おくすり110番
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成分(一般名) パノビノスタット乳酸塩
製品例 ファリーダックカプセル10mg~15mg ・・その他(ジェネリック) & 薬価
区分 その他の腫瘍用薬/他の抗悪性腫瘍剤/抗悪性腫瘍剤

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   概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用
概説 多発性骨髄腫を治療するお薬です。
作用

【働き】

多発性骨髄腫は血液がんの一種です。白血球のひとつ形質細胞(Bリンパ球)ががん化し、骨髄内で異常増殖することで起こります。進行は比較的ゆっくりですが、骨髄腫細胞の勢いが増し正常な血液細胞ができなくなると、さまざまな症状があらわれます。貧血、骨の痛み、腎機能の低下、さらには高カルシウム血症や腎不全を併発し余後は好ましくありません。

このお薬は、多発性骨髄腫を治療する抗悪性腫瘍薬です。がん抑制遺伝子の発現を促進し、骨髄腫細胞の寿命を短くしたり、細胞の分裂を止めたりすることで抗腫瘍効果を発揮します。効き方には個人差がありますが、骨髄腫細胞が減少し、病気の進行が抑えられることにより、より長生きできる可能性があります。初めから使うのではなく、標準治療薬が効果不十分な場合にボルテゾミブ(ベルケイド注射)とデキサメタゾン(レナデックス)とともに用います。

【薬理】

ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は、ヒストンという蛋白質からアセチル基を取り除く酵素です。この酵素は、腫瘍組織において過剰に発現し、血液悪性腫瘍の発症に深くかかわっています。脱アセチル化は、DNAとヒストンの複合体であるクロマチン(染色体)構造を凝集させ、がん抑制遺伝子の転写を抑制すると考えられています。

この薬は、ヒストン脱アセチル化酵素の働きを阻害することにより、ヒストンをはじめとする蛋白質のアセチル化レベルを上昇させます。その結果、遺伝子転写が促進され、がん抑制遺伝子の増加とともに抑制されていた腫瘍抑制因子が活性化します。そして、細胞の分裂停止、細胞死の誘導を引き起こすなどして、腫瘍細胞の増殖を抑制するのです。このような作用機序からヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬と呼ばれています。

【臨床試験】

この薬の効果をプラセボ(にせ薬)と比較する国際共同試験がおこなわれています。参加したのは、前治療が不良な再発または難治性の多発性骨髄腫の患者さん768人(うち日本人34人)です。そして標準治療薬(ボルテゾミブ+デキサメタゾン)とともに、387人はこの薬を、別の381人はプラセボを服用し、病状が落ち着いている無増悪生存期間を比較するのです。また、副次的に全生存期間についても調べます。

その結果、この薬を追加併用した人達の無増悪生存期間の中央値は12カ月、プラセボの人達では8カ月でした。大きな差はでませんでしたが、この薬を用いたほうが4カ月ほど延長したことから、一定の有効性が確認できたわけです。一方、全生存期間(中間解析)については、この薬の中央値が38カ月、プラセボで35カ月と統計学的に明らかな差は認められませんでした。
特徴
  • ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬、略してHDAC阻害薬に分類される多発性骨髄腫治療薬です。新しい作用をもつため、既存薬による前治療が不良な場合でも一定の効果が期待できます。このため、標準薬のプロテアソーム阻害薬(ベルケイド注射)または免疫調節薬(レブラミド等)による治療歴がある難治性の多発性骨髄腫に適用します。
  • 単独ではなく、プロテアソーム阻害薬のボルテゾミブ(ベルケイド注射)とステロイド薬のデキサメタゾン(レナデックス)と併用します。作用機序が異なるプロテアソーム阻害薬とステロイド薬との相乗作用により より強い抗腫瘍効果が期待できるのです。実際に、この3剤併用療法により無増悪生存期間の延長(3〜8ヶ月)が認められています。
  • 新しい薬なので、治療実績が少なく、安全性が十分確認されているわけではありません。治療初期は入院またはそれに準ずる管理下で注意深く使用する必要があります。下痢、不整脈(QT延長)、骨髄抑制(血球減少)、出血、感染症などの副作用を早期に発見し重症化を防ぐためです。
注意
【診察で】
  • 妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は申し出てください。
  • 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
  • 使用中の薬を医師に教えてください。
  • 注意事項や副作用について十分説明を受けてください。薬の性質をよく理解し、同意のうえで治療にあたりましょう。

