概説 |
痛みをやわらげる漢方薬です。 |
作用 | 
- 【働き】

- 芍薬甘草附子湯(シャクヤクカンゾウブシトウ)という方剤です。筋肉の緊張をゆるめて痛みをやわらげる作用があります。具体的には、神経痛や関節炎、五十肩や肩こりなどに用います。とくに、冷えによる痛み、手足のしびれやこわばりをともなうときに適します。

- 【組成】

- 漢方薬は、自然の草や木からとった「生薬」の組み合わせでできています。芍薬甘草附子湯は、その名が示すよう、“芍薬”と“甘草”と“附子”の3種類の生薬からなります。どれも、痛みを緩和する作用をもつ生薬です。“附子”は体をあたためる働きもします。病院では、煎じる必要のない乾燥エキス剤を用いるのが一般的です。
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特徴 |
- 基本処方である「芍薬甘草湯」に、体をあたためる熱性の“附子”を加えたものです。したがって、より寒証向けの処方になります。
- 適応証(体質)は、虚証(虚弱)、寒証(冷え)となります。
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注意 |
 【診察で】
- 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
- 市販薬も含め服用中の薬を医師に教えてください。

- 【注意する人】

- 冷えの強い「寒証」向けの方剤です。したがって、体力が充実し、暑がりで、のぼせのある人には不向きです。また、アルドステロン症など、病気によってはその症状を悪化させるおそれがあります。心臓病や高血圧など循環器系に病気のある人も医師に話しておいてください。
- 適さないケース..アルドステロン症、ミオパシー(筋肉障害)、低カリウム血症。
- 注意が必要なケース..実証・熱証(体力充実・のぼせ)。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 附子や甘草を含む他の漢方薬といっしょに飲むときは、それらの重複に注意が必要です。
- 飲み合わせに注意..附子含有製剤、甘草含有製剤、グリチルリチン(グリチロン等)、利尿薬など。
 【使用にあたり】
- ふつう、漢方薬は食前もしくは食間(空腹時)に飲みます。顆粒は、お湯で溶かしてから、ゆったりした気分で飲むとよいでしょう。むかつくときは、水で飲んでもかまいません。
- もし、食欲がなくなったり、吐き気を催すようでしたら、食後でもよいと思います。
- 効果のないときは、医師と相談してみてください。証の再判定が必要かもしれません。
 【備考】
- 漢方は中国で生まれた体系医学です。その起源は遠く2千年以上もさかのぼります。そして、日本にも古くから伝わり、独自の発展をとげました。
- 漢方の特徴は、体全体をみるということです。体全体の調子を整え、病気を治していくのです。ですから、病気の症状だけでなく、一人ひとりの体質も診断しなければなりません。このときの体の状態や体質をあらわすのが「証(しょう)」という概念です。このような考え方は、西洋医学が臓器や組織に原因を求めていくのとは対照的です。漢方のよさは、薬そのものよりも、証にもとづき「人をみる」という、その考え方にあるといっても過言でないでしょう。
- 病院では、服用が簡単な「エキス剤」が広く使われています。これは、煎じ薬を濃縮乾燥させたもので、そのままお湯に溶かすだけで飲めます(一部の専門外来では、生薬のまま調合することも)。現在、芍薬甘草附子湯をはじめ約150種類の方剤が保険適応となっています。
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効能 |
冷症で関節や筋肉が痛み、麻痺感があって四肢の屈伸が困難なものの次の諸症。
- 慢性神経痛、慢性関節炎、関節リウマチ、筋肉リウマチ、五十肩、肩こり
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用法 |
通常、成人1日4.5gを3回に分割し、食前又は食間に経口服用する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
漢方薬にも少しは副作用があります。人によっては、服用時にむかついたり、かえって食欲がなくなるかもしれません。また、動悸やのぼせ、舌のしびれ感などもみられます。症状の強いときは、早めに受診してください。
重い副作用はまずありませんが、配合生薬の甘草の大量服用により、浮腫(むくみ)を生じたり血圧が上がってくることがあります。「偽アルドステロン症」と呼ばれる症状です。浮腫や低カリウム血症により、心臓に悪い影響がでてくるおそれもあります。とくに、服用期間が長くなるときは要注意です。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 偽アルドステロン症..だるい、血圧上昇、むくみ、体重増加、手足のしびれ・痛み、筋肉のぴくつき・ふるえ、力が入らない、低カリウム血症。
 【その他】
- 胃の不快感、食欲不振、吐き気、吐く、下痢
- 動悸、のぼせ、舌のしびれ
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