概説 |
肝臓を守る漢方薬です。肝炎のほか、胃炎やカゼ、喘息などにも用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 小柴胡湯(ショウサイコトウ)という方剤です。胃腸や肝臓、呼吸器の働きを改善し、また、体の免疫機能を調整し炎症をやわらげます。そして、体の疲れをとり、病気の回復を助けます。
具体的には、肝炎や胃炎、少しこじれたカゼなどに適応します。また、喘息やネフローゼなどアレルギーや免疫系がかかわる病気にも処方されます。体質的には、体力が中くらいで、ミゾウチから肋骨下部が張り胸苦しさのある人に向く処方です。

- 【組成】

- 漢方薬は、自然の草や木からとった「生薬」の組み合わせでできています。小柴胡湯は、主薬の“柴胡”をはじめ、下記の7種類の生薬からなります。“柴胡”と“黄ごん”の組み合わせにより、炎症をしずめる効果が高まります。“半夏”は、胸のつかえ感や吐き気をおさえる生薬です。そのほか、滋養作用のある“人参”、炎症や痛みを緩和する“甘草”などが配合されています。これらがいっしょに働くことで、よりよい効果を発揮します。病院では、煎じる必要のない乾燥エキス剤を用いるのが一般的です。
- 柴胡(サイコ)
- 黄ごん(オウゴン)
- 半夏(ハンゲ)
- 人参(ニンジン)
- 甘草(カンゾウ)
- 生姜(ショウキョウ)
- 大棗(タイソウ)
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特徴 |
- 小柴胡湯は、病院で一番使われてきた漢方薬です。とくに、肝炎の治療にしばしば処方されてきました。実際、肝機能値の改善効果が認められており、肝炎の進展の抑制効果が期待できます。漢時代の「傷寒論」および「金匱要略」という古典書で紹介されている処方です。
- 方剤構成から“柴胡剤”に分類されます。適応証(体質)は、半表半裏・少陽病(急性〜慢性期)、熱証(炎症)、中間証〜やや虚証(体力中くらい)、胸脇苦満(肋骨下部の張り)を目安とします。
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注意 |
 【診察で】
- 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
- 市販薬も含め服用中の薬を医師に教えてください。

- 【注意する人】

- 肝硬変にいたっている場合、あるいは体がひどく弱っている人には用いません。
- 適さないケース..肝硬変、肝がん
- 注意が必要なケース..虚証(虚弱)

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- インターフェロン療法との併用は禁止されています。併用により、間質性肺炎という重い副作用がでやすくなるためです。また、芍薬甘草湯など甘草を含む他の漢方薬といっしょに飲むときは、「偽アルドステロン症」の副作用に注意が必要です。
- 飲み合わせの悪い薬..インターフェロン製剤
- 飲み合わせに注意..甘草含有製剤、グリチルリチン(グリチロン等)、利尿薬など。
 【使用にあたり】
- ふつう、漢方薬は食前もしくは食間(空腹時)に飲みます。顆粒は、お湯で溶かしてから、ゆったりした気分で飲むとよいでしょう。むかつくときは、水で飲んでもかまいません。
- もし、食欲がなくなったり、吐き気を催すようでしたら、食後でもよいと思います。
- 効果のないときは、医師と相談してみてください。証の再判定が必要かもしれません。
 【備考】
- 漢方は中国で生まれた体系医学です。その起源は遠く2千年以上もさかのぼります。そして、日本にも古くから伝わり、独自の発展をとげました。
- 漢方の特徴は、体全体をみるということです。体全体の調子を整え、病気を治していくのです。ですから、病気の症状だけでなく、一人ひとりの体質も診断しなければなりません。このときの体の状態や体質をあらわすのが「証(しょう)」という概念です。このような考え方は、西洋医学が臓器や組織に原因を求めていくのとは対照的です。漢方のよさは、薬そのものよりも、証にもとづき「人をみる」という、その考え方にあるといっても過言でないでしょう。
- 病院では、服用が簡単な「エキス剤」が広く使われています。これは、煎じ薬を濃縮乾燥させたもので、そのままお湯に溶かすだけで飲めます(一部の専門外来では、生薬のまま調合することも)。現在、小柴胡湯をはじめ約150種類の方剤が保険適応となっています。
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効能 |
 【ツムラ】
- 慢性肝炎における肝機能障害の改善。
- 体力中等度で上腹部がはって苦しく、舌苔を生じ、口中不快、食欲不振、時により微熱、悪心などのあるものの次の諸症//諸種の急性熱性病、肺炎、気管支炎、感冒、胸膜炎・肺結核などの結核性諸疾患の補助療法、リンパ腺炎、慢性胃腸障害、産後回復不全。
 【クラシエ・他】
- 慢性肝炎における肝機能障害の改善。
- はきけ、食欲不振、胃炎、胃腸虚弱、疲労感及び風邪の後期の症状。
 【コタロー】
- 慢性肝炎における肝機能障害の改善。
- 胸や脇腹が重苦しく、疲れやすくて微熱があったり熱感と寒感が交互にあったりして、食欲少なく、時に舌苔があり、悪心、嘔吐、咳嗽を伴うなどの症状があるもの//感冒、気管支炎、気管支喘息、肋膜炎、胃腸病、胸部疾患、腎臓病、貧血症、腺病質。
 【三和】
- 慢性肝炎における肝機能障害の改善。
- 微熱があって頭痛、頭重、疲労倦怠感を自覚するもの。また熱感や微熱がとれず、或は熱と悪寒が交互に現れ、咳を伴うものの次の諸症//感冒、気管支炎、気管支喘息、麻疹。
- 胸や脇腹に圧迫感を自覚し、悪心や嘔吐、腹痛などを伴い舌に白苔があって、胃部が重苦しく食欲が減退するものの次の諸症//腎臓疾患、胃腸病、悪阻。
- 腺病体質で疲れ易く抵抗力が乏しく、体力の回復がながびくものの次の症状//腺病質の体質改善。
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用法 |

- 【顆粒、細粒】

- 通常、成人1日6.0g〜7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口服用する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する(ツムラ1日7.5)
- 1日6.0g:クラシエ、マツウラ
- 1日7.5g:ツムラ、他

- 【錠】

- 通常、成人1日18錠を2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
漢方薬にも少しは副作用があります。人によっては、服用時にむかついたり、かえって食欲がなくなることがあるかもしれません。しだいに慣れることが多いのですが、つらいときは医師と相談してください。
重い副作用はまずありませんが、配合生薬の甘草の大量服用により、浮腫(むくみ)を生じたり血圧が上がってくることがあります。「偽アルドステロン症」と呼ばれる症状です。複数の方剤の長期併用時など、念のため注意が必要です。
そのほか、間質性肺炎と肝障害が報告されています。万一のことですが、咳や息切れ、呼吸困難、発熱、ひどい倦怠感、皮膚や白目が黄色くなる、といった症状に注意し、そのような場合はすぐ医師に連絡してください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。
- 偽アルドステロン症..だるい、血圧上昇、むくみ、体重増加、手足のしびれ・痛み、筋肉のぴくつき・ふるえ、力が入らない、低カリウム血症。
- 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
 【その他】
- 胃の不快感、食欲不振、吐き気、吐く、下痢
- 膀胱炎様症状(頻尿、排尿痛、血尿、残尿感)
- 発疹、発赤、かゆみ
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