【注意する人】

出血しやすい人、感染症を合併している人、不整脈を起こしやすい人、肝臓病のある人は、病状の悪化や副作用の発現に注意が必要です。また、肝臓が悪いと血中濃度が上昇しやすいので、薬の量を減らすることがあります。

  • 注意が必要なケース..出血のリスクがある場合(血小板減少、抗凝固療法中)、感染症を合併している人、不整脈(QT延長)を起こしやすい人、肝臓病のある人、高齢の人など。

【飲み合わせ・食べ合わせ】
  • 飲み合わせによっては、この薬の血中濃度が上昇し、副作用がでやすくなります。たとえば、マクロライド系抗生物質のクラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)、アゾール系抗真菌薬のイトラコナゾール(イトリゾール)、抗エイズウイルス薬のプロテアーゼ阻害薬(ノービア、カレトラ、レイアタッツ、プリジスタ、レクシヴァ、スタリビルド)などです。併用する場合は、この薬(パノビノスタット)の減量を考慮するとともに、副作用の発現に十分注意しなければなりません。
  • 逆に、この薬の血中濃度を低下させる薬剤に、結核・抗酸菌症治療薬のリファンピシン(リファジン)とリファブチン(ミコブティン)、抗けいれん薬のフェノバルビタール(フェノバール)やフェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、カルバマゼピン(テグレトール)などがあります。薬ではありませんが、健康食品のセイヨウオトギリソウ( セント・ジョーンズ・ワート)にも同様の性質があります。これらとの併用はできるだけ避け、相互作用のより少ない薬剤への代替を考慮するようにします。
  • 一方併用薬の血中濃度を上昇させる飲み合わせとして、抗不整脈薬のフレカイニド(タンボコール)やプロパフェノン(プロノン)、咳止めのデキストロメトルファン(メジコン)、乳がんの薬のタモキシフェン(ノルバデックス)、安定薬のリスペリドン(リスパダール)などに注意が必要です。
  • 心電図のQT間隔を延長させやすい薬剤と併用する場合は、QT延長の発現に十分注意しなればなりません。たとえば、抗不整脈薬のジソピラミド(リスモダン)、ソタロール(ソタコール)、アミオダロン(アンカロン)やベプリジル(ベプリコール)、抗菌薬のクラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)やモキシフロキサシン(アベロックス)、抗精神病薬のピモジド(オーラップ)、制吐薬のオンダンセトロン(ゾフラン)やトロピセトロン(ナボバン)などです。

【使用にあたり】
  • 服用量は、通常、1日1回、1回に2カプセル(カプセル10mgx2)です。ただし、毎日飲むわけではありません。週3回の服用を2週間(1,3,5,8,10,12日目)続け、その後の1週間 (13〜21日目)は飲むのをやめます。この服薬2週間と休薬1週間の3週間を1サイクルとして服薬を繰り返します。飲む曜日や時間は医師の指示どおりにしてください。可能なら月曜日から始めると分かりやすいでしょう(月水金に服用)。
  • 服薬日が変則的です。飲み忘れに注意しましょう。万一飲み忘れた場合、決められた時間から12時間以内ならすぐにその分を飲んでください。12時間以上経過した場合は、その分は抜かし、次回の服用時間から通常通りに服用してください。絶対に2回分を一度に飲んではいけません。
  • 注射薬のボルテゾミブ(ベルケイド注射)と飲み薬のデキサメタゾン(レナデックス)と必ず併用します。デキサメタゾンの飲み方も変則的になりますから注意してください。
  • 下痢、嘔吐、血球減少など副作用の出かたによっては、いったん飲むのをやめて休薬します。その後、一定の回復がみられたら、5mg減量して再開します。ひどい下痢や嘔吐が続くときは早めに受診してください。

【検査】
  • 治療に先立ち、ウイルス性肝炎や結核など感染症を合併していないか確認します。
  • 効果や副作用をチェックするため、定期的に血液検査、電解質検査、肝機能検査、心電図検査などをおこないます。

【妊娠・授乳】
  • 妊娠中または妊娠している可能性のある女性は医師とよく相談してください。
  • 妊娠する可能性のある女性は、この薬を服用している間および服用終了後しばらくは、適切な方法で避妊してください。
  • 服用している期間は授乳を避けてください。

