おくすり110番
スポンサード リンク 投げ銭コ-ナ-

成分(一般名) ダサチニブ
製品例 スプリセル錠20mg~50mg ・・その他(ジェネリック) & 薬価
区分 その他の腫瘍用薬/他の抗悪性腫瘍剤/抗悪性腫瘍剤

  PR 人気の薬系書籍ベスト30 「くすり本NAVI 」

   概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用
概説 白血病を治療するお薬です。おもに慢性骨髄性白血病に用います。
作用

【働き】

血液は骨のなかの骨髄の造血幹細胞からつくられます。慢性骨髄性白血病は、造血幹細胞ががん化し、白血球の一種の顆粒球が異常増殖する病気です。進行すると、正常な血球ができなくなり、貧血や出血、感染症などを引き起こし命を脅かします。病因としてあげられるのが、フィラデルフィア染色体に由来する異常遺伝子‘BCR-ABL’が産生するチロシンキナーゼという酵素タンパクです。

このお薬は、チロシンキナーゼのはたらきを阻害することにより、病的な血球の産生を抑え血液を正常化させます。寛解に導き、急性転化(急激な悪化)を回避することにより、より長生きできる可能性が高まるのです。おもに、慢性骨髄性白血病の治療に用いられていますが、リンパ系造血幹細胞が腫瘍化する急性リンパ性白血病に対する効能も別にあります。

【薬理】

慢性骨髄性白血病の大部分の患者さんに見つかるのが、フィラデルフィア染色体と呼ばれる不正な染色体です。この染色体のもとBCR-ABL融合遺伝子が形成され、これがBcr-Ablチロシンキナーゼという異常な蛋白を産生します。Bcr-Ablチロシンキナーゼは慢性骨髄性白血病の病因ともいえ、がん細胞増殖の引き金となるシグナルを送る役目をしています。

この薬は、Bcr-Ablチロシンキナーゼに結合し、細胞増殖を促すシグナル伝達を遮断します。さらに、下流のシグナル伝達にかかわるSrcチロシンキナーゼをはじめ別のチロシンキナーゼを阻害することも分かっています。チロシンキナーゼはリン酸化をもたらす一種の酵素であり、これを阻害する作用からチロシンキナーゼ阻害薬あるいはチロシンキナーゼインヒビターなどと呼ばれています。

【臨床試験】

慢性骨髄性白血病の1次治療における有効性を、類似薬のイマチニブ(グリベック)と比較する国際共同臨床試験がおこなわれています。イマチニブは慢性骨髄性白血病に標準的に用いられているチロシンキナーゼ阻害薬です。参加したのは初発の慢性期慢性骨髄性白血病の患者さん519人(日本人49人)です。そしてくじ引きで分かれ、259人はこの薬を、別の260人はイマチニブを服用します。効果判定の主要評価項目は、1年以内に細胞遺伝学的に寛解し正常化(確定CCyR)した人の割合です。また、副次的にBCR-ABL遺伝子が消失する分子遺伝学的な寛解(MMR)についても調べます。

