|  概説 | がんを抑えるお薬です。胃がん、大腸がん、乳がんなどの治療に用います。 | 
|  作用 |  
 【働き】
  
細胞の遺伝情報を持つ核酸(DNA、RNA)の合成をじゃまして、がん細胞の増殖をおさえます。胃がんや大腸がんなど消化器がんに用いるほか、乳がん、子宮頸がん、膀胱がんに対する適応もあります。そのほか、医師の判断で各種のがん治療に応用されています。また、手術後の補助療法として、再発予防目的に用いることも多いです。
  
 【薬理】
  
体内で活性物質に変化するプロドラッグタイプの抗がん薬です。すなわち、肝臓や小腸あるいは腫瘍組織で抗腫瘍作用をもつフルオロウラシル(5FU)に変換されてから作用するのです。
 フルオロウラシルは、核酸(DNA、RNA)の合成に必要なウラシルとよく似た構造をしているため、がん細胞が誤って取り込んでしまい、その結果として核酸の生合成を阻害したり、機能障害を起こすことにより抗腫瘍効果を発揮します。がん細胞の代謝を阻害する作用から広く「代謝拮抗薬」と呼ばれています。
  
 【臨床試験】
  
複数の施設で実施された臨床試験の結果、がん種別奏効率(腫瘍縮小など一定の効果がみられる割合)は胃がん14.3%(20/140例)、大腸がん(結腸・直腸がん)9.2%(7/76例)、乳がん35.9%(37/103例)、子宮頸がん20.6%(7/34例)、膀胱がん29.6%(16/54例)となっています。ただし奏効率は参考までです。症例数が十分とはいえませんし、病状、治療歴、あるいは効果判定基準によって大きく変わる可能性があります。
 | 
|  特徴 | 体内でフルオロウラシル(5FU)に変化するフッ化ピリミジン系の代謝拮抗薬になります。略号は5-DFUR。作用増強と副作用軽減を目的に開発され、フルオロウラシルそのものよりも高い治療効果が期待できます。胃がんや大腸がんなど消化器がんを中心に各種のがんに用いられています。プロドラッグですが、肝臓、小腸、骨髄など体のあちこちでフルオロウラシルに変化するので、腫瘍選択性はそれほど高くありません。最近は腫瘍選択性がより高いカペシタビン(ゼローダ)などに処方が移っています。
 | 
  
    |  注意 |  【診察で】
 持病のある人は医師に伝えておきましょう。服用中の薬を医師に教えてください。妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は医師に伝えてださい。事前に医師から、起こるかもしれない副作用や注意事項について十分説明を受けてください。
  
 【注意する人】
  
病気によっては、その病状を悪化させるおそれがあります。また、腎臓病や肝臓病のある人は、用量に注意するなど慎重に用いるようにします。
 
 注意が必要なケース..骨髄抑制、腎臓病、肝臓病、感染症、水痘(水ぼうそう)、心臓病、消化管潰瘍のある人など。
  
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
  
別の抗がん薬のテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合薬(ティーエスワン)との併用は禁止です。そのほかにもワルファリンなど注意が必要な飲み合わせがあります。過去1週間を含め服用中の薬は必ず医師に報告しておきましょう。また、別の病院で診察を受けるときも、この薬を飲んでいることを伝えてください。
 
 飲み合わせの悪い薬..テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(ティーエスワン)飲み合わせに注意..ワルファリン(ワーファリン)、フェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、トリフルリジン・チピラシル(ロンサーフ)など。
  【使用にあたり】
 病状や治療方針によって飲み方が違います。副作用によっては減量も必要です。決められた飲み方を厳守してください。万一飲み忘れた場合は、その分は抜かし、次の通常の時間に1回分を服用してください。絶対に2回分を一度に飲んではいけません。吐き気や嘔吐、下痢、ふらつき、口内炎、また、発熱やかぜ症状を含め、この薬を服用中にいつもと違う症状があらわれたら、すぐに医師と相談してください。
  
 【検査】
  
副作用や効果をチェックするため、定期的に検査を受けなければなりません。
 | 
  
    |  効能 | 胃癌、結腸・直腸癌、乳癌、子宮頸癌、膀胱癌医師の判断で、別のがんに応用されるかもしれません
 | 
  
    |  用法 | 通常、1日量としてドキシフルリジン800〜1200mgを3〜4回に分けて経口服用する。なお、年齢、症状により適宜増減する。 
    
      
        | ※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
 |  | 
  
    |  副作用 | 吐き気や嘔吐、下痢、口内炎など、いろいろな副作用がでやすいです。あわてないよう、事前に医師から十分説明を受けておきましょう。軽い副作用の場合、治療を優先しなければならないことも多いです。 
 抗がん薬に特有な「骨髄抑制」は比較的軽いほうですが、それでも それにともなう血球減少や感染症に十分な注意が必要です。白血球が異常に減少すると、体の抵抗力がひどく落ちて感染症にかかりやすくなります。また、血小板減少により出血しやすくなることもあります。発熱やのどの痛み、あるいは歯茎出血・皮下出血など出血傾向がみられたら、ただちに医師に連絡してください。
 
 そのほか、とくに注意が必要なのは、激しい下痢と脱水症状をともなう重い腸炎、肝障害、それと長期服用時の白質脳症です。脳症はまれな副作用ですが、初期症状として、歩行時のふらつき、手足のしびれ、舌のもつれ、物忘れなどが現れますので、そのような場合は医師に報告してください。
 
 
  【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
 骨髄抑制(血球減少)..発熱、ひどい疲労感、のどの痛み、皮下出血(血豆・青あざ)や鼻血・歯肉出血など出血傾向、息切れ、動悸。腸炎..激しい腹痛、下痢、下血(血液便、黒いタール状の便)。白質脳症..頭痛、もの忘れ、ボーとする、歩行時のふらつき、手足のしびれ・まひ、うまく話せない、動作がにぶる、けいれん、二重に見える、見えにくい。狭心症、心筋梗塞、不整脈..胸の痛み、息切れ、動悸、めまい、気を失う。肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。心不全..疲れやすい、息苦しい、息切れ、むくみ、急な体重増加、痰、ゼィゼィ、咳、頻脈。間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。膵炎..吐き気、吐く、持続的な激しい腹痛、上腹部または腰から背中の激痛、発熱。
  【その他】
 食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛口内炎、味覚異常発疹、かゆみ、色素沈着、脱毛
 |