【食生活】
  • 避妊を指示された場合、決められた避妊法をおこなってください。
  • 健康食品やハーブティーとして販売されているセイヨウオトギリソウ( セント・ジョーンズ・ワート)の飲食は避けたほうがよいでしょう。飲み合わせにより、この薬の効果が減弱するおそれがあるためてす。
  • めまいや起立性低血圧を起こしやすいです。失神や意識消失を起こすおそれもありますから、車の運転をふくめ危険をともなう機械の操作や高所作業はしないでください。
効能 再発又は難治性の多発性骨髄腫
用法 ボルテゾミブ及びデキサメタゾンとの併用において、通常、成人はパノビノスタットとして1日1回20mgを週3回、2週間(1、3、5、8、10及び12日目)経口服用した後、9日間休薬(13〜21日目)する。この3週間を1サイクルとし、服用を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。

※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
副作用 副作用でいちばん多いのが胃腸症状です。なかでも下痢の頻度が高く、半分くらいの人にあらわれます。激しい下痢や嘔吐は脱水をまねき、さらには電解質異常から不整脈を誘発したり、血栓塞栓症のリスクを高めます。下痢止めや吐き気止めの処方、点滴による水分補給で対処しますが、それでも治まらない場合は一時休薬し回復を待ちます。

検査でよくみつかるのは、骨髄抑制にともなう血球減少です。気づかないまま白血球が極端に減少してしまうと、体の抵抗力が落ちて重い感染症にかかりやすくなります。肺炎や敗血症を起こしたり、潜んでいたB型肝炎ウイルスや結核菌が再活性化するおそれがあるのです。さらに、血小板減少にともなう出血、赤血球の不足による貧血にも注意が必要です。発熱やのどの痛み、強い疲労感、歯茎出血や皮下出血など出血傾向がみられたら、ただちに医師に連絡してください。

QT間隔延長は心電図にあらわれる異常な所見です。命にかかわる不整脈につながるおそれがあるため油断できません。一定以上のQT延長が認められた場合は、いったん服薬をやめて様子をみるようにします。ほかにも重い副作用として、肝機能障害、腎不全、低血圧、失神などが報告されています。下記のような初期症状をふまえ、気になることがあれば、医師と連絡をとり適切な指示を受けるようにしてください。早期対応が大事です。


【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
  • 重度の下痢..水のような便、頻回な下痢、下痢が数日続く、嘔吐をともなう下痢。
  • 脱水..下痢や嘔吐が続く、飲食できない、のどが渇く、多尿、頻尿、さらに進むと尿が少ない・出ない、脱力、立ちくらみ、めまい、血圧低下、意識もうろう。
  • 骨髄抑制(血球減少)..発熱、ひどい疲労感、のどの痛み、皮下出血(血豆・青あざ)や鼻血・歯肉出血など出血傾向、息切れ、動悸。
  • 重大な出血(胃腸出血、肺出血、脳出血)..下血(血が混ざった便、黒いタール状の便)、吐血(血を吐く、コーヒー色のものを吐く)、血の混じった痰、頭痛、めまい、視野が欠ける、二重に見える、まひ、話せない、意識がうすれる。
  • 重い感染症..発熱、けん怠感、のどの痛み、咳や痰、息苦しい、嘔吐、下痢、皮膚がピリピリ痛い、皮膚の発赤・水ぶくれ・できもの。
  • 心電図QT延長..動悸、胸の痛みや違和感、脈が遅いまたは速い、脈の乱れ、めまい、失神。
  • 狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全..締め付けられるような胸の痛み、冷汗、動悸、脈の乱れ、めまい、失神、息苦しい、むくみ、体重増加。
  • 肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
  • 腎不全..尿が少ない・出ない、むくみ、尿の濁り、血尿、だるい、吐き気、頭痛、のどが渇く、けいれん、血圧上昇。
  • 静脈血栓症、肺塞栓症..手足(特にふくらはぎ)の痛み・はれ・むくみ・しびれ、爪の色が紫、突然の息切れ・息苦しい、深呼吸で胸が痛い、急な視力低下、視野が欠ける、目が痛む。
  • 低血圧、起立性低血圧、失神、意識消失..だるい、めまい、ふらつき、立ちくらみ、意識を失う。

【その他】
  • 下痢、食欲減退、吐き気、嘔吐、腹痛
  • 疲労、けん怠感、発熱、むくみ
  • めまい、動悸、頭痛、ふるえ、味覚異常、発疹
   概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用
  









用法用量は医師・薬剤師の指示を必ずお守りください。
すべての副作用を掲載しているわけではありません。いつもと違う「おかしいな」と感じたら早めに受診してください。
症状に合った薬が適正に処方され、また正しく使用するかぎり、重い副作用はめったに起こりません。まずは安心して、決められたとおりにご使用ください。
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Good luck & Good bye