その結果、細胞遺伝子レベルで寛解(CCyR)し正常化した人の割合は、この薬を飲んでいた人達で77%(199/259人)、イマチニブの人達で66%(172/260人)でした。寛解に到達するまでの期間の中央値は、この薬で3.1カ月、イマチニブで5.6カ月でした。また、分子遺伝学的に寛解(MMR)した人の割合は、この薬で52%(135/259人)、イマチニブで34%(88/260人)、寛解到達までの中央値は、この薬で6.3カ月、イマチニブで9.2カ月でした。この薬のほうが寛解率が高く、またより早く寛解に到達できることが確かめられたわけです。さらに、別の臨床試験でイマチニブが十分効かないイマチニブ抵抗性の慢性骨髄性白血病に対する有効性も示されています。
特徴
  • 「分子標的薬」と呼ばれる新しいタイプの抗がん薬です。がん細胞の増殖を指令するシグナル伝達経路を分子レベルで遮断します。この薬の標的分子(蛋白)は、白血病細胞増殖の最初の伝達ポイントとなるBcr-Ablチロシンキナーゼです。
  • チロシンキナーゼを阻害し、基質のチロシンリン酸化を妨げる作用から広く「チロシンキナーゼ阻害薬」と呼ばれています。Bcr-Ablチロシンキナーゼを阻害する類似薬として、イマチニブ(グリベック)、ニロチニブ(タシグナ)、ボスチニブ(ボシュリフ)があります。これらの有効率は非常に高く、また、従来のインターフェロン療法などに比べ治療が楽です。同系の標準薬であるイマチニブの登場により、慢性骨髄性白血病の5年生存率は90%以上に達しました。
  • 作用的にはイマチニブとほぼ同じですが、変異型Bcr-Ablチロシンキナーゼをはじめ、下流のシグナル伝達経路に位置するSrcチロシンキナーゼなどいくつかの発がん性チロシンキナーゼを広く阻害します。このため、イマチニブ耐性白血病細胞に対しても増殖阻害活性を示すものと考えられます。実際の臨床試験でも1次治療ではイマチニブを上回る寛解率が得られ、またイマチニブ抵抗性の2次治療においても高い有効性が示されています。当初の適応症にはイマチニブ抵抗性というしばりがありましたが、現在は、初発の慢性骨髄性白血病に対する1次治療薬として使用可能です。
  • がん細胞の特定の分子だけを阻害するため、腫瘍選択性が低い従来の抗がん薬やインターフェロンに比べ副作用が軽減され治療も楽です。ただし、特異な副作用として骨髄抑制にともなう血液障害、体液貯留や不整脈などに注意が必要なことに変わりありません。
注意
【診察で】
  • 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
  • 服用中の薬を医師に教えてください。
  • 妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は医師に伝えてださい。妊娠中は使用できません。
  • 注意事項や副作用を含め、医師から この薬の有効性や安全性について十分説明を受けてください。薬の性質をよく理解し、納得のうえで治療にあたりましょう。

【注意する人】

間質性肺炎にかかったことのある人は、再発に注意するなど慎重に用いるようにします。また、B型肝炎ウイルスに感染したことのある人は、その再活性化に注意が必要です。高齢の人は、胸水をはじめいろいろな副作用がでやすいです。

  • 注意が必要なケース..間質性肺炎の既往歴、肝臓病、心臓病、B型肝炎既往歴またはB型肝炎ウイルスをもっている人、イマチニブによる副作用歴のある人、高齢の人など。

【飲み合わせ・食べ合わせ】

いろいろな薬と相互作用を起こしやすい性質があります。飲み合わせによっては、薬の副作用がでやすくなります。逆に効果が弱くなってしまうこともあります。服用中の薬は必ず医師に報告しておきましょう。また、別の病院で診察を受けるときも、この薬を飲んでいることを伝えてください。

  • マクロライド系抗生物質のエリスロマイシン(エリスロシン)やクラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)、アゾール系抗真菌薬のイトラコナゾール(イトリゾール)は、この薬の血中濃度を上昇させ、不整脈など重い副作用をまねくおそれがあります。
  • 抗結核薬のリファンピシン(リファジン)や抗けいれん薬のフェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、カルバマゼピン(テグレトール)、フェノバルビタール(フェノバール)、ステロイド薬のデキサメタゾン(デカドロン)など ある種の薬と併用すると、この薬の作用が弱まるかもしれません。
  • 制酸剤(アルミニウム・マグネシウム含有製剤)との同時服用は避け、2時間くらい間隔をあけてください。また、胃薬のH2受容体拮薬(ガスター等)やプロトンポンプ阻害薬(タケプロン等)との併用はすすめられません。
  • 不整脈(QT延長)の副作用をもつ薬と併用する場合は、その発現に注意しなければなりません。多くの抗不整脈薬のほか、抗精神病薬のピモジド(オーラップ)、抗うつ薬のクロミプラミン(アナフラニール)やイミプラミン(トフラニール)、高脂血症治療薬のプロブコール(ロレルコ、シンレスタール)、抗菌薬のモキシフロキサシン(アベロックス)、マクロライド系抗生物質のエリスロマイシン(エリスロシン)やクラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)などに注意が必要です。
  • 抗血栓薬(アスピリン、ワーファリン、パナルジン、プラビックス等)と併用する場合は、出血に十分注意します。
  • グレープフルーツジュースは飲まないでください。この薬の血中濃度が上昇し、副作用がでやすくなるおそれがあります。
  • セイヨウオトギリソウ( セント・ジョーンズ・ワート)を含む健康食品は控えてください。この薬の作用を弱めるかもしれません。

【使用にあたり】
  • 病状や治療方針によって飲み方が違います。決められた飲み方を厳守してください。
  • 多めの水で、かまずにそのまま飲んでください。かみ砕くと、活性物質が口内で溶出してしまいます。
  • 発熱、動悸、息切れ、咳、むくみ、急激な体重増加、出血など、いつもと違う症状があらわれたら医師に伝えてください。副作用の程度により、減量または一時休止することがあります。

