKのATP結合部位に先回りして結合しJAKが働かないようにします。このため、サイトカインが受容体に結合しても、その信号が細胞内部に届かず、細胞の活性化が抑制されるわけです。なお、JAK-STAT系の信号伝達経路を利用するサイトカインとして、インターロイキン(IL2・4・6・7・9・15・21)、インターフェロン(IFN-α・β)、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などが知られています。これら複数の炎症性サイトカインの働きを阻害することから、広範な免疫・炎症反応の抑制につながるものと考えられます。

【臨床試験-1】

関節リウマチに対するこの薬の効果と安全性を検証する国際共同試験が行われています。参加したのは、標準薬のメトトレキサート(リウマトレックス)で効果不十分な活動性関節リウマチの患者さん1305人、うち日本人249人です。そして、この薬を飲む人、生物製剤(TNF阻害薬)のアダリムマブ(ヒュミラ皮下注)を注射する人、プラセボ(にせ薬)を飲む人の3つのグループに分かれ、メトトレキサートとともに併用します。効果の判定は3ヶ月後のACR20改善率でおこないます。ACR20は、痛みや腫れのある関節数が20%以上減少、かつ医師または患者さん自身によるいくつかの評価項目が20%以上よくなった場合に“改善”と定義づけられます。

その結果、この薬を飲んでいた人達のACR20改善率は70%(339/487人)、アダリムマブで61%(202/330人)、プラセボの人達で40%(196/488人)でした。プラセボに比べ、この薬による改善率は明らかに高く、またアダリムマブに勝とも劣らない効果が示されたわけです。また、副次評価項目として、関節の構造的損傷をX線画像で調べたところ、プラセボに比べ関節破壊の進展抑制効果が高いことが分かりました。一方、安全性については、感染症の発現率がプラセボより高く、とくに日本人では帯状疱疹が100人中7人/年と多数みられました。

【臨床試験-2】

次はアトピー性皮膚炎についてです。ステロイド外用療法で効果不十分な中等症から重症(IGA3点〜4点)のアトピー性皮膚炎の患者さんを対象に、この薬を追加することにより症状が改善した人の割合を調べる試験です。医師の全般的評価で「病変なし(IGA0点)」または「ほとんどなし(IGA1点)」と判定された場合を改善とします。

その結果、この薬を4mg服用した人達の改善割合は31%(34/111人)、プラセボ(にせ薬)の人達は15%(16/109人)でした。この薬のほうが改善割合が明らかに高く、アトピー性皮膚炎に対する有効性が裏付けられたわけです。副作用については、前記の関節リウマチと特段の違いはないものの、単純ヘルペスウイルス感染症の発現が多くみられました。

【臨床試験-3】

最後は新型コロナウイルスによる肺炎に対する有効性を検証する試験です。投与対象は、酸素吸入が必要で抗ウイルス薬のレムデシビルを使用しているな中等度以上の患者さんです。そして回復までの期間をプラセボ投与の場合と比較するのです。

その結果、この薬を追加併用した人達の回復までの平均期間(中央値)は7日、プラセボの人達は8日でした。統計的に優越性があり、この薬が有効なことが確かめられました。また、別の試験では、標準療法(レムデシビル+デキサメタゾン等)にこの薬を追加した場合、死亡リスクが39%有意に低下したとの報告があります。
特徴
  • JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬に分類される関節リウマチ治療薬です。いわゆる分子標的薬の部類で、炎症反応にかかわる指令系統を分子レベルでブロックします。標的はJAKことヤヌスキナーゼという酵素です。この薬は、JAKのうち特にJAK1/JAK2を強く阻害するため、選択的JAK1/JAK2阻害薬と呼ばれることがあります。臨床的位置付けは難治例に用いられる抗リウマチ生物製剤(抗体医薬品)と同様と考えられます。
  • リウマチ治療によく使われるようになった生物製剤とは違います。生物製剤は細胞外で特定のサイトカインを標的とするのに対し、この薬は細胞内で複数のサイトカイン シグナル伝達を遮断します。細胞内伝達阻害薬ともいえるわけです。また、生物製剤は高分子のタンパク質のため点滴や皮下注射する必要がありましたが、この薬はATPの構造に含まれるアデニンに似た低分子のため消化管で分解されません。このため内服可能で、治療が簡便なのもメリットです。
  • 腫れや痛みを強力におさえる作用をもち、その効果は抗体医薬品に匹敵もしくは上回ります。関節痛、倦怠感や朝のこわばりなど患者さんの主観的症状についても、服薬1週目より改善がみられます。さらに、関節破壊の防止効果も期待できそうです。原則、単独では用いず、メトトレキサート(リウマトレックス)など従来の抗リウマチ薬(cDMARDs)が効果不十分な場合に追加併用します。ただし、感染症のリスク増大が予想される生物製剤との併用は避けます。
  • 強力な免疫抑制・抗炎症作用の裏返しとして、重い感染症を誘発する危険性があり、また発がんリスクについても否定できません。飲み薬といっても敷居が低いわけではなく、むしろ最後の切り札です。
  • 関節リウマチ治療薬として発売されましたが、その後 ‘アトピー性皮膚炎’(2020)と‘新型コロナウイルスによる肺炎’(2021)に対する適応が追加されました。
注意
【診察で】
  • 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
  • 服用中の薬を医師に教えてください。
  • 妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は医師に伝えてださい。妊娠中は使用できません。
  • 事前に医師から、起こるかもしれない副作用や注意事項について十分説明を受けてください。薬の性質をよく理解し、納得のうえで治療にあたりましょう。
  • 体に異常を感じたら、どのようなことでも医師に報告してください。

