概説 |
便通をつける漢方薬です。 |
作用 | 
- 【働き】

- 調胃承気湯(チョウイジョウキトウ)という方剤です。便をやわらかくし、便通をつけます。体力が中くらいの人で、便が硬く出にくいときに適します。

- 【組成】

- 漢方薬は、自然の草や木からとった「生薬」の組み合わせでできています。調胃承気湯は下記の3種類からなります。承気湯類に特徴的な“大黄”と“芒硝”、それに“甘草”を加えた処方です。“大黄”は中国原産の薬用植物で、アントラキノン系の大腸刺激性の下剤成分を含んでいます。“芒硝”は天然の塩類下剤といえ、便を軟化させ排便しやすくします。もう一つの“甘草”には緩和作用があり、便秘にともなう腹痛や排便時の痛みをやわらげます。これらがいっしょに働くことで、よりよい効果を発揮します。病院では、煎じる必要のない乾燥エキス剤を用いるのが一般的です。
- 大黄(ダイオウ)
- 芒硝(ボウショウ)
- 甘草(カンゾウ)
|
特徴 |
- 調胃承気湯の“調胃”は、胃腸の調子をよくするということです。また、“承気”には、気をめぐらせ元気をつけという意味合いがあります。快便すれば気分もさっぱりしますので、なんとなくうなずけます。漢時代の「傷寒論」という古典書で紹介されている処方です。
- 適応証(体質)は、いちおう中間証(体力中くらい)となりますが、証にはそれほどこだわらずに用いることができます。
|
注意 |
 【診察で】
- 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
- 妊娠中の人は医師に申し出てください。
- 市販薬も含め服用中の薬を医師に教えてください。
 【注意する人】
- 体がひどく弱っている「著しい虚証」の人は、慎重に用いる必要があります。
- 胃腸が弱く、食欲不振や吐き気、嘔吐や下痢などを起こしやすい人は慎重に用いるようにします。
- 塩類下剤の芒硝を含みますから、食塩制限をおこなっている人は留意ください。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 他の漢方薬と併用する場合は、大黄の重複に注意します。また、芍薬甘草湯など甘草を含む他の漢方薬といっしょに飲むときは、「偽アルドステロン症」の副作用に注意が必要です。
- 飲み合わせに注意..大黄含有製剤、甘草含有製剤、グリチルリチン(グリチロン等)など。
 【使用にあたり】
- ふつう、漢方薬は食前もしくは食間(空腹時)に飲みます。顆粒は、お湯で溶かしてから、ゆったりした気分で飲むとよいでしょう。むかつくときは、水で飲んでもかまいません。
- もし、食欲がなくなったり、吐き気を催すようでしたら、食後でもよいと思います。
- 効果のないときは、医師と相談してみてください。証の再判定が必要かもしれません。

- 【妊娠・授乳】

- 配合生薬の大黄には、子宮収縮作用や骨盤内臓器の充血作用が認められています。そのため、流早産の原因にもなりかねません。大量でなければまず心配ないのですが、妊娠中の服用については医師とよく相談してください。
 【備考】
- 漢方は中国で生まれた体系医学です。その起源は遠く2千年以上もさかのぼります。そして、日本にも古くから伝わり、独自の発展をとげました。
- 漢方の特徴は、体全体をみるということです。体全体の調子を整え、病気を治していくのです。ですから、病気の症状だけでなく、一人ひとりの体質も診断しなければなりません。このときの体の状態や体質をあらわすのが「証(しょう)」という概念です。このような考え方は、西洋医学が臓器や組織に原因を求めていくのとは対照的です。漢方のよさは、薬そのものよりも、証にもとづき「人をみる」という、その考え方にあるといっても過言でないでしょう。
- 病院では、服用が簡単な「エキス剤」が広く使われています。これは、煎じ薬を濃縮乾燥させたもので、そのままお湯に溶かすだけで飲めます(一部の専門外来では、生薬のまま調合することも)。現在、調胃承気湯をはじめ約150種類の方剤が保険適応となっています。
|
効能 |
便秘 |
用法 |
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口服用する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する(ツムラ)。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
|
副作用 |
漢方薬にも少しは副作用があります。人によっては、胃の不快感、食欲不振、吐き気、腹痛、下痢などおこします。腹痛や下痢がひどいときは、早めに受診してください。
重い副作用はまずありませんが、配合生薬の甘草の大量服用により、浮腫(むくみ)を生じたり血圧が上がってくることがあります。「偽アルドステロン症」と呼ばれる症状です。複数の方剤の長期併用時など、念のため注意が必要です。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 偽アルドステロン症..だるい、血圧上昇、むくみ、体重増加、手足のしびれ・痛み、筋肉のぴくつき・ふるえ、力が入らない、低カリウム血症。
 【その他】
|