【検査】

副作用や効果をチェックするため、定期的に検査を受けなければなりません。血液検査のほか、体重測定や心電図検査も重要です。

【妊娠・授乳】
  • おなかの赤ちゃんの発育に悪い影響をおよぼすおそれがあります。そのため、妊娠中は禁止です。また、服用中は妊娠しないように適切な方法で避妊してください。
  • 授乳は中止してください。母乳に薬が移行する可能性があります。

【食生活】

むくみの副作用予防に、塩分は控えめにしたほうがよいでしょう。
効能

【効能A】

慢性骨髄性白血病

【効能B】

再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病
用法
【効能A】
<慢性期>

通常、成人はダサチニブとして1日1回100mgを経口服用する。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日1回140mgまで増量できる。
<移行期又は急性期>

通常、成人はダサチニブとして1回70mgを1日2回経口服用する。なお、患者の状態により適宜増減するが、1回90mgを1日2回まで増量できる。

【効能B】

通常、成人はダサチニブとして1回70mgを1日2回経口服用する。なお、患者の状態により適宜増減するが、1回90mgを1日2回まで増量できる。

※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
副作用 吐き気や嘔吐、下痢、頭痛、むくみ、発疹など、いろいろな副作用がでやすいです。あわてないよう、事前に医師から十分説明を受けておきましょう。軽い副作用の場合、治療を優先しなければならないことも多いです。

副作用でもっとも重要なのが骨髄抑制にともなう血球の減少です。白血球が極端に減少すると、体の抵抗力がひどく落ちて感染症にかかりやすくなります。また、血小板減少により出血を生じることもあります。発熱やのどの痛み、あるいは歯茎出血・皮下出血など出血傾向に注意しましょう。

特異な副作用として体液貯留をみることがあり、なかでも胸水の発現率がかなり高いです。症状としては、息苦しさ、から咳、急激な体重増加などがあらわれます。ほかにも、不整脈(QT間隔の延長)や心不全、間質性肺炎など注意を要する副作用があります。下記のような初期症状をふまえ、なにか普段と違う「おかしいな」と感じたら、すぐ医師と連絡をとってください。


【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
  • 重い血液成分の異常..発熱、喉の痛み、口内炎、だるい、皮下出血(血豆・青あざ)や鼻血・歯肉出血など出血傾向。
  • 出血(脳出血、硬膜下出血、消化管出血)..激しい頭痛、片側の麻痺、うまく話せない、腹痛、下血(黒いタール状の便)、吐血。
  • 重い感染症..発熱、けん怠感、のどの痛み、咳や痰、息苦しい、嘔吐、下痢、皮膚がピリピリ痛い、皮膚の発赤・水ぶくれ・できもの。
  • 体液貯留(胸水、肺水腫、腹水、心不全)..息苦しい、胸苦しい、咳、むくみ、お腹のはり、急な体重増加。
  • 心不全・不整脈..息切れ、息苦しい、むくみ、体重増加、動悸、脈が弱い、脈の乱れ、めまい、失神。
  • 間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。
  • 急性腎不全..尿が少ない・出ない、むくみ、尿の濁り、血尿、だるい、吐き気、頭痛、のどが渇く、けいれん、血圧上昇。
  • 肺高血圧症..少しの運動で息切れ、疲れやすい、胸の痛み、めまい、失神。

【その他】
  • 吐き気、嘔吐、下痢、便秘、腹痛
  • むくみ(手足、顔、目の周り)、体重増加
  • 歯肉出血、結膜出血、鼻出血、皮下出血
  • 筋肉痛、筋肉のつっぱり・けいれん、関節痛
  • 頭痛、動悸、発熱、咳、けん怠感
  • 発疹、発赤、かゆみ
   概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用
  









用法用量は医師・薬剤師の指示を必ずお守りください。
すべての副作用を掲載しているわけではありません。いつもと違う「おかしいな」と感じたら早めに受診してください。
症状に合った薬が適正に処方され、また正しく使用するかぎり、重い副作用はめったに起こりません。まずは安心して、決められたとおりにご使用ください。
おくすり110番病気別の薬くすり本NAVIおくすり鑑定妊娠とくすり禁忌薬副作用薬価Drug Yaboo!

スポンサード リンク 投げ銭してネ !
Good luck & Good bye