【注意する人】

結核をふくめ重い感染症にかかっている場合は使用を避け、感染症の治療を優先します(新型コロナウイルス感染症は例外)。腎臓の働きが悪いと副作用がでやすいです。腎機能障害の程度によっては、減量するか使用を控える必要かあります。妊娠中は禁止です。

  • 適さないケース..重い感染症(コロナは例外)、結核、重い腎臓病、白血球または赤血球が相当に減少している人、妊娠中もしくは可能性のある人、授乳中の人など。
  • 注意が必要なケース..感染症またはその疑いのある人、結核や帯状疱疹にかかったことがある人、B型肝炎既往歴またはB型肝炎ウイルスをもっている人、白血球など血球が減少している人、間質性肺炎の既往歴、がん、腸管憩室炎、肝臓病、腎臓病などのある人、静脈血栓塞栓症を起こしやすい人、高齢の人、手術前後など。

【飲み合わせ・食べ合わせ】
  • 痛風の薬のプロベネシド(ベネシッド)との併用により、血中濃度が上昇する可能性があります。併用のさいは、減量を考慮します。
  • 生ワクチンの予防接種は避けなければなりません。たとえば、風しんワクチンやBCGなどです。免疫抑制下で、病原性があらわれるおそれがあるためです。

【使用にあたり(一般)】
  • 指示通りに飲んでください。通常、1日1回1錠(4mg)です。しばらく続け、効果十分ならば減量を考慮します。腎機能が低下している人は、少な目になることがあります。
  • 飲み忘れた場合、気づいたときに直ちに服用してください。ただし、翌日に気づき次の服用時間が近ければ、その分は抜かし次の通常の時間に1回分を飲んでください。2回分を一度に飲んではいけません。
  • カゼ症状を含め発熱やのどの痛み、咳、息切れ、倦怠感、発疹・発赤、小水疱、ピリピリする痛みなど、この薬を服用中にいつもと違う症状があらわれたら、すぐに医師と連絡をとってください。

【使用にあたり(SARS-CoV-2による肺炎)】
  • 新型コロナウイルス感染症では、1日1回1錠(4mg)服用します。病状によっては、水に溶かしてチューブで胃に注入します。総服用期間は14日間までとされます。
  • 抗ウイルス薬のレムデシビル(ベクルリー点滴静注用)と併用します。

【検査】

治療に先立ち、結核や肝炎ウイルスの有無をふくめ、服薬に問題がないか調べます。治療開始後も、効果や副作用をチェックするため、定期的に検査を受けなければなりません。とくに重要なのが、白血球数など血球の検査、ヘモグロビン値、肝機能検査、脂質検査などです。肺炎や結核がないか胸部レントゲンで調べることもあります。

【妊娠授乳】

動物実験で催奇形性や胎児毒性が報告されています。妊娠中は使用できません。妊娠可能な女性は、服用中および服用中止後少なくとも1月経周期は適切な方法で避妊してください。

【食生活】

感染症にかかりやすいです。インフルエンザ流行時など、人ごみは避けたほうがよいかもしれません。外出のときはマスクをし、うがいや手洗いをしっかりしてください。
効能

【効能A】

既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)

  • [注意]過去の治療において、メトトレキサートをはじめとする少なくとも1剤の抗リウマチ薬等による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与すること。

【効能B】

アトピー性皮膚炎

  • [注意1]ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤等の抗炎症外用剤による適切な治療を一定期間施行しても、十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ患者に用いること。
  • [注意2]原則として、本剤投与時にはアトピー性皮膚炎の病変部位の状態に応じて抗炎症外用剤を併用すること。
  • [注意3]本剤投与時も保湿外用剤を継続使用すること。

【効能C】

SARS-CoV-2による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)

  • [注意]酸素吸入、人工呼吸管理又は体外式膜型人工肺(ECMO)導入を要する患者を対象に入院下で投与を行うこと。
用法

【効能A(関節リウマチ)】

通常、成人はバリシチニブとして4mgを1日1回経口服用する。なお、患者の状態に応じて2mgに減量すること。

【効能B(アトピー性皮膚炎)】

通常、成人はバリシチニブとして4mgを1日1回経口服用する。なお、患者の状態に応じて2mgに減量すること。

【効能C(SARS-CoV-2による肺炎)】

通常、成人はレムデシビルとの併用においてバリシチニブとして4mgを1日1回経口服用する。なお、総服用期間は14日間までとする。

  • [適用上の注意]本剤の経口投与が困難な場合、懸濁させた上で経口、胃瘻、経鼻又は経口胃管での投与を考慮できる。

【用法関連の注意】
<効能A・B・C>

プロベネシドとの併用時には本剤を2mg 1日1回に減量するなど用量に注意すること。
<効能A・B>

(1)本剤4mg 1日1回投与で治療効果が認められた際には、本剤2mg 1日1回投与への減量を検討すること。

(2)中等度の腎機能障害(30≦eGFR<60mL/分/1.73m2)のある患者には、2mgを1日1回経口投与する。重度の患者には投与しない。
<効能C>

(1)SARS-CoV-2による肺炎に対するレムデシビル以外の薬剤との併用について、有効性及び安全性は確立していない。

(2)中等度の腎機能障害のある患者には、2mgを1日1回経口投与する。重度の腎機能障害(15≦eGFR<30mL/分/1.73m2)がある患者に対して治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合には、下記を参考に投与することができる。

・正常又は軽度:eGFR≧60mL→4mgを1日1回投与

・中等度:30≦eGFR<60mL→2mgを1日1回投与

・重度:15≦eGFR<30mL→2mgを48時間ごとに1回投与(投与回数は最大7回)

・重度:eGFR<15mL→投与しない

※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
副作用 免疫力の低下にともない、細菌やウイルス、真菌などによる感染症にかかりやすくなります。なかでも多いのがヘルペスウイルスによる帯状疱疹です。皮膚発赤、ぶつぶつした小水疱、ピリピリ痛むなどの症状があらわれたら、すみやかに受診してください。早期に対処し重症化させないことが大事です。

ほかにも、鼻炎や咽頭炎、気管支炎、インフルエンザ、膀胱炎、肺炎や敗血症などなどさまざま感染症を起こすことがあり、ときに重症化します。また体内に潜んでいた結核菌やB型肝炎ウイルスが再活性化する可能性もあります。ウイルス性肝炎や結核の既往歴のある人は要注意です。発熱や咳、けん怠感など普段と違う症状が気になるときは医師と相談してください。

そのほか、肝障害、消化管穿孔、白血球減少、間質性肺炎、静脈血栓症や肺塞栓症が報告されています。さらに、因果関係は明らかではありませんが、リンパ腫や悪性腫瘍の発現リスクが少し高まる可能性があります。このへんも含め副作用を医師からよく聞き、その初期症状をふまえ日々体調変化に気を付けてください。


【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
  • 重い感染症..発熱、寒気、だるさ、食欲不振、のどの痛み、咳や痰、息苦しい、嘔吐、下痢、皮膚発赤・小水疱・ピリピリ痛い、水ぶくれ、できもの。
  • 消化管穿孔..突然の激しい腹痛、持続する腹痛、吐き気、嘔吐、寒気、発熱、意識低下。
  • 白血球など血球減少..発熱、のどの痛み、口内炎、咳、だるい、息切れ、動悸、疲労、めまい、顔色が悪い、出血傾向(皮下出血、鼻血、歯肉出血、血尿)、血便、吐血。
  • 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
  • 間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。
  • 静脈血栓症、肺塞栓症..手足(特にふくらはぎ)の痛み・はれ・むくみ・しびれ、爪の色が紫、突然の息切れ・息苦しい、深呼吸で胸が痛い、急な視力低下、視野が欠ける、目が痛む。

【その他】
  • 感染症(鼻炎、咽頭炎、気管支炎、インフルエンザ、肺炎、膀胱炎、腎盂腎炎、胃腸炎、帯状疱疹、単純ヘルペス、寄生虫症)
  • 吐き気
  • 高脂血症、肝機能値異常
   概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用
  









用法用量は医師・薬剤師の指示を必ずお守りください。
すべての副作用を掲載しているわけではありません。いつもと違う「おかしいな」と感じたら早めに受診してください。
症状に合った薬が適正に処方され、また正しく使用するかぎり、重い副作用はめったに起こりません。まずは安心して、決められたとおりにご使用ください。
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Good luck